ドクターにインタビュー
vol.19
40代の不妊治療について考える
辰巳賢一 先生(梅ヶ丘産婦人科院長)
【6】高齢だからこそ、毎周期妊娠のチャンスを持つことが最重要
- 細川)
- これまでのお話で40代の女性の不妊治療に関しての認識がずいぶんあらたまったように思います。
- Dr.)
- 高齢の妊娠、出産は最近になって増えているように思われているかもしれませんが、実は1925年(大正14年)には45歳以上で2万人近い赤ちゃんが生まれているのですね。全体の1%近くです。その時をピークに1975年には319人で0.02%まで減っています。50分の1です。そこから反転し、2010年は792人で0.07%に増えてはいます。
- 細川)
- この事実も驚きです。
- Dr.)
- かつて、40代後半で出産していた人は、おそらく、多産の人が多かったと考えられます。多産だと、排卵が抑制されていたり、子宮周囲や卵巣の血流がよくなったりといったことがあったと思います。ただ、そうはいうものの、ここまで減ってしまうのはなんらかの理由があるのかもしれません。これを突き止めれば卵子の老化を防げるようになるかもしれません。
- 細川)
- 近い将来になにかわかることを期待したいですね。
- Dr.)
- あるいは、戦前に高齢妊娠が多かったのは、単に避妊をしない性交回数が多かったことによるものだけかもしれません。
- 細川)
- 現代はとにかく性交回数が少なくなっていると聞きます。
- Dr.)
- これまでお話してきた通り、40歳代では正常な卵子が排卵するのは数パーセントから20%にしか過ぎません。その時に妊娠の機会がなければ妊娠は望めません。
- 細川)
- 全くおっしゃる通りですね。
- Dr.)
- 正常な卵子が排卵される機会が少なくなっている高齢だからこそ、毎周期妊娠のチャンスを持つことが最も重要です。
- 細川)
- はい。もしも、40歳以上になれば体外受精でしか妊娠できないという誤った認識のもとに年に数回の体外受精だけで妊娠を目指すということになれば、ますます、妊娠から遠ざかってしまいかねないというわけですね。
- Dr.)
- そうです。ですから、体外受精を受ける場合でも、体外受精を行わない周期には、必ず、タイミング法や人工授精で妊娠の機会を持つべきなのです。
- 細川)
- 高齢女性で体外受精の合間に自然妊娠したという話しをよく聞きますが、その周期にたまたま染色体の正常な卵子が排卵されたということなのかもしれませんね。
- Dr.)
- そうですね。高齢になると妊娠を左右する最も大きな要因は正常な卵子が排卵されるかどうかです。そのため、人工授精は周期あたりの妊娠率が低くても回数を重ねることで有効な治療になり得るのです。
- 細川)
- 高齢になるほど、身体への負担がほとんどかからなくて、コストも低く、回数を繰り返すことで体外受精に匹敵する妊娠、出産のチャンスが得られる人工授精を見直すべきですね。 ■この章のポイント 高齢で妊娠を希望する場合には、毎周期妊娠のチャンスを持つことが最も重要。
ドクターに訊く
ドクターにインタビュー
- 第25回 精索静脈瘤と男性不妊 〜精子の質を高めてパートナーの治療成績の改善を図る
- 第24回 子宮内膜症と不妊治療
- 第23回 納得のいく選択や決断のための“情報共有”について考える
- 第22回 老化促進物質AGEをターゲットにした不妊治療
- 第21回 不育症を正しく理解する~不妊症と不育症はひと続き
- 第20回 栄養と妊娠力
- 第19回 40代の不妊治療について考える
- 第18回 不妊治療の終結について考える
- 第17回 栄養と生殖機能の関連研究の第一人者に聞く
- 第15回 オーダーメイドの不妊治療とは?~あるべき不妊治療を考える
- 第14回 30代後半、40代からの不妊治療
- 第13回 不妊治療には、なぜ、“対話と物語”が大切なのか?
- 第12回 妊娠前からの食生活が子どもの一生の体質をつくる
- 第11回 妊娠しやすい思考ってあるのでしょうか?
- 第10回 クラミジア感染症と不妊 ~検査と治療についての正しい知識
- 第09回 ストレスフリーの不妊治療を目指して
- 第08回 体が本来持っている妊娠する力を取り戻す
- 第07回 酸化ストレスと男性不妊
- 第06回 質のよい卵を育むための生活習慣
- 第05回 不妊治療でなかなかよい結果が得られないとき
- 第04回 体外受精の後悔しない病院選びについて
- 第03回 ちゃんと知っておきたい薬のこと
- 第02回 妊娠しやすい夫婦生活とは?
- 第01回 不妊予防という考え方