ドクターにインタビュー

vol.22

[1]個体保存本能は生殖本能に優先される

神野正雄 先生(ウィメンズクリニック神野院長)

神野正雄

[1]個体保存本能は生殖本能に優先される

細川)
女性の妊娠する力、男性の妊娠させる力は、その時々の健康状態に左右されると言われています。
Dr.)
私は生殖医療に携わって32年になるのですが、だいたい15年くらい前からでしょうか、高齢による卵巣機能の低下の背景には、年齢だけでなく、間違った生活習慣による影響が少なからずあるのではないかと確信するようになりました。
細川)
高齢不妊の背景には間違った生活習慣による卵子の老化も関与しているということですね。
Dr.)
そうです。根底の原因です。そもそも、生物には2つの大切な本能が備わっています。1つは、生きなさいという「個体保存本能」、もう1つは、「生殖本能」ですが、優先されるのは「個体保存本能」なのです。
細川)
なるほど。
Dr.)
つまり、自分を犠牲にしてまで子どもをつくろうとしないのですね。調子が悪くなってきたら、自分が生き延びるために、まずは生殖力をカットし、省エネするのです。
細川)
限られたエネルギーを、子どもをつくるよりも、自分が生きるほうに回すということですね。
Dr.)
そういうことです。健康レベルが低下すると、まずは、疲れを感じてなんとなくセックスをしたくなくなる、そして、その次には精子や卵子の質が悪くなってきて、妊娠しにくくなる。このように不妊症が発症するというわけです。
細川)
なるほど。
Dr.)
そして、あるレベルを超えると、いよいよ、自分自身が病気がちになります。
細川)
不妊症が未病と言われるゆえんですね。
Dr.)
はい。もちろん、すべての不妊症にこのような背景があるわけではありません。ただ、ひ弱な木には実がならないのは当たり前なのですが、枝葉がふさふさして見た目には立派な木でも実がならないということもあるということです。そして、それは自分が生きるのに精一杯で実をつくるどころではないというのが実情なのです。
細川)
よくわかりました。
Dr.)
妊娠、出産には、自分が生きるのに必要なエネルギー以上の、いわば「溢れるほどのエネルギー」が必要だということです。

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