ドクターにインタビュー
vol.25
精索静脈瘤と男性不妊 〜精子の質を高めてパートナーの治療成績の改善を図る
菅藤 哲 先生(かんとうクリニック院長)
【3】精索静脈瘤の診断 〜 男性不妊専門医による診察が必須
- 細川)
- 精索静脈瘤にはなんらかの自覚症状はあるのでしょうか?
- Dr.)
- 自覚症状がない場合が多いですね。まれに陰のうに違和感があるとか鈍痛があるということがあります。
- 細川)
- そうすると、もしも、精液検査の結果が悪かった場合、その原因として精索静脈瘤があるかどうかを知るにはどうすればよいのでしょうか?
- Dr.)
- 男性不妊を専門とする泌尿器科医の診察を受けるのが確実です。
- 細川)
- やはり、そうですか。ただ、現実の問題として、男性不妊を専門とする泌尿器科医による診察の機会が限られていることを考えると、まずは、ある程度、セルフチェックすることが出来ればよいと思うのですが。
- Dr.)
- そうですね。まずは、自己検診していただくのがよいと思います。その方法をお示しします。
- ◎精索静脈瘤診断のための自己検診方法
①起床してから陰のうや会陰部に重苦しさや違和感が出てくることがある。
②精巣(睾丸)の大きさや陰嚢のふくらみにどうやら左右差がありそうだ。
③陰のうが常に柔らかく垂れ下がっていて、立ったりお腹に力を入れたりすると陰のう何なんとなく膨れてくる。皮膚ごしにミミズ腫れのようなものが見える、或いは触れる。
④精液所見に異常所見が出やすい。
- 細川)
- 実際にわかるものでしょうか?
- Dr.)
- グレード3なら間違いなくわかります。グレード2や1になると難しいかもしれません。
- 細川)
- グレードがあるのですね。
- Dr.)
- 専門医の診察では、視診や触診の後、超音波検査を行います。精索静脈瘤の程度はグレード1から3に分類されています。グレード1は立った状態や腹圧をかけた状態、触診で確認できるレベル、グレード2は立った状態や触診で確認できるレベル、そして、もっとも重いグレード3は視診で確認できるレベルになります。
- 細川)
- セルフチェックで100%発見するのが難しいとなると、精液検査の結果が悪かった場合は、やはり、男性不妊専門医の診察を受けるべきということになりますね。
- Dr.)
- そういうことです。さらに、WHOによれば、精液所見が正常でも11.7%に精索静脈瘤が存在したとされているのですよ。
- 細川)
- 精液検査に問題なくても10人に1人の割合で精索静脈瘤があると!
- Dr.)
- そのようなケースでも、精索静脈瘤を治療したほうがパートナーの妊娠率が向上するという研究報告があります。
- 細川)
- 精索静脈瘤が精子の数や運動率ではなく、精子の質だけを悪くするということがあるということになりますね。
- Dr.)
- 精索静脈瘤の影響というのは単純ではないということ、また、男性の妊娠させる力は精液検査だけで把握することが難しいということです。
- 細川)
- であれば、精液検査の結果にかかわらず、まずは、男性不妊の専門医によるスクリーニングを受けておくことが大切になってきます。
- Dr.)
- 夫婦で不妊を意識していらっしゃるのであれば男性から行動するのもよいと思います。実際にそのような男性が増えてきています。
- 細川)
- これまでの認識を改めねばなりませんね。
ドクターに訊く
ドクターにインタビュー
- 第25回 精索静脈瘤と男性不妊 〜精子の質を高めてパートナーの治療成績の改善を図る
- 第24回 子宮内膜症と不妊治療
- 第23回 納得のいく選択や決断のための“情報共有”について考える
- 第22回 老化促進物質AGEをターゲットにした不妊治療
- 第21回 不育症を正しく理解する~不妊症と不育症はひと続き
- 第20回 栄養と妊娠力
- 第19回 40代の不妊治療について考える
- 第18回 不妊治療の終結について考える
- 第17回 栄養と生殖機能の関連研究の第一人者に聞く
- 第15回 オーダーメイドの不妊治療とは?~あるべき不妊治療を考える
- 第14回 30代後半、40代からの不妊治療
- 第13回 不妊治療には、なぜ、“対話と物語”が大切なのか?
- 第12回 妊娠前からの食生活が子どもの一生の体質をつくる
- 第11回 妊娠しやすい思考ってあるのでしょうか?
- 第10回 クラミジア感染症と不妊 ~検査と治療についての正しい知識
- 第09回 ストレスフリーの不妊治療を目指して
- 第08回 体が本来持っている妊娠する力を取り戻す
- 第07回 酸化ストレスと男性不妊
- 第06回 質のよい卵を育むための生活習慣
- 第05回 不妊治療でなかなかよい結果が得られないとき
- 第04回 体外受精の後悔しない病院選びについて
- 第03回 ちゃんと知っておきたい薬のこと
- 第02回 妊娠しやすい夫婦生活とは?
- 第01回 不妊予防という考え方