ドクターにインタビュー
質のよい卵を育むための生活習慣〜高齢不妊との正しい戦い方
神野正雄 先生(ウィメンズクリニック神野院長)
【3】いい卵や精子を育む7つの習慣 ~インスリン感受性をよくすることがキーワード
よい卵子や精子を育む7つの習慣(1)
【歩行】毎日、太陽の光を浴びながら、45分以上の連続した歩行
まずは、歩くこと。
それも、毎日、45分以上連続して歩くこと。
たとえば、朝15分、昼15分、夜15分では効果的ではなく、
45分以上連続して歩かないと代謝が変わらないからです。
そして、朝に太陽の光を浴びながら歩くこと。
なぜなら、光を浴びると16時間後に、
睡眠を司るホルモンである、メラトニンが分泌され、質のよい睡眠につながり、
睡眠不良は翌日のインスリン抵抗性を招くからです。
ただし、走ったり、早歩きしたりする必要はありません。
普通に散歩するだけで十分です。
僕は、朝や昼に、夫婦そろって散歩を楽しくやりなさいと言っています。
夫婦仲もよくなり、ストレス解消にもなりますからね。
スポーツクラブなどで、夜に蛍光灯のもとで、ランニングマシンの上で身体を動かしても、
さほど効果的だとは思いません。
なぜなら、人間は夜行性ではないからです。
人間には、人間の適した運動のタイミングや方法があるはずです。
よい卵子や精子を育む7つの習慣(2)
【体重】適正な体重を維持
BMI※で19~23、出来れば、25未満が適正です。肥満はインスリン抵抗性をおこします。 一方、やせ過ぎも妊娠しづらくなります。
これまでの経験ではBMIが18.5以下だと子どもができなくなります。 たとえ、体外受精で卵を採っても妊娠は困難です。
畑に肥をやらなければ実がならないのと同じことで、 低体重の場合は、子どもに栄養を取られると自分の身体を維持できなくなるので、 身体は生体防御で妊娠させなくするのです。
適正体重を維持することです。
※BMI:身長からみた体重の割合を示す肥満度をあらわす指数。BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出する。
よい卵子や精子を育む7つの習慣(3)
【睡眠】早寝、早起きで6~7時間の睡眠
睡眠は長さだけでなく、いつ寝るのかも大切です。
具体的には午後11時に寝て、朝は6時に起きる生活がよいでしょう。
たとえば、夜勤をする人は心筋梗塞の発生率が高く、
早く死んでしまうことがわかっています。
人間は昼活動し、夜に寝る動物で、
夜に身体を修復するホルモンが分泌されるようにできています。
道路工事は夜中の車の通らないときにやるのと同じことです。
ところが、もしも、それに逆らって、夜に活動すると、
身体は効率よく修復されなくなってしまい、
病気にかかるリスクが高くなったり、
妊娠のことで言えば、卵の生成や子宮内膜の調整もうまくいなかくなったりするのでしょう。
適切な時間に、適切な長さの睡眠をとることです。
よい卵子や精子を育む7つの習慣(4)
【ストレス】ストレスを避けるだけでなく、楽しくハッピーに過ごす
ストレスを避けることが大切なことは誰でも知っていますが、
それだけだと、単にプラスマイナスゼロになるだけです。
インスリン抵抗性とストレスの関係を調べた研究があって、
怖い映画を観た後はインスリン抵抗性がおこり、
楽しい映画を観た後はインスリン感受性が促進されることが確かめられています。
ストレスを避けるだけでなく、幸せな状態になることが大切なのです。
このことは、健康で、仲のよい幸せなカップルのところに
子どもができるということに他なりません。
実に当たり前で、誰でも知っていることだけど、
無視されていることです。
子どもができないからといって悩んだり、くよくよしたりしていると
余計に出来にくくなってしまうのです。
私は、患者さんに、毎朝、鏡をみて笑いなさいと言います。
面白くなくても笑っているとそのうちに楽しくなりますからね。
精神面の重要性を知ってほしいのです。
よい卵子や精子を育む7つの習慣(5)
【喫煙】タバコは1本も吸ってはいけない
女性がタバコを吸うと、卵の育成や子宮の着床、 児の脳に障害をもたらすことが報告されていますが、 男性だけが喫煙した場合でも、精子のDNAがやられて、 児の5歳未満の悪性脳腫瘍とリンパ性白血病の発生率が 5倍に増えることが分かっています。 夫婦ともに、減煙ではなく、禁煙することです。
よい卵子や精子を育む7つの習慣(6)
【飲酒】1日飲んだら、3~5日飲まない
連続して飲まないこと。
お酒が好きな方は、毎日飲むのではなく、
1日飲んだら、3~5日は飲まないようにすることが大切です。
よい卵子や精子を育む7つの習慣(7)
【食事】新鮮な食材を調理して3食バランスよく食べる
食事は、新鮮な食材を調理して、バランスよく、3食食べることです。
インスタント食品やファストフード、レトルト食品ばかり食べていてはダメです。
あと、ゆっくり食べること。
また、白米やうどんを食べるときは繊維分と一緒に食べて、
血糖値の急上昇を避けることを勧めています。
白米を玄米にするとなおよいですね。
また、清涼飲料水やキャンディー、チョコレートなどの甘いものも控えるべきです。
以上の7つの習慣が、普段、患者さんに指導している内容です。
大切なことは、1個だけをフォーカスしてやるのではなく、
全て満遍なく実行するということです。
そうすることによって、最大の効果が期待できます。
そして、軽症の不妊症であれば、これだけで妊娠に至りますし、
重症例でも体外受精の妊娠率が上がります。
ドクターに訊く
ドクターにインタビュー
- 第25回 精索静脈瘤と男性不妊 〜精子の質を高めてパートナーの治療成績の改善を図る
- 第24回 子宮内膜症と不妊治療
- 第23回 納得のいく選択や決断のための“情報共有”について考える
- 第22回 老化促進物質AGEをターゲットにした不妊治療
- 第21回 不育症を正しく理解する~不妊症と不育症はひと続き
- 第20回 栄養と妊娠力
- 第19回 40代の不妊治療について考える
- 第18回 不妊治療の終結について考える
- 第17回 栄養と生殖機能の関連研究の第一人者に聞く
- 第15回 オーダーメイドの不妊治療とは?~あるべき不妊治療を考える
- 第14回 30代後半、40代からの不妊治療
- 第13回 不妊治療には、なぜ、“対話と物語”が大切なのか?
- 第12回 妊娠前からの食生活が子どもの一生の体質をつくる
- 第11回 妊娠しやすい思考ってあるのでしょうか?
- 第10回 クラミジア感染症と不妊 ~検査と治療についての正しい知識
- 第09回 ストレスフリーの不妊治療を目指して
- 第08回 体が本来持っている妊娠する力を取り戻す
- 第07回 酸化ストレスと男性不妊
- 第06回 質のよい卵を育むための生活習慣
- 第05回 不妊治療でなかなかよい結果が得られないとき
- 第04回 体外受精の後悔しない病院選びについて
- 第03回 ちゃんと知っておきたい薬のこと
- 第02回 妊娠しやすい夫婦生活とは?
- 第01回 不妊予防という考え方