ドクターにインタビュー

vol.17

【4】 最近、日本では糖質制限ダイエットがブームなのですが...

ジョージ・チャヴァロ 先生(ハーバード公衆衛生大学院准教授)

ジョージ・チャヴァロ

【4】 最近、日本では糖質制限ダイエットがブームなのですが...

細川)
さて、この本の内容、特に炭水化物についてお聞きしたいと思います。チャバロ先生は、「妊娠しやすい食生活」では消化吸収に時間のかかる精製度の低い穀物を選ぶことを勧めています。炭水化物は量よりも質が大切であるということだと思うのですが、最近、日本では「糖質制限ダイエット」がブームです。やはり、炭水化物(糖質)の量を抑制することも大切であるとお考えでしょうか?
Dr.)
まず、炭水化物と不妊症の関係について触れておきます。私たちは「グリセミックロード(GL)」が不妊症リスクに関連することを発見し「妊娠しやすい食生活」にそのことを書きました。GLとは食後の血糖値の上昇させる程度の指標のことで、GLが高い食品ほど食後の血糖値を上昇させ、そして、食後の高血糖は不妊症のリスクを高めることを確かめたというわけです。
細川)
そうですね。
Dr.)
GLが高くなる食べ方は2パターンあります。1つは炭水化物をたくさん食べること。もう1つはそれほどの量を食べなくても、すぐに吸収されるような炭水化物、白い砂糖や白い米、パンなど精製された炭水化物を食べることです。
細川)
炭水化物を摂り過ぎたり、精製炭水化物を食べたりすると、GL値が高くなり、食後高血糖を招き、不妊症リスクを高めるということですね。
Dr.)
ですから、GL値を下げる、すなわち、不妊症リスクを高めないようにするには、トータルの炭水化物の摂取量を減らすか、精製度の低い炭水化物に変える、そして、それらを組み合わせるかです。
細川)
なるほどよくわかりました。糖質制限食もGL値を下げ、不妊症リスクを高めない食べ方の1つになるというわですね。
Dr.)
そうなり得ます。ただし、たとえば、アメリカ人の半数はカロリー摂取の約半分が炭水化物から摂っています。そのような状態では炭水化物を制限するのはとても困難でしょう。そのため、炭水化物の量ではなく、質、つまり、ゆっくり消化吸収され、食後血糖値もゆっくり上昇するような精製度の低い炭水化物に変えるほうが現実的でしょうね。
細川)
そうですね。また、最近、高血糖状態が続くと臓器に蓄積されやすくなるとされているAGE(終末糖化産物)が卵の成育障害や卵質の低下を招くとの研究報告が相次いでいますので、食後高血糖を避けることはとても大切なことになってくると思います。
Dr.)
ただ、どうでしょうか、日本をはじめとするアジア地域では米食文化のために炭水化物を減らしたり、玄米に変えるのが難しいところがあるかもしれませんね。
細川)
はい、そう思います。そのような場合でも無理せずに、食後の血糖値を急上昇させないような食べ方、たとえば、ご飯は最後に食べるとか、を意識するだけでも違ってくると思います。
Dr.)
ただ、白米以外は伝統的な日本食は、私たちが実施した疫学調査から導いた「妊娠しやすい食べ方」になっています。
細川)
その通りです。ところが、現代の日本の食スタイルは、アメリカの食文化や食品産業の影響で、伝統的な和食からかけ離れてしまっているようです。ところが、改めて伝統的な日本食が妊娠、出産にふさわしいことがアメリカのハーバード大学の研究で確かめられ、そして、そのことを指摘され、アドバイスされるというのも皮肉な気がします(笑)。
Dr.)
そうですね(笑)。

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