ドクターにインタビュー
vol.15
オーダーメイドの不妊治療とは? ~ あるべき不妊治療を考える
安部 裕司 先生(CMポートクリニック院長)
【2】それぞれの患者さんにあった治療を提供するということ
- 細川)
- それでは、個々の患者さんにあった治療を提供するということについてお伺いしたいのですが、そもそも、たとえば、体外受精でもいろいろなやり方があるのでしょうか?
- Dr)
- もちろんです。体外受精とは、排卵前に卵巣から卵子を回収(採卵)し、精子と合わせて、受精させ、培養し、受精卵(胚)を体内に戻し(移植)、妊娠を目指す治療方法です。
- 細川)
- はい。
- Dr)
- ただし、採卵前の卵巣刺激法や培養方法、培養期間、移植方法などは、さまざまな選択肢があります。
- 細川)
- なるほど。
- Dr)
- そして、それぞれの患者さんの状況にあった選択肢を採用し、実施することが妊娠の確率を大きく左右するのです。
- 細川)
- とても重要ですね。
- Dr)
- これがオーダーメイドになるゆえんです。もちろん、どんな選択肢を採用すべきか、過去の臨床試験の結果から導かれたエビデンスが存在します。
- 細川)
- そうですね。
- Dr)
- ところが、エビデンスというのは過去の臨床試験から得られた統計データですから、全体の傾向はわかりますが、個々の患者さんにとってどうなのかまでは、エビデンスは教えてくれません。たとえば、卵巣刺激法でも、刺激周期や低刺激周期、自然周期と、標準的な方法はありますが、同じ刺激周期でも、排卵誘発剤の量や使うタイミングなどは、個々の患者さんごとに変えます。
- 細川)
- エビデンス通りの治療、標準的な治療法が、個々の患者さんにあった治療だとは限らないということですね。
- Dr)
- そういうことです。ですから、ひとりのドクターが患者さんを診ることで、患者さんの情報の量と質を最大化し、患者さんとのコミュニケーションを深め、そして、そのドクターのこれまでの経験から培われた独自のノウハウで、個々の患者さんにふさわしい治療法を選択するということにならざるを得ないと考えています。
- 細川)
- オーダーメイド治療の肝とも言えるところですね。
- Dr)
- そういう意味で、私は老舗のラーメン屋のおやじになりたいと思ってやってきました。
- 細川)
- 老舗のラーメン屋のおやじですか!
- Dr)
- そうです。老舗のラーメン屋のスープをつくるのにレシピは存在しませんよね。そもそも、レシピには出来ない類のものなのでしょう。要するに、ちょっとしたさじ加減がものを言う世界なわけですね。
- 細川)
- とてもよくわかります。
- Dr)
- 私は、不妊治療には、そんな"職人技"が求められるところがあると思っています。
- 細川)
- それが、すべての患者さんを安部先生が担当され、信頼して来てくれる患者さんに目の行き届く治療を提供したいという方針の根本的な理由なのですね。
- Dr)
- そうです。
ドクターに訊く
ドクターにインタビュー
- 第25回 精索静脈瘤と男性不妊 〜精子の質を高めてパートナーの治療成績の改善を図る
- 第24回 子宮内膜症と不妊治療
- 第23回 納得のいく選択や決断のための“情報共有”について考える
- 第22回 老化促進物質AGEをターゲットにした不妊治療
- 第21回 不育症を正しく理解する~不妊症と不育症はひと続き
- 第20回 栄養と妊娠力
- 第19回 40代の不妊治療について考える
- 第18回 不妊治療の終結について考える
- 第17回 栄養と生殖機能の関連研究の第一人者に聞く
- 第15回 オーダーメイドの不妊治療とは?~あるべき不妊治療を考える
- 第14回 30代後半、40代からの不妊治療
- 第13回 不妊治療には、なぜ、“対話と物語”が大切なのか?
- 第12回 妊娠前からの食生活が子どもの一生の体質をつくる
- 第11回 妊娠しやすい思考ってあるのでしょうか?
- 第10回 クラミジア感染症と不妊 ~検査と治療についての正しい知識
- 第09回 ストレスフリーの不妊治療を目指して
- 第08回 体が本来持っている妊娠する力を取り戻す
- 第07回 酸化ストレスと男性不妊
- 第06回 質のよい卵を育むための生活習慣
- 第05回 不妊治療でなかなかよい結果が得られないとき
- 第04回 体外受精の後悔しない病院選びについて
- 第03回 ちゃんと知っておきたい薬のこと
- 第02回 妊娠しやすい夫婦生活とは?
- 第01回 不妊予防という考え方