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妊娠しやすいカラダづくり 第441号 2011年11月27日発行
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お子さんを望まれるカップルを応援します。
なかなかお子さんが授からないことに悩むカップルが、
悩みを克服するために、"二人で話し合い、考えを整理"して、
"自分たちにふさわしい答えを出す"上でのヒントになるような情報を、
出来る限り客観的な視点で、毎週末、登録頂いた皆さんに配信しています。
━[今週の内容]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼今月のトピックス
体外受精・胚移植等の臨床実施成績を読む
▼妊カラ編集室から
▼編集後記
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今 月 の ト ピ ッ ク ス
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体外受精・胚移植等の臨床実施成績を読む
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日本産科婦人科学会は、毎年、日本全国の登録施設の体外受精や顕微授精の
治療成績を集計して、公表しています。
今年も2009年度分の治療成績が発表されました。
約2年遅れになりますが、日本の高度生殖医療に関する公式データとしては
最新のものです。
そこで、今週の妊カラでは、「体外受精・胚移植等の臨床実施成績を読む」
として、皆さんに参考にしてもらえそうなデータをご紹介したいと思います。
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2009年度体外受精・胚移植等の臨床実施成績を読む
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━ 548の病院やクリニックが高度な不妊治療の実施を報告しています
▼実施施設数
実施施設数 548
2009年に体外受精や顕微授精を実施したと報告している病院やクリニッ
クは548施設でした。
これは、諸外国と比べると大変多い数です。たとえば、総人口で2.5倍弱
のアメリカでは441と報告されていますので、日本の多さがわかります。
ところが、実績のバラツキが大きく、たとえば、70%は年間300周期以
下で、700周期以上の施設は全体の1割強です。
つまり、高度な不妊治療を実施しているクリニックや病院の数は多いものの、
多くのクリニックは、一定の技術レベルを維持できるだけの治療数をこなし
ていないということが言えると思います。
高度な技術が伴う治療では、豊富な経験がその技術レベルを左右すると考え
られますので、クリニックを選ぶ際には治療実績を確認することが大切です。
━ 日本の高度生殖補助医療の治療周期総数は世界一です
▼2009年の治療法別の治療周期総数と出生児数
治療周期総数 出生児数
新鮮胚を用いた治療 63,083 5,046
凍結胚を用いた治療 73,927 16,454
顕微授精を用いた治療 76,790 5,180
合計 213,800 26,680
2009年の治療周期総数は21万3800周期で、世界で最も多く体外受
や顕微授精精が実施されています。
そして、それにより、2万6680人のお子さんが生まれています。
━ 40人に1人が体外受精や顕微授精で生れています
▼総出生児数に対するART出生児の占める割合とその推移
ART出生児数 総出生児数 %
1999年 11,929 1,177,669 1.01
2004年 18,168 1,110,721 1.64
2008年 21,704 1,091,156 1.99
2009年 26,680 1,070,035 2.49
体外受精や顕微授精による出生児は、年々、増加の一途をたどり、反対に、
総出生児数は減少し続けています。
特に、この2、3年は、その傾向にドライブがかかっていることがわかると
思います。
10年前には高度な不妊治療による出生児は100人に1人の割合だったの
が、2008年には50人に1人、そして、最新データ(2009年)では
40人に1人の時代になっています。
この数年の体外受精の普及のスピードはかつてないほどです。
━ 移植あたりの妊娠率と採卵あたりの妊娠率の開きが大きくなっています
▼治療方法別治療成績(全体)
IVF ICSI 凍結胚
治療周期数 61,366 65,993 72,405
採卵周期数 59,133 64,675
移植周期数 28,075 29,336 69,979
妊娠率(移植あたり) 24.3% 20.3% 32.6%
妊娠率(採卵あたり) 11.5% 9.2%
流産率 23.6% 26.4% 25.3%
生産率(移植あたり) 16.9% 13.5% 22.3%
生産率(採卵あたり) 8.0% 6.1%
治療方法別の妊娠率、生産(出産に至った)率です。
まずは、凍結胚の移植あたりの妊娠率が32.6%と高く、欧米に比べても大変
高い数字です。
これは、胚にダメージを与えることなく、凍結し、融解する技術において、
日本は世界最高レベルにあることを意味しています。
反対に、体外受精や顕微授精の採卵あたりの妊娠率は、それぞれ、11.5%、
9.2%と、世界水準を大きく下回っています。
また、日本は世界で最も多くの治療が実施されているのですが、採卵あたり
の妊娠率は大変低く、移植あたりの妊娠率との開きがあるのが特徴です。
これは、採卵しても、移植できなかったケースが大変多いことをあらわして
います。
その原因として、高齢の患者が多いこと、また、自然周期やクロミフェンに
よる低刺激法の増加などが考えられます。
さらに、流産率はいずれの治療法でも25%前後と、高い割合を示しています。
これも、体外受精や顕微授精だからというよりも、高齢の患者が多いことに
よるものと考えられます。
その結果、採卵あたりの出産まで至る確率は、体外受精で8.0%、顕微授精で
6.1%になっています。
これが全体の治療法別の治療成績です。
治療成績をチェックする際には、採卵あたりなのか、移植あたりなのか、ま
た、流産率や生産率も含めて、確認しておくことが大切です。
━ 適切な卵巣刺激法を選択することが治療成績を左右します
