ドクターにインタビュー

vol.22

老化促進物質AGEをターゲットにした不妊治療

神野正雄 先生(ウィメンズクリニック神野院長)

神野正雄

今回のテーマは、「老化促進物質AGEをターゲットにした不妊治療」です。

老化の原因となり、老化を促進するとされているAGEが、数年前から注目されています。AGEとは、体内の「糖化」によってできる物質のことで、Advanced Glycation End-productsの頭文字をとってAGE、日本語では「終末糖化産物」と言われています。

糖化とは「たんぱく質と糖が結合すること」です。私たちの身体はほとんどがたんぱく質でできていますが、たんぱく質は体内に入ってきた糖と結び付きやすい性質があるため、血糖値が高い状態が続くと、糖化が起こり、それによってたんぱく質が変性し、老化促進物質であるAGEができてしまうというわけです。

AGEの生成によって臓器や組織を構成しているたんぱく質が変性するわけですから、組織のつくりが弱くなり、臓器の働きが低下してしまいます。そのため、もしも、骨や血管にたまると骨や血管がもろくなり、お肌にたまると皮膚の弾力性が落ち、目にたまると視力が低下してしまいます。そして、そこから、さまざまな病気が引き起こされる危険性も高まります。これが、AGEが老化の原因になり、老化を促進する物質だと言われるゆえんです。

このAGEが卵巣や卵胞液中にできると卵巣の機能が低下し、不妊リスクを高めることになりますが、AGEと不妊の関係に着目し、それらが関連することを臨床症例で示し、世界に先駆けて発表されたのがウイメンズクリニック神野の院長の神野正雄先生です。

神野先生は加齢や悪い生活習慣によってインスリンの効き目が悪くなると、食後高血糖を介して卵巣周辺にAGEが蓄積し、高齢の難治性不妊を招いているのではないかと考え、AGEをターゲットにした治療を行うことで高い実績を上げておられます。

そこで、神野先生に老化促進物質AGEをターゲットにした不妊治療についてお話しをお伺いしました。高齢不妊に悩むカップルのお役に立つことができればと思います。

vol.22 インデックス

★神野正雄先生 プロフィール

ウイメンズクリニック神野院長、医学博士。日本生殖医学会生殖医療指導医。
昭和55年、慶應義塾大学医学部卒業、慶應義塾大学大学院にて体外受精を開始、日本最初の双胎妊娠に成功。米国Eastern Virginia Medical Schoolに留学、卵成熟の研究。慶應義塾大学病院で体外受精に従事。大学院卒業、同産婦人科助手。Charles Thibault Honorary Lectureship賞を受賞(卵体外成熟)。杏林大学医学部産婦人科講師、同大学の体外受精を開設。顕微授精を開始、妊娠に成功。世界体外受精会議記念賞を受賞(子宮内膜組織血流量による子宮内膜着床能力の評価)。杏林大学医学部産婦人科准教授。平成16年、ウイメンズクリニック神野院長就任。平成23年、世界体外受精会議記念賞を再び受賞(卵巣機能障害に対する新しい治療戦略:終末糖化産物「AGE」の重要性)。

ドクターに訊く

ドクターにインタビュー