ドクターにインタビュー

vol.14

30代後半、40代からの不妊治療 ~“後悔のない治療”にするための専門医からのアドバイス

吉田 仁秋 先生(吉田レディースクリニック院長)

吉田 仁秋

[3]サプリメントや統合医療的アプローチ

サプリメントや統合医療的アプローチ

細川)
それぞれの患者さんにふさわしい卵巣刺激法を選択し、実施すること以外にはいかがでしょうか?
Dr.)
生殖医療の補助としてのサプリメントや統合医療的なアプローチということになると思います。
細川)
どのようなサプリメントをお使いでしょうか?
Dr.)
DHEA1)やメラトニン2)などのホルモン、L-カルニチンなどの抗酸化剤を使っています。いずれも、有効性について海外や国内の論文があるものです。また、最近、プラセンタなども取り入れ始めています。
細川)
DHEAは欧米の生殖治療でもポピュラーな補助剤ですね。
Dr.)
はい。症例報告も多いですね。DHEAは、低濃度の男性ホルモン作用により卵巣の卵胞刺激ホルモンに対する反応性を高め、卵胞発育を促進すると考えられています。当院でも患者さんを対象にした試験を実施し、2007年の日本生殖医学会で発表しました。
細川)
メラトニンの症例報告も発表されていらっしゃいますね。
Dr.)
そうですね。メラトニンは山口大学医学部産婦人科の杉野教授のグループとの共同研究で、比較的早くから導入しています。強力な抗酸化作用があって、活性酸素の上昇を抑え、卵の質に改善に働くと考えられています。メラトニンの使用例については、2009年の日本受精着床学会で発表しました。
細川)
これらのサプリメントの有効性についてはどのようにお考えでしょうか?
Dr.)
いずれもエビデンスが確立されているわけではなく、これらのサプリメントを服用すれば、必ず、効果が得られるというわけではありません。平たく言えば、効く患者さんもいれば、効かない患者さんもいるということです。
細川)
あくまでも補助の一つということですね。
Dr.)
そうです。ただし、DHEAやメラトニンは年齢とともに分泌量が減少してくるホルモンで、日本ではサプリメントとして認められていませんが、アメリカではアンチエイジングのサプリメントとして大変ポピュラーです。また、酸化ストレスは細胞の老化の主因とされていて、卵細胞にもダメージを与えると考えられていますので、それらのホルモンや抗酸化剤は体内環境を整えるという観点では意味のあるものだとは考えています。
細川)
そうですね。
Dr.)
ですから、患者さんにもそのことをご説明し、こういう選択肢もありますよということでお勧めしています。
細川)
よくわかりました。
Dr.)
また、低刺激法で排卵誘発をする患者さんにクロミッドやフェマーラなどの排卵誘発剤と一緒に低用量ステロイドを2週間程度服用してもらうことで卵の質が向上することがあります。
細川)
抗炎症作用が卵質の改善に寄与することはあるのでしょうか。
Dr.)
可能性はあると思います。また、ヨガやストレッチ、鍼灸など、統合医療的なアプローチもストレス緩和などに有効ではないでしょうか。当院でもヨガの先生にお願いして、患者さん向けのヨガクラスを行っています。
細川)
運動や東洋医学ということですね。
Dr.)
そうです。ヨガクラスでは、患者さん同士の交流というメリットもあるようです。
細川)
よくわかりました。

1)DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)
主に副腎皮質でコレステロールからつくられる体内で最も多いステロイドホルモン。テストステロン(男性ホルモン)やエストロゲン(女性ホルモン)に変換されます。年齢と伴に減少すると言われています。日本では医薬品ですがアメリカではアンチエイジングのサプリメントとしてポピュラーです。

2)メラトニン
脳の松果体でつくられるホルモンで、暗くなると分泌され、睡眠を促します。また、強力な抗酸化作用を有しています。年齢と伴内減少すると言われています。日本では医薬品ですがアメリカでは自然な睡眠導入剤や時差ボケ対策のサプリメントとしてポピュラーです。

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