ドクターにインタビュー
vol.20
[3]体格や食習慣とAMH(アンチミューラリアンホルモン)値の関係
佐藤雄一 先生(産科婦人科舘出張佐藤病院院長)
[3]体格や食習慣とAMH(アンチミューラリアンホルモン)値の関係
- 細川)
- それでは、体格や食習慣が卵巣年齢にどのように影響していたのでしょうか?
- Dr.)
- われわれは、卵巣年齢の目安とされているアンチミューラリアンホルモン(1の値(以下、AMH値)を測定し、体格や食習慣との関連を調べました。まず、体格との関連ですが、身長が高い人ほどAMH値が低い傾向がありました。日本の女性は身長が高いとやせている人が多いので、体脂肪率が関連しているのではないかと思います。
- 細川)
- やせている人ほどAMHが低いと。
- Dr.)
- はい。また、食習慣との関連では、魚介類をたくさん食べる人ほどAMHが高かったという結果が出ています。
- 細川)
- 魚介類ですか。
- Dr.)
- これらの相関を30歳以上と30歳未満でわけてみると、30歳未満では体脂肪率が少ない方にAMH値が低い傾向がみられましたが、食品との相関はほとんど認められませんでした。
- 細川)
- はい。
- Dr.)
- ところが、その一方、30歳以上になると体脂肪率との相関はみられなくなり、魚介類や卵の摂取量とAMH値との相関が認められました。魚介類や卵をよく食べる人はAMHが高かったのです。
- 細川)
- 大変興味深いです。
- Dr.)
- 30歳くらいまでは食生活が少しくらい乱れていても若さでカバーできるので、その影響が現れないということでしょうか。
- 細川)
- なるほど、そういうことが言えるわけですね。年齢が高くなればなるほどちゃんと食べることが大切になってくるということになりますね。
- Dr.)
- そうですね。
- 細川)
- ところで、魚介類や卵とAMHが関連するというのはどのように受け止めるべきなのでしょうか?
- Dr.)
- おそらく、ビタミンDが介在しているのではないかと考えました。そのため、血液検査で測定したビタミンDとの関連を調べました。
- 細川)
- ビタミンDは、最近、生殖機能の領域でも世界的に関心が高まっていますのでとても興味深いですね。
■用語解説
1) アンチミューラリアンホルモン(AMH):発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンで、血中のAMH値が原始卵胞から発育する前胞状卵胞数を反映すると考えられている。そのため、卵巣内にどれぐらい卵の数が残っているか、卵巣年齢の目安になると考えられている。
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