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VOL.468 ステップアップ治療について考える

2012年06月03日

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 妊娠しやすいカラダづくり 第468号  2012年6月3日発行

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 お子さんを望まれるカップルを応援します。

 なかなかお子さんが授からないことに悩むカップルが、悩みを克服する
 ために、"二人で話し合い、考えを整理"して、"自分たちにふさわし
 い答えを出す"上でのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な
 視点で、毎週末、配信しています。


━[今週のテーマ]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼今月の特集
ステップアップ治療について考える

▼ヤングのコーナー
「うさぎのたまご」を読みました。

▼編集後記


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 今 月 の 特 集
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 ステップアップ治療について考える
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不妊治療で妊娠を目指す場合、治療方法については、常に、いくつかの選択
肢があります。

どんな治療法を選択すべきか、ルールや正解はありません。

タイムリミットや経済的な制約がある中で、後々、後悔しないためには、ま
ずは、自分たちの状態を出来るだけ正確に把握し、どんな選択肢があるのか
を知って、自分たちにふさわしい治療を選択することがとても大切になって
きます。

一方、通院をはじめて、一通りの検査の結果、特に病気や異常が発見されな
かった場合、「ステップアップ方式」という治療方針のもとに治療が進めら
れるのが一般的です。

ただし、一般的な治療方針とは言っても、あくまでも目安であって、決して、
予め敷かれたレールの上を進むためのものではありません。

ステップアップ方式を採用するにしても、やはり、それぞれの治療の目的を
理解し、自分たちにとって、どれだけ必要な治療なのか、どれだけふさわし
い治療なのか、ふたりで考えながら、ふたりで決めることが大事なことだと
思います。

そのためには、この治療方針を正しく理解しておく必要があります。そこで、
今週は、このステップアップ治療について考えてみました。


━ ステップアップ方式とは?

ステップアップ方式とは、検査をしても原因が見つからない場合、もしくは、
原因と考えられるところを治療しても妊娠しない場合、肉体的、経済的に負
担の軽い治療方法、言い替えれば、自然に近い方法からスタートして、同じ
治療を一定の回数繰り返しても妊娠しなければ、妊娠の確率を高めるために、
もしくは、隠れた不妊原因をクリアするために、徐々に、治療のレベルをあ
げていく、言い替えれば、介入度の高い治療に移行していくやり方のことで
す。

それぞれの治療で一定の回数、たとえば、5、6回繰り返すのは、確率の問
題をクリアするためです。通常、周期あたりの妊娠率は25〜30%とされ
ていますので、数回繰り返して判断する必要があるからです。


━ なぜステップアップ方式なのか?

不妊治療のスタート時点でそれまで妊娠できなかった原因を完全に把握する
のは困難だからです。

つまり、基本検査を行っても、調べられるのは限られた範囲にしか過ぎない
ということです。実際のところ、検査で「異常なし」というのは、不妊の原
因がないわけというわけでは決してなく、単に見つけられないだけなのです。

また、子宮内膜症や子宮筋腫などがある場合でも自然に妊娠できるケースも
あれば、それらが妊娠を妨げているケースもあり、不妊の原因になっている
のかどうか、もしも、不妊の原因になっているのであれば、どのように、ど
の程度妊娠の妨げになっているのかについても、予め知る方法はないのです。

そのため、不妊治療では、そのスタートで、それぞれの患者の「必要最低限
の治療方法」を確定させたり、「必要な治療期間」を想定したりすることが
とても難しいという宿命があるのです。

このことが、「先の見えにくい」と言われ、治療をはじめればすぐに妊娠で
きることもあれば、思っていた以上に治療期間が長引くことが珍しくない主
な理由なのです。

そこで、不必要な治療で不必要なリスクや負担を患者が負ってしまうのを避
けようとすると、必然的に、このステップアップ方式が最適な治療方針にな
るというわけです。

ステップアップ方式は、一見、「とりあえず試してみよう」的で、「治療の
精度が低い」治療方針に思えてしまうのも、不要な治療を避けようとすると、
致し方ないところなのかもしれません。

もちろん、不要かもしれないリスクや負担は覚悟のうえで、とにかく、早く
妊娠したいという考えが明確であれば、ステップを踏まずに治療を進めると
いう方法を採用することになるわけです。


━ ステップアップ治療の実際は?

