ドクターにインタビュー
vol.22
[7]健康的な生活習慣でよい卵、精子を育むことから
神野正雄 先生(ウィメンズクリニック神野院長)
[7]健康的な生活習慣でよい卵、精子を育むことから
- 細川)
- 「健康で幸せなカップルに子どもがやってくる」が神野先生の持論ですね。
- Dr.)
- それは、自分のこれまでの経験から確信したことです。私は1983年、日本で体外受精が始まった、ちょうどその年に大学院に入り、体外受精を開始しました。
- 細川)
- はい。
- Dr.)
- 当時、私は、体外受精による日本最初のお子さんを、是非、自分がつくりたいと、燃えていました。しかし私が体外受精を始めてすぐに、東北大学が1例目を成功させたため、私の最初の成功例は日本の9例目になりました。ただ、私の成功例は日本最初の双子だったので、双子では日本の1例目をつくることができました。私が29歳の時でした。
- 細川)
- そうなのですね。
- Dr.)
- 以来、もう33年間、体外受精の臨床と研究に没頭してきました。最初の情熱は今も変わらず続いています。
- 細川)
- 素晴らしいですね。
- Dr.)
- 体外受精を始めて10年くらいたった頃、そこそこの経験も積み、上手になったと自惚れて、うまく排卵誘発しさえすれば、妊娠させられるなどと思いました。しかしその後、それは大間違いであると気付きました。
- 細川)
- うまく排卵誘発しさえすれば、妊娠させられるというわけではないと。
- Dr.)
- ただただ排卵誘発して、無理やり体外受精をしても不良な胚ができるだけです。大切なことは、まず、患者さんに健康になってもらうことです。母体はもちろん、パートナーの男性もです。そして、患者さん各個の病因に応じて、オーダーメードの排卵誘発をして卵巣機能を調整します。そうすると、今まで不成功を繰り返した難治症例でも良い卵、良い胚ができて妊娠に至るのです。
- 細川)
- なるほど。
- Dr.)
- つまり、主役は僕(医者)じゃなかったのですね。当然のことですけど、主役は、お二人であり、卵、精子なのです。まずは、お二人がいい卵やいい精子を育むよう、そこから導いて差し上げることが大事だということを悟りました。
- 細川)
- やはり、卵と精子が主役なのですね。
- Dr.)
- そうです。よい卵子や精子をつくるには、まずは、 患者さんが健康で幸せな状態になることから始めること。これがなければ次のステップはないと言っても過言ではありません。そして、そのことは、近い将来の生活習慣病を予防することや美容、アンチエイジングに繋がるのです。このインタビューにより、一人でも多くの患者さんがお子さんと健康を得られることを切に願います。
- 細川)
- 本日は大変貴重なお話をお伺いできました。ありがとうございました。
ドクターに訊く
ドクターにインタビュー
- 第25回 精索静脈瘤と男性不妊 〜精子の質を高めてパートナーの治療成績の改善を図る
- 第24回 子宮内膜症と不妊治療
- 第23回 納得のいく選択や決断のための“情報共有”について考える
- 第22回 老化促進物質AGEをターゲットにした不妊治療
- 第21回 不育症を正しく理解する~不妊症と不育症はひと続き
- 第20回 栄養と妊娠力
- 第19回 40代の不妊治療について考える
- 第18回 不妊治療の終結について考える
- 第17回 栄養と生殖機能の関連研究の第一人者に聞く
- 第15回 オーダーメイドの不妊治療とは?~あるべき不妊治療を考える
- 第14回 30代後半、40代からの不妊治療
- 第13回 不妊治療には、なぜ、“対話と物語”が大切なのか?
- 第12回 妊娠前からの食生活が子どもの一生の体質をつくる
- 第11回 妊娠しやすい思考ってあるのでしょうか?
- 第10回 クラミジア感染症と不妊 ~検査と治療についての正しい知識
- 第09回 ストレスフリーの不妊治療を目指して
- 第08回 体が本来持っている妊娠する力を取り戻す
- 第07回 酸化ストレスと男性不妊
- 第06回 質のよい卵を育むための生活習慣
- 第05回 不妊治療でなかなかよい結果が得られないとき
- 第04回 体外受精の後悔しない病院選びについて
- 第03回 ちゃんと知っておきたい薬のこと
- 第02回 妊娠しやすい夫婦生活とは?
- 第01回 不妊予防という考え方