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妊娠しやすいカラダづくり 第465号 2012年5月13日発行
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お子さんを望まれるカップルを応援します。
なかなかお子さんが授からないことに悩むカップルが、悩みを克服する
ために、"二人で話し合い、考えを整理"して、"自分たちにふさわし
い答えを出す"上でのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な
視点で、毎週末、配信しています。
━[今週のテーマ]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼最新ニュース解説
不妊治療と出生児の先天異常発症リスクとの関係
▼ヤングのコーナー
不妊治療を楽しんでしまう
▼編集後記
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最 新 ニ ュ ー ス 解 説
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不妊治療と出生児の先天異常発症リスクとの関係
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日本では2009年の新生児の40人に1人は体外受精や顕微授精で生れて
いるというくらい、高度な不妊治療が普及しました。
ただ、人為的な介入度が最も大きな治療であることに変わりはありませんし、
そのことが子どもの健康に及ぼす長期的な影響について、完全に把握された
わけでもありません。
そのため妊カラでは、不妊治療で生れた子どもの「その後」を追跡調査した
研究を、関心をもってフォローしてきましたが、先週、不妊治療と出生児の
先天異常発症リスクとの関連を大規模な集団を対象とした調査結果が発表さ
れましたのでご紹介します。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1008095
この研究の特徴は、子どもの先天異常の発症が生殖医療を施したことによる
ものなのか、それとも、両親の身体の状態に起因するものかのかに焦点を当
てていることです。
そのために、自然妊娠で生まれた子どもと不妊治療で生まれた子どもの先天
異常の発症リスクを比較するだけでなく、治療方法や移植方法別の発症リス
クや不妊症と診断されながら治療を受けないで授かった子どものとの発症リ
スクも調べています。
■生殖補助医療と先天異常のリスク
調査は1986年から2002年までの16年間、南オーストラリア州で生
まれた30万8974人の赤ちゃんを対象に実施されました。
自然妊娠で生まれた子どものうち先天異常を発症したのは17546人で発
症率は5.8%、そして、何らかの不妊治療で生まれた子どもでは513人、
8.3%でした。
この数字をみると、不妊治療で生まれた子どもは自然妊娠で生まれた子ども
に比べて先天異常の発症率が47%も高くなっています。ただし、先天異常
の発症に関連するとされている要因、たとえば、母親の年齢や喫煙習慣、肥
満度、糖尿病などの疾患の影響を統計解析を使って除外し補正すると、28
%にまで低下します。
治療法別にみると、体外受精で生まれた子どもでは165人、7.2%、顕
微授精では139人、9.9%でした。自然妊娠で生まれた子どもの発症率
と比べると、体外受精で26%、顕微授精で77%高くなっています。
これも同様に先天異常発症に関連する要因の影響を除外、補正すると、体外
受精では26%が7%に低下しています。ただ、顕微授精では77%が57
%と低下するものの、依然として高いままです。
このことは、先天異常の発症は、不妊治療を施したからというよりも、その
他の原因、たとえば、直接的にも、間接的にも、不妊症の原因になっている
ものが影響しているようです。
そのため、不妊治療で生まれた子どもの先天異常の発症率が高くなっている
ということです。
また、最も介入度合いが高く、そして、先天異常の発症率も最も高い顕微授
精でも、凍結胚移植で生まれた子どもの先天異常発症率は補正後は自然妊娠
で生まれた子どもとほとんど変わらないくらいになります。
さらに、顕微授精の場合は重度の男性不妊が不妊の原因であることが多いわ
けで、精子の染色体異常の影響が考えらることから、顕微授精も先天異常発
症の決定的な原因になっているとは言えません。
一方、一人目のお子さんを不妊治療を受けて産んだものの、二人目のお子さ
んは自然妊娠で生まれた子どもの先天異常の発症率は、自然妊娠で生まれた
子ども全体の発症率に比べて、補正後も25%高かったとのこと。
そして、不妊症と診断されたものの治療は受けず、自然妊娠で生まれた子ど
もの先天異常発症率も、自然妊娠で生まれた子ども全体の発症率に比べて、