それではステップアップ方式の具体的な方法です。ここで理解しておいてほ
しいのは、あくまで、目安であることです。それぞれの状況や女性の年齢、
考え方によって、方法は異なるということです。

1)タイミング指導

まずは、妊娠しやすいセックスのタイミングを医師に指示される「タイミン
グ指導」をスタートします。セックスのタイミングがあっていないために妊
娠できなかったカップルはこれで妊娠することが出来るようになります。

2)タイミング指導+排卵誘発(過排卵)

この方法を繰り返しても妊娠しなければ、排卵誘発剤を使って複数の卵子を
排卵させて(過排卵)、タイミング指導を行います。正常な排卵があるよう
に見えても、卵胞の成熟が十分でなかったり、たまに、黄体化未破裂卵胞が
あったり、排卵後の卵子をしっかりピックアップできなかったりして、妊娠
しにくなったカップルは、複数の卵子を排卵させることで、妊娠する可能性
が高まります。

3)人工授精

この複合技を繰り返しても妊娠しなければ、精子を子宮に注入して、精子と
卵子が出会いやすくします。精子が女性の子宮頸管をうまく通過できていな
かったカップルは人工授精で妊娠の可能性が高まります。

4)人工授精+排卵誘発(過排卵)

自然な周期(排卵誘発を行わない)の人工授精を繰り返しても妊娠できない
場合には、排卵誘発による過排卵を組み合わせて妊娠の確率を高めます。

ここまでが一般不妊治療と呼ばれている治療法です。

5)体外受精

人工授精を数回繰り返しても妊娠できなければ、何らかの理由で卵子と精子
が出会えていないことを想定して、体外受精を行います。

6)顕微授精

体外受精で受精出来なければ、顕微授精を行います。


━ ステップアップ治療とはどのように妊娠を目指す方法なのか?

さて、自分たちにとっての必要かどうか、適切な方法かどうかを検討するた
めにも、ステップアップとは、何をするものなのか、正しく理解しておきた
いものです。

なぜなら、ステップをアップするとか、自然に近い方法からより介入度の高
い方法へ移行するというのは、いずれも「治療レベル」のことを言っている
のであって、「何のための」治療なのかを表しているものではないからです。

レベルを上げるのは、あくまでも「手段」であって「目的」ではありません。

手段が必要かどうか、自分たちにふさわしいかどうかは、その目的を明らか
にしなければ検討しようがありません。

それまで妊娠できなかった原因がみつけられないわけですから、ピンポイン
トの治療が望めません。

そこで、治療の目的は「治す」というよりも、「確率を高める」ことになら
ざるを得ません。

そして、どのように確率を高めるのかと言いますと2つあります。

1つは、排卵誘発をかけて、発育卵胞を増やし、通常、周期に1つしか排卵
しないところを複数の卵子を排卵させる方法です。飲み薬ではだいたい2個
から5個、注射薬では多くなると30個くらい発育します。排卵する卵が増
えると、自然妊娠でも、体外受精でも妊娠の確率は高くなります。

ただし、多胎妊娠や卵巣が腫れたりする副作用のリスクが伴います。

もう1つは、卵子と精子の距離を近づけることです。

セックスして膣内に射精された精子は卵子までの「10センチ」の距離を移
動しなければなりませんが、人工授精では「3センチ」に縮まり、そして、
体外受精では「1センチ」、さらに、顕微授精では「0センチ」になるわけ
です。

つまり、精子が自力で移動しなければならないところを卵子の近くまで連れ
ていってあげることで、卵子と精子がより確実に出会い、受精できるように
する、すなわち、「卵子と精子の距離を縮める」のが生殖補助医療の本質な
わけです。


