ドクターにインタビュー

vol.20

[6]プレプレグナンシートリートメント=プレマターナルトリートメント

佐藤雄一 先生(産科婦人科舘出張佐藤病院院長)

佐藤雄一

[6]プレプレグナンシートリートメント=プレマターナルトリートメント

細川)
最後に「栄養と妊娠力」に関して佐藤先生からのメッセージをいただければと思います。
Dr.)
いろいろとお話してきましたが、結局はバランスのよい食生活を心がけ、5大栄養素を過不足なく摂取することはなににも増して大切なことであるということになりますね。
細川)
「妊娠しやすい食生活」の原著者のハーバード大学のチャバロ先生も「研究を通じて学んだことは、結局、1つ1つの食品や生活習慣ではなく、全体としてバランスがとれていることが大切だということです、何かに偏るのはよくない」ということを強調されていました。
Dr.)
そうですね。当たり前過ぎて、聞き流されやすいですが、このことが一番大切なメッセージです。
細川)
不妊の女性の方々に多いたんぱく質不足についても、そもそもたんぱく質という栄養素はからだを構成する主な成分であるだけでなく、酵素やホルモンの材料にもなるわけですから、たんぱく質を十分に摂っていないということは生殖機能のベースがゆらいでしまいます。
Dr.)
そうです。ビタミンB群や鉄、亜鉛などのビタミンミネラルもあらゆる代謝の補酵素として顔を出していますので、生殖細胞の分裂増殖が正常に進むためにはこれらの栄養素が必須です。
細川)
あと、サプリメントについてはいかがでしょうか?いろいろなものがネットで販売されていて、混乱される方も少なくありません。
Dr.)
これも特別な成分ではなく、食事で摂り切れないベーシックな栄養素を補充することが大切ですね。ハーバードの研究でも妊娠前は葉酸や鉄のサプリメントを補充するべきだとされていますが、私は、これからはそれらに加えて、ビタミンDも世界的なスタンダードになると思っています。
細川)
やはり、妊娠、出産にふさわしい栄養環境を整えるために食事を補完するのがサプリメントの役割だということですね。
Dr.)
そうです。実際には、それらの栄養素の過不足を測定したうえで、不足や欠乏が認められた場合には、食生活の改善を指導し、必要に応じてサプリメントを飲んでもらうというのが理想ではあります。
細川)
はい。ただし、ビタミンミネラルを測定することもいろいろな意味で簡単にいかない場合がありますので、その場合は、自分の判断で葉酸や鉄、ビタミンD、あるいは、マルチビタミンミネラルを選ぶのがよいということになりますね。
Dr.)
たとえば、メラトニンが良好胚率を高めるとか、レスベラトロールがいいとか、盛んに言われていますが、メラトニンはアミノ酸を材料として、鉄やB群が補酵素として体内でつくられているわけですからね。まずは、5大栄養素を揃えることに尽きるのではないでしょうか。
細川)
そうですね。
Dr.)
また、妊娠は目指すべきゴールではありません。大切なことは健康な赤ちゃんを妊娠、出産し、将来、社会に貢献してくれる立派な大人に育てることです。そういう意味では、この30年間、出生児の体重が低下の一途をたどっていることは、世界的にみても日本だけの問題であり、赤ちゃんは母親からの栄養だけに頼って成長していることを考えると、妊娠するためのプレプレグナンシー(妊娠前の)トリートメントだけでなく、プレマターナル(母親になる前の)トリートメントも同時に重要です。
細川)
そのようなお考えのもとに、佐藤先生はさまざまな啓発活動を行っていらっしゃいます。それは、先生が不妊治療専門医であり、かつ、江戸時代から続く佐藤病院の12代目の院長として、年間約1,600人もの新たな生命の誕生をサポートしていらっしゃるというご経験が強い動機になっていらっしゃるのでしょうか?
Dr.)
そうかもしれませんね。
細川)
本日はありがとうございました。

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