補正後も29%高かったといいます。
このことからも、不妊治療で生まれた子どもの先天異常発症率が自然妊娠で
生まれた子どものそれよりも高いのは、主に、生殖医療そのものよりも、生
殖医療を受けなければならなかった原因によるものと考えられるわけです。
少なくとも、不妊治療、特に、体外受精や顕微授精を受けることを考える際
に、それによって先天異常のリスクが高くなるのではないかと心配したり、
不安に感じたるするほどのことではないと言えるかと思います。
■先天異常について
そもそも、先天異常ということについて正しく理解しておくことも大切です。
日本産科婦人科学会誌には、先天異常は生物が存続していく過程で、必然的
に発生し、しかもその頻度は比較的高く、ヒトでは約3〜5%の頻度で発生
するといわれていると書かれています。
先天異常は、そもそも、避けられないものであるわけです。
そして、その原因としては、偶発的に発生した染色体異常や遺伝子異常など
の内的因子が大部分を占めるとのこと。
外的要因、たとえば、母体感染や母体疾患、栄養(葉酸欠乏)、薬剤、有害
な化学物質、農薬、重金属、酒、タバコ、食品添加物、そして、放射線など
が原因で発症するのは全体の10%程度と言われています。
このように見てみると外的要因としての生殖医療の影響については、極めて
低いと言えるかと思います。
■子どもの心身の健康に本当に影響を及ぼすもの
子どもの健康に影響を及ぼすのは、まずは、「遺伝的な要因」であり、そし
て、「環境」であり、さらに、最近、関心が高まっているのは、「エピゲノ
ム」と呼ばれている、DNAの配列は変化しないまま、遺伝子発現のオン、
オフが抑制されたり、促進されたりしてしまう現象があります。
そして、それは栄養やストレスなどの環境的な要因によって起こるとされて
います。
子宮内の栄養環境が悪いと、胎児の遺伝子発現が影響され、出生後の生活習
慣病にかかりやすくなるという、生活習慣病胎児期発症説はこのメカニズム
が働いているのではないかと言われています。
遺伝的なもの、すなわち、内的要因は、私たちの力ではどうすることも出来
ません。
ところが、環境、すなわち、外的要因やエピゲノムについては、私たち次第
でどうにかなるところがあります。
であればこそ、心配すべきは、生殖医療の影響ではなく、自らの体内環境の
影響であるはずです。
■体内環境の大切さ
これだけ体外受精や顕微授精で子どもを授かることが一般的な方法になった
にもかかわらず、世間的な理解は相変わらずなところが、まだまだ、あるよ
うです。
高度生殖補助医療は、卵子を採りだし、精子と一緒にし、または、精子を注
入し、培養し、そして、成育した胚を子宮内に戻すことです。
つまり、卵子と精子を近づけているだけであって、決して、卵子そのものを
作成しているわけでもなく、遺伝子を操作しているわけでもありません。
一方で、受精の環境は、もちろん、女性の卵管内が本来的なわけですが、体
内環境はその時々によって変化しますが、現代の生殖医療において研究され、
コントロールされた培養環境は一定で、安定したものです。
皮肉なことに、もしも、食生活をはじめとした生活習慣の乱れで、女性の体
内環境が悪化してしまったら、かえって、体外受精での培養環境のほうが新
しい命にとっては良好であるケースもないとは言えません。
自然な環境がベストであるとは限らないということです。
新しい命、そのものは、私たちにはコントロールすることは、高度医療でも
不可能です。
ところが、新しい命が健全に成育するためにとても大切な環境、すなわち、
妊娠前から出産までは女性の体内環境、そして、出産後は、養育環境につい
ては、私たちの意識と努力で、良好に維持することは可能です。
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Reproductive Technologies and the Risk of Birth Defects
Michael J. Davies,et.al
N Engl J Med 2012; 366:1803-1813
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1008095
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記事ついての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
news-master@akanbou.com
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ヤングのコーナー 〜 不妊治療を楽しんでしまう
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2週ほどお休みをしてしまいましたが、今号よりまた登場してまいりました
ヤングです(笑)。
唐突ですが、皆さん、不妊治療楽しんでいますか?