━ 治療の目的と必要性、そして、自分たちらしさ

ステップをあげるということは、「卵の数を増やす」ことであり、「卵子と
精子の距離を近づける」ことなのです。

極論すると、自然な状態で卵子と精子が出会えていればステップをあげる必
要性は大変低くなってしまうわけです。

ただし、繰り返しますが、そのことを確実に確かめる方法はありません。

また、年齢が高くなってくればくるほど、卵子と精子が出会うことを阻害す
るリスクも高くなるものです。

そのうえで、治療法を選択することが大切だというわけです。

自分たちにとっての必要性は医師のアドバイスを求めなければなりませんが、
自分たちにふさわしいかどうかは、当事者であるふたりにしかわかりません
し、決められないことでしょう。


━ ステップダウンという選択肢

妊娠を妨げている原因を正確に把握することが困難であるということは、治
療の必要性を正しく把握することも、また、困難であるということです。

また、ステップアップ治療は、加齢による卵子の老化を治療するものではあ
りません。

そのため、体外受精や顕微授精が、最後で、究極の治療法ではないわけです。

つまり、体外受精でも妊娠できなかったから自分たちは妊娠できないと考え
るのも早計で、ステップダウンという選択肢も現実的であると言えるのです。

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info@akanbou.com


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 ヤングのコーナー 〜 「うさぎのたまご」を読みました
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こんにちは、ヤングです。

「オカンの嫁入り」の著者、咲乃月音(さくのつきね)さんの「うさぎのた
まご」という本を読みました。

こんなに泣けた本は、過去にないほど、涙が溢れてきて電車の中では涙を必
死にこらえて読みました。

不妊治療と向き合う主人公の松田昌子と昌子を取り巻く家族、友人、そして
家族の一員でもあるうさぎのタマとの日常を関西弁で綴り、ほんわかした心
温まる小説です。

私も含めて不妊治療経験者や不妊治療中の方にとっては、自分の経験と投影
してしまう部分もあり、昌子の状況や気持ちが自分のその時の状況や気持ち
と重なって、胸が詰まる思いになるかもしれませんが、昌子が不妊治療と向
き合う気持ちの変化は、一緒に共感でき、涙を誘います。

また、旦那様との本当に素敵な夫婦愛に感動してしまいました。

私の心に響いた言葉をご紹介します。

「昌子さんの中で眠っている奇跡のたまご、きっと目を覚ましてくれる日が
来るって僕は信じたいんです。」

「産みたくても産めない人もいてる。産めても産みたくない人もいてる。け
ど命は、母親を選んだりせんと舞い降りる。そこには公平も不公平もなくて、
ただただ奇跡みたいな巡り合わせがあるだけで。」

ご夫婦で一緒に読んでもらいたい1冊です。

◎「うさぎのたまご」 宝島社 咲乃月音著
http://tkj.jp/book/?cd=01965701

◎著者:咲乃月音ブログ「お月さんを探して」
http://moonsound.cocolog-nifty.com/blog/

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 編 集 後 記
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6月が始まりました。

規則正しい睡眠は妊娠する力を維持するのにとても重要な条件のようです。

アメリカのノースウエスタン大学の研究チームは、マウスを使って、日の光
を浴びる時間と出産率の関係を調べたところ、日の光を長く浴びたマウスの
グループの90%が出産したのに対して、暗い時間を長くしたグループの出
産率は20%にとどまったとのこと。

私たち人間も含めた哺乳類には体内時計があって、カラダのリズムを支配し
ていて、日の光を浴びる長さに強い影響を受けるとされています。

専門家によるとマウスの実験は人間にもあてはまる可能性が大きいと言いま
す。

まだまだ、解明されていないことも多いようですが、早く寝て、早く起きる、
規則正しい睡眠が大切であることは間違いないようです。

また、最近、サイトのほうの更新がなされていないことを指摘いただいてい
ますが、現在、リニューアル作業を進めているためです。

ご心配いただき恐縮です。

しこしことやっております。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.468
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://www.akanbou.com
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◎配信部数:5,202部(6月3日現在)
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