ドクターにインタビュー
不育症を正しく理解する~不妊症と不育症はひと続き
松林秀彦 先生(リプロダクションクリニック大阪院長)
今回のテーマは、「不育症を正しく理解する」です。
不育症とは「2回以上の流産がある場合」と定義されています。ただし、「化学流産」は含めないとされていますが、含めるべきとする専門医の意見もあります。また、不育症検査や治療においても施設によって検査項目や基準値、治療方針や内容が異なることが珍しくありません。さらに、そもそも、不育症専門医が少ないため適切な検査や治療の機会が限られているのが現状です。
そのため、化学流産や流産を繰り返しているにもかかわらず、適切な対策が講じられることがないまま、漫然と体外受精が繰り返されているケース、反対に、たまたま、流産が続いているだけであるにもかかわらず、過剰な治療が施されているケース、さらには、ただでさえストレスフルなところに、不育症のわかりにくさやあいまいさが、さらなるストレスになっているケースも、よくあるように思えてなりません。
ところが、この領域の医学の進歩は著しく、30年前は不育症のほとんどは原因不明とされていましたが、現在では不育症の約7割になんらかのリスク因子が突き止められ、適切な治療を受けることで高い確率でお子さんを授かることができるようになっています。
そこで、不育症について正しい理解を深めるべく、リプロダクションクリニック大阪院長の松林秀彦先生にお話しをお伺いしました。
不育症は、特有のわかりにくさから多くの産婦人科医や不妊治療医にとってむつかしい疾患とされていますが、松林先生は不妊症と不育症の両方をご専門にされ、豊富な臨床経験から、「不妊症と不育症はひと続きの疾患であり、同時に治療されるべき」とのお考えのもとで診療に携わっておられるからです。
現時点では不育症の検査や治療の環境は整っているとは言い難い状況です。そのため、正しい情報に接して、自らその環境を求めることがとても大切なことだと思います。
多くのカップルの「納得のいく治療機会」のためにお役に立つことが出来れば嬉しいです。
vol.21 インデックス
- [1]どこまでが不妊症でどこからが不育症?
- [2]良好胚移植を繰り返しても妊娠しなければ・・・
- [3]不育症検査の真実
- [4]不育症のリスクファクターとその治療法
- [5]不妊症と不育症は同時に治療されるべき
- [6]サポーティングファティリティ
リプロダクションクリニック大阪院長。医学博士。
1988年慶應義塾大学医学部卒業。アメリカインディアナ州メソジスト病院生殖移植免疫センター研究員、東海大学医学部産婦人科准教授などを歴任。一貫して、不妊症・不育症の診療・研究に携わる。2013年に「男性と女性を同時に診療する」コンセプトで設立した不妊センター、リプロダクションクリニック大阪院長に就任。現在に至る。
日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本生殖免疫学会評議員、日本血栓止血学会学術標準化委員会抗リン脂質抗体部会副部会長。
ドクターに訊く
ドクターにインタビュー
- 第25回 精索静脈瘤と男性不妊 〜精子の質を高めてパートナーの治療成績の改善を図る
- 第24回 子宮内膜症と不妊治療
- 第23回 納得のいく選択や決断のための“情報共有”について考える
- 第22回 老化促進物質AGEをターゲットにした不妊治療
- 第21回 不育症を正しく理解する~不妊症と不育症はひと続き
- 第20回 栄養と妊娠力
- 第19回 40代の不妊治療について考える
- 第18回 不妊治療の終結について考える
- 第17回 栄養と生殖機能の関連研究の第一人者に聞く
- 第15回 オーダーメイドの不妊治療とは?~あるべき不妊治療を考える
- 第14回 30代後半、40代からの不妊治療
- 第13回 不妊治療には、なぜ、“対話と物語”が大切なのか?
- 第12回 妊娠前からの食生活が子どもの一生の体質をつくる
- 第11回 妊娠しやすい思考ってあるのでしょうか?
- 第10回 クラミジア感染症と不妊 ~検査と治療についての正しい知識
- 第09回 ストレスフリーの不妊治療を目指して
- 第08回 体が本来持っている妊娠する力を取り戻す
- 第07回 酸化ストレスと男性不妊
- 第06回 質のよい卵を育むための生活習慣
- 第05回 不妊治療でなかなかよい結果が得られないとき
- 第04回 体外受精の後悔しない病院選びについて
- 第03回 ちゃんと知っておきたい薬のこと
- 第02回 妊娠しやすい夫婦生活とは?
- 第01回 不妊予防という考え方