ドクターにインタビュー

vol.17

【5】 現在の研究テーマは「栄養と男性不妊」と「栄養と体外受精の治療成績」

ジョージ・チャヴァロ 先生(ハーバード公衆衛生大学院准教授)

ジョージ・チャヴァロ

【5】 現在の研究テーマは「栄養と男性不妊」と「栄養と体外受精の治療成績」

細川)
「看護師健康調査2」の後も、チャバロ先生の研究チームはさまざまな臨床試験や疫学調査を実施し、その研究結果を発表し続けていらっしゃいます。私たちも常に先生の研究に注目し、フォローしています。
Dr.)
ありがとうございます。「The Fertility Diet」後のお話をすれば、この分野の研究が大きな進展をみせているというわけではありません。ただし、私たちの主要な論文や書籍が他の研究グループの刺激になり、栄養と生殖機能の関連についての研究へのモチベーションが高まればとの思いがありました。実際にいくつかのグループが系統立てた取り組みをスタートさせました。ただし、その最終的な結果が出てくるのはさらに5年はかかると思われます。
細川)
はい。
Dr.)
また、出版後に私たちの研究結果と一致する多くの研究報告がなされたことは私たちにとってとても励みになったことの1つです。私たちの論文や出版は栄養と生殖機能の関連研究の礎を築いたと思っています。
細川)
「The Fertility Diet」に対する実際の反響はどのようなものだったのでしょうか?
Dr.)
出版後、不妊治療のドクターだけでなく、一般の患者さんからも多くの感想や質問が寄せられました。その内容は大きくわけると2つでした。一つ目は食生活を見直したり、サプリメントを摂ることで男性の精子の状態を改善できるのかどうかというもの。もう一つは、食生活の見直しやサプリメントは不妊治療、特に、体外受精や顕微授精の治療成績が向上するのかどうかというものでした。
細川)
なるほど。
Dr.)
そのため、私たちはこの2、3年、この2つの疑問、「栄養は男性の精子にどのように影響を及ぼすのか」、「栄養は不妊治療の成績にどのような影響を及ぼすのか」に対して答えを出すための研究にフォーカスしてきました。
細川)
大変興味深く、結果が楽しみです。
Dr.)
男性不妊との関連についてはより多くの論文を発表しています。その中でも私にとって最もエキサイティングな結果が得られたのは運動と精子の質の関連でした。今年のはじめに発表したのですが、よく身体を動かす男性ほど精子の運動能力や質が高く、運動しない男性ほど精子の質が低いことを確かめることが出来ました。このボストンでのASRMでも発表します。
細川)
楽しみです。
Dr.)
また、もう1つおもしろいのは食事パターンと精子の質との関係を調べた研究です。野菜や果物を多く食べる男性ほど、また、鶏肉や魚から主にタンパク質を摂取している男性ほど精子の運動率がよかったというものです。そもそも、男性の場合、精液検査の数値が栄養との関連を調べるうえでの目安になります。ただ、私は今後は男性の食生活が精液検査だけでなく、カップルの妊娠しやすさにどのように影響を及ぼすのかについて調べたいと考えています。
細川)
女性側の条件が異なるので大変難しいところがあるように思いますが。
Dr.)
その通りです。そこが、現在、私たちが最も高い関心をもって取り組んでいるテーマです。
細川)
貴重な時間を私たちのために割いていただき本当にありがとうございました。
Dr.)
とんでもありません。日本での出版をとても楽しみにしております。日本の多くのカップルに役立てることを祈っています。また、日本の読者の方々の感想などもお聞かせいただければ嬉しいです。
細川)
これからもチャバロ先生の研究をもとにした情報を発信していきたいと思います。
Dr.)
私たちも協力したいと思います。

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