ドクターにインタビュー
vol.10
クラミジア感染症と不妊 ~検査と治療についての正しい知識
高橋敬一 先生(高橋ウイメンズクリニック院長)

【2】検査と治療について
検査には抗原検査と抗体検査があります
- 細川)
- クラミジア感染症はどのように検査するのでしょうか?
- Dr.)
- 検査には、クラミジア菌が今現在いるかどうかを調べる抗原検査とクラミジアの抗体があるかどうかを調べる抗体検査があります。 基本は抗原検査で、クラミジア菌が今現在いるかどうか、すなわち、クラミジアに今感染しているかを調べる検査です。女性の場合は子宮頸管を綿棒でこすって分泌物を採取し、男性の場合は初尿、いわゆる、出始めの尿をとって検査します。
- 細川)
- 抗原検査が陽性であれば、クラミジアに感染しているということになるのですね。
- Dr.)
- そうです。ただし、子宮頸管部にクラミジア菌がいない場合、つまり、クラミジア菌が卵管やお腹の中にだけいるような場合には見つけることが出来ないのが欠点です。
- 細川)
- 分泌物を採取して調べることが困難だということですね。
- Dr.)
- そういうことです。 一方、抗体検査はクラミジアの抗体を調べる検査で、抗体というのは菌が侵入してきた(感染した)ときにからだを守るためにつくりだされる物質のことです。そのため抗体検査では、これまでに感染したことがあるかどうかがわかるのです。こちらは血液検査ですが、陽性でも、今、現在、感染しているとは言い切れません。
- 細川)
- 現在、クラミジア菌がいなくても、過去に感染していれば、抗体検査は陽性になるというわけですね。
- Dr.)
- そうなりますね。 抗体検査では過去に感染したことがあるかどうかはわかりますが、現在、感染しているかどうかは分かりません。現在、感染しているかどうかは分泌物を調べる抗原検査が必要になります。
- 細川)
- わかりました。 クラミジア感染の検査は不妊検査に入っているのでしょうか?
- Dr.)
- 施設にもよりますが、クラミジア感染があったかどうかは治療方針を決定する上での重要な指標になりますので、不妊検査に入れているところが多いと思います。 当院では、まずは、血液検査で、過去にクラミジア感染があったかどうかを調べます。もしも、陽性であれば、現在、感染しているかどうかを調べるために追加で抗原検査を行います。
- 細川)
- 抗体検査と抗原検査を組み合わせるということですね。 ところで、感染している可能性がある場合、どのように治療するのでしょうか?
- Dr.)
- クラミジア感染症そのものは抗生物質を飲めば簡単に治ります。主に、ジスロマックでは1回のみの服用ですみます。他にクラリスロマイシン、ニューキノン系の薬剤などが使われますが、これらは1~2週間の服用が必要です。 クラミジアの治療の場合、パートナーも一緒にお薬を飲むことが大切です。カップルのどちらかが感染していた場合には、パートナーの検査結果がたとえ陰性であったとしても、お二人とも感染していると判断して、どちらも治療する必要があります。
- 細川)
- 一方の検査結果が陰性であったとしても?
- Dr.)
- もちろんです。なぜなら、検査の結果は100%正しいとは限らないからです。菌がいても陰性になってしまうことがよくあります。そもそも、抗原検査は、厳密に言うと、菌の有無ではなく、濃度を調べるのです。男性の場合は初尿を調べると言いましたが、出始めか、途中かで菌の濃度が変わってきます。ですから、尿の採り方によっては菌がいても陰性になることだってあるわけです。女性の場合も同じように分泌物の採取の仕方で結果が異なることがあるのです。
- 細川)
- なるほど。
- Dr.)
- 繰り返しますが、どちらかが陽性であれば、もう一方の検査結果のいかんに関わらず、ふたりでお薬を飲んで、きちんと治療しておくことが大切なのです。
- 細川)
- よくわかりました。
----- この章のポイント -----
・クラミジアの検査には、現在、感染しているかどうか調べる抗原検査と過去に感染したことがあるかを調べる抗体検査がある。
・カップルのどちらかが陽性であれば、ふたりとも薬を飲んで治療するべきである。
・検査結果は100%正しいとは限らないことを理解しておく。
ドクターに訊く
ドクターにインタビュー
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