こんな質問投げかけた私がバカでしたかねぇ。そんなもん、楽しめるわけな
いでしょ。何その質問?と言われるのがオチかもしれませんね。
でも、私が「冷取り大作戦」を始めてからですが、ここまできたら、どうせ
なら、不妊治療も楽しんでやれ、そう思った時期があったからです。
そして、どうしたら楽しめるのかと色々考えてみました(開き直り、それと
も、単に暇だっただけなのかもしれませんが、、、)。
まずは、クリニックに行くことを楽しんでみようと思い、楽しめる要素は何
があるか私なりに考えてみました。
例えば・・・
・午前中に予約を入れて、帰りに美味しいランチを食べて楽しむ。
・クリニックに行く時も、女を忘れずおしゃれを気に掛けて楽しむ。
・クリニックに来ている人のファッションチェックをして楽しむ。
・待ち時間も楽しめる雑誌や本を持っていく。
・待ち時間に近くのカフェでのんびりとくつろぎタイムを楽しむ。
・・・とまぁ、こんな感じです。
そして、その結果、今まで重たい空気で通っていたクリニックも、1つでも
楽しみを見つける事でいつもより足取りも軽くなったような気がします。
また「冷取り」を実行していくうちに、日々の小さな変化に気づくことで、
嬉しさや喜びに変わり、気付けば楽しみながら取組めていたと思います。
今もウォーキング以外は続けるよう心掛けています。
そしてもちろん、治療以外の日常の生活も楽しむようにしました。
楽しむというよりも、些細な事でも気持ちがいつもより少しだけでもワクワ
ク・ドキドキと高揚する事を探しては行動して過ごすようにしていましたね。
妊カラサイト内の記事にも楽しむ事を実行して、子供が授かったという報告
がいくつかありました。
日々の生活を楽しもうと気持ちを切替えるだけでも、ストレスが緩和され、
それが良い結果に結びつく可能性に繋がるかもしれないと思うのです。
■今週の気になる記事をPickUp!
・子供が欲しいと思うよりも楽しくしようと気持ちを切り替えて
http://www.akanbou.com/houhoku/houkoku-2006071901.html
・いつかはと自信を持ち、自然に任せ楽しく生活を送るように心がけて
http://www.akanbou.com/houhoku/houkoku-2007120501.html
・"どうしたら妊娠できるか"ではなく、"二人でどう楽しむか"にこだわりたい
http://www.akanbou.com/column/henshuuchou/20081223.html
・妊娠報告に教えられること
http://www.akanbou.com/column/henshuuchou/20060416.html
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▼不妊に悩む夫婦の自己決定を支援する情報サイト
→「妊娠しやすいカラダづくり」
http://www.akanbou.com/
▼妊カラ・男性不妊編
→「男性不妊 〜 ふたりで知っておきたいオトコのこと」
http://www.akanbou.com/dansei-funin/index.html
▼医師がサポートするサプリメントセレクトショップ
→「ネイチャーズギフト」
http://www.nature-g.com/
▼ドコモ、au、ソフトバンク公式携帯サイト
→「おしえて!不妊ナビ」
http://funinavi.edia.ne.jp/index.html
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ツイッターからも情報を発信しています
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ツイッターからもさまざまな情報を発信しています。サイトに紹介するほど
でもない研究報告やトピックなども紹介しています。よければフォローくだ
さい。また、皆さんの声もお聞かせいただければ嬉しいです。
・妊娠しやすいカラダづくりツイッター
http://twitter.com/ninkara
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編 集 後 記
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「免疫の反逆」という本を読みました。
自己免疫疾患と呼ばれている病気があります。関節リューマチ、1型糖尿病、
キランバレー症候群、膠原病など、私たちの身体に備わった免疫システムは
本来は外的を攻撃し、排除するという、私たちの身体を守るためにあるわけ
ですが、何をどう間違ったのか、自らの組織や細胞を攻撃してしまう病気で
す。
特定の臓器や組織を攻撃するものもあれば、全身性のものもありますが、抗
精子抗体や習慣性流産もその1つです。
その自己免疫疾患が、どんどん、増えていて、いまや先進国で12人に1人
が発病する現代病なのだそうです。
そして、最も興味深かったのは、その原因は複雑で、複合的なのですが、発
症のきっかけとして、ウイルスやワクチン、重金属、種々の化学物質などが
考えられているところです。
特に、今や、食品添加物や農薬、化学肥料に全く触れていない食品を探すこ
とは、ちょっとした努力とコストが必要です。
考えてみれば、外部の環境、イコール、私たちの体内環境なわけです。
私も患っていることもあって、周囲の良好な環境づくりに働きかけることは、
私たち自身のためであり、そして、私たちの子どもたち、そして、その子ど
もたちのためでもあることが実感できるものでした。
一読をお勧めします。
http://www.diamond.co.jp/book/9784478013380.html
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.465
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://www.akanbou.com
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◎配信部数
・自社配信: 201部
・まぐまぐ:5,001部
・合計部数:5,202部(5月13日現在)
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