ドクターにインタビュー
不妊治療には、なぜ、“対話と物語”が大切なのか?
春木 篤 先生(春木レディースクリニック院長)
ドクターに訊く、今回は、「不妊治療には、なぜ、“対話と物語”が必要なのか」というテーマで、NBMと呼ばれるナラティブベイスドメディスンについて話しをお伺いします。
不妊治療に限らず、現在の医療では、それぞれの患者に有効な治療法の選択は、エビデンス(科学的根拠)に基づいて行われるのが、“あるべき”医療とされています。英語のEvidence-Based Medicineの頭文字を取って、「EBM」、日本語に訳すと「科学的根拠に基づく医療」と呼ばれています。
根拠のあいまいな慣習や経験、勘、或いは、権威者の意見に基づく医療ではなく、臨床研究などの科学的データに裏付けられた、確かな根拠(証拠)に基づいた医療ということです。
その一方で、不妊治療は、よく「出口の見えないトンネル」にたとえられます。“先の見えない不安”が伴うというわけですが、それは、エビデンスをもってしても、今、受けている治療方法が、本当に自分たちに有効なものなのか、そして、この治療方針で自分たちは報われるのかを見極めることは、決して、簡単ではないということでしょう。時間やお金に限りがある中では、尚更のことです。
私たちのところにも多くの相談が寄せられますが、そのほとんどは、“自分たちにふさわしい治療方針や治療方法”に関するものです。
そんな中、「エビデンス(evidence;根拠)にはじまり、ナラティブ(narrative;対話)におわる医療」を治療方針に掲げたクリニックが大阪の心斎橋にオープンします。
私たちは、ナラティブ、すなわち、「対話」にこそ、大きなヒントがあるのではないかと感じ、春木レディースクリニック院長の春木篤先生に「ナラティブベイスドメディスン(NBM)」について、お話しを伺ってまいりました。
vol.13 インデックス
- 【1】科学的な根拠に基づいた医療 ~最新のエビデンスにもとづいて
- 【2】対話にもとづく医療 ~ 目の前の患者さんにとってどうなのか?
- 【3】対話を深めるということ ~情報を共有する
- 【4】物語をつむいでいく ~経験を共有する
- 【5】不妊治療こそ、NBMが必要である ~子どもをつくるのではなく、子どものいる幸せな家庭をつくる
大阪府堺市生まれ。平成5年山梨大学医学部卒業後、横浜市立大学医学部附属病院産婦人科入局。平成12年、横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター助教。平成18年、IVFなんばクリニック医長、IVF大阪クリニック副院長をへて、平成25年、春木レディースクリニック開院。現在に至る。
ドクターに訊く
ドクターにインタビュー
- 第25回 精索静脈瘤と男性不妊 〜精子の質を高めてパートナーの治療成績の改善を図る
- 第24回 子宮内膜症と不妊治療
- 第23回 納得のいく選択や決断のための“情報共有”について考える
- 第22回 老化促進物質AGEをターゲットにした不妊治療
- 第21回 不育症を正しく理解する~不妊症と不育症はひと続き
- 第20回 栄養と妊娠力
- 第19回 40代の不妊治療について考える
- 第18回 不妊治療の終結について考える
- 第17回 栄養と生殖機能の関連研究の第一人者に聞く
- 第15回 オーダーメイドの不妊治療とは?~あるべき不妊治療を考える
- 第14回 30代後半、40代からの不妊治療
- 第13回 不妊治療には、なぜ、“対話と物語”が大切なのか?
- 第12回 妊娠前からの食生活が子どもの一生の体質をつくる
- 第11回 妊娠しやすい思考ってあるのでしょうか?
- 第10回 クラミジア感染症と不妊 ~検査と治療についての正しい知識
- 第09回 ストレスフリーの不妊治療を目指して
- 第08回 体が本来持っている妊娠する力を取り戻す
- 第07回 酸化ストレスと男性不妊
- 第06回 質のよい卵を育むための生活習慣
- 第05回 不妊治療でなかなかよい結果が得られないとき
- 第04回 体外受精の後悔しない病院選びについて
- 第03回 ちゃんと知っておきたい薬のこと
- 第02回 妊娠しやすい夫婦生活とは?
- 第01回 不妊予防という考え方