▼年齢別卵巣刺激法別治療成績
自然周期 クロミフェン アゴニスト アンタゴニスト
採卵あたり妊娠率
30歳 18.5% 15.5% 21.3% 16.8%
35歳 17.3% 11.4% 20.5% 17.2%
40歳 7.9% 5.1% 11.9% 10.1%
移植あたり
30歳 36.9% 28.1% 33.8% 30.0%
35歳 37.1% 26.7% 30.3% 28.3%
40歳 21.1% 15.4% 18.4% 16.7%
卵巣刺激法には、ロング法やショート法などのGnRHアゴニストやGnRHアンタ
ゴニスト法、また、クロミフェン法などの低刺激法や自然周期法などがあり
ます。
治療成績をみると、低刺激法や自然周期は採卵できる卵子の数が少なくなる
ことから、採卵あたりの妊娠率は低くなります。
ただし、移植まで進むことができれば、他の刺激法とそん色のない妊娠率を
得ることができます。
高度な不妊治療において、妊娠できるかどうかは、妊娠するだけの力のある
質の良い卵子と巡り合えるかどうかにかかっていると言っても過言ではあり
ません。
そのため、治療成績を高めるには、多くの卵子を採卵し、質のよい卵子に巡
り合える確率を高くすることがポイントになります。
そして、そのために卵巣を刺激します。
ただし、とにかく、卵巣を刺激し、たくさんの卵子を育て、採卵すればいい
というわけではなく、卵巣予備能(卵巣内にどれだけ卵子が残っているか、
卵巣の力を測る目安)を測定したうえで、それにふさわしい卵巣刺激法を採
用することが大切です。
卵巣刺激法の良し悪しについて、質問を受けることが多くなりましたが、卵
巣刺激法そのものの良し悪しを論じても意味がありません。
体外受精の目的は、妊娠、出産することですから、大切なことは、個々の患
者さんにふさわしい卵巣刺激法を採用することです。
ロング法やアンタゴニスト法、低刺激法では良好な胚が得られなかったのに、
自然周期で妊娠、出産できたとか、自然周期や低刺激法を繰り返しても良好
な胚を得られなかったのに、アンタゴニスト法を行って妊娠、出産できたと
いうケースはよくあるからです。
このことから、体が受精や顕微授精では、卵巣予備能、また、PCOSや子
宮内膜症の有無、不妊原因や過去の治療成績を考慮に入れて、最適な卵巣刺
激法を決定、実施し、高い技術による採卵、培養、胚移植を実施することが
妊娠できるかどうかを大きく左右すると言えます。
体外受精でなかなか結果が得られない場合は、同じ卵巣刺激を繰り返すので
はなく、よりふさわしい刺激法を見極め、実施することが大切です。
最近は卵巣予備能を評価するのに最も有用であると考えられるアンチミュラ
リアンホルモンが注目されており、初回の卵巣刺激法の選択や排卵誘発剤の
使用量を決定するための重要な指標となっています。
━ 先天異常児は自然妊娠と比べて差はない
▼治療法別先天異常児数とその割合
先天異常児数 割合
体外受精 87 1.72%
顕微授精 103 1.98%
凍結胚移植 290 1.76%
合計 480 1.80%
先天異常の子どもが生まれる割合は、全体においても、いずれの治療法にお
いても、自然妊娠で生れた子どもに比べて、差は認められていません。
また、多い先天異常は、トリソミー81例(0.3%)、心房・心室中隔欠損症68
例(0.25%)、口唇・口蓋裂25例(0.09%)、無脳児・無頭蓋児12例(0.04%)、
多指症10例(0.03%)でした。
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以下のサイトで全て公開されています。
▼日本産科婦人科学会ARTデータ集
http://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/data.htm
▼2009年分ART臨床実施成績
plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/2009data_pdf.pdf
▼新鮮胚治療における排卵刺激法の種類別・胚移植数別・年齢別妊娠率
http://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/2009date201111.pdf
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さい。また、皆さんの声もお聞かせいただければ嬉しいです。
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編 集 後 記
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今回ご紹介した体外受精・胚移植等の臨床実施成績は、日本産婦人科学会が
毎年、全国の登録施設から報告のあった生殖補助医療の成績をまとめ・解析
し、その結果を報告したものですが、2006年までは、全体の成績しか公
表していませんでした。
不妊治療の治療成績は、年齢によって大きく左右されますので、全体の平均
だけであれば、それほど参考にならなかったのですが、2007年からは、
年齢別、卵巣刺激法別の治療成績も公表されるようになりました。
ところが、生殖医療の進歩で、さまざまな治療オプションが増え、施設間の
格差が大きくなったことを考えると、それでも患者にとっては、十分な参考
データにはなり得ません。
やはり、アメリカやイギリスのように、それぞれの施設の治療成績まで公表
されることが理想的ですが、全体の傾向を知っておくだけでもずいぶんとク
リニック選びや治療法の選択に役立つと思います。
不妊治療の受け方には全てのカップルに当てはまる正解がありません。
そのうえ、すべてのカップルの希望がかなえられるとは限りません。
であればこそ、後々、後悔のないように自分たちにふさわしい答えをみつけ
ることは何より大切なことと思います。
そのためにも事実を知っておくことが必要です。
ご参考にしていただければと思います。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.441
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://www.akanbou.com
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