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妊娠しやすいカラダづくり 第469号 2012年6月10日発行
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お子さんを望まれるカップルを応援します。
なかなかお子さんが授からないことに悩むカップルが、悩みを克服する
ために、"二人で話し合い、考えを整理"して、"自分たちにふさわし
い答えを出す"上でのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な
視点で、毎週末、配信しています。
━[今週のテーマ]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼編集長コラム
リスク&ベネフィット
▼ヤングのコーナー
流産を経験した後の治療に対するモチベーション
▼編集後記
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編 集 長 コ ラ ム
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リスク&ベネフィット
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先週の金曜日に、日本不妊カウンセリング学会が開催され、「生殖医療とエ
ピジェネティクス」という特別講演がありました。
http://www.jsinfc.com/meeting/011meeting.html
難しそうな講演のタイトルですが、生殖医療とゲノムインプリンティング異
常症という先天性の難病の発症リスクの関連についてのお話しでした。
体外受精や顕微授精では、卵子や精子を体外に採りだして、いろいろな操作
を施します。それは、受精の前後という、生き物としては最も無防備で、傷
つきやすく、環境の変化にとてもデリケートなときですから、生殖医療技術
が何らかの影響、特に、遺伝的な異常を引き起こしはしないか、これまで常
に懸念され、心配されてきました。
そのため、体外受精や顕微授精出生児の追跡調査が、世界中で数多く実施さ
れ、今や安全な治療法として確立されていますが、その影響が完全に把握さ
れたわけではありません。
たとえば、体外受精や顕微授精で生まれた子どもは「ゲノムインプリンティ
ング異常症」の発症頻度が増えるというショッキングな報告が、数年前から
世界のあちこちでなされ、注目されています。
そして、その原因はよくわかっていませんが、体外受精や顕微授精が、卵子
や受精卵のDNAの配列を変えることなく、DNAの性質を長期的に変えて
しまう「エピジェネティック」な変化によるものではないかと考えられてい
るとのこと。
今回、「ゲノムインプリンティング異常症」の発症についての全国実態調査
が実施されたのですが、その研究チームのリーダーの先生がその結果を講演
されたというわけです。
ちょうど、最近の妊カラでも、「体外受精や顕微授精と先天異常発症リスク
との関連についての最新の研究報告」や「受精前後の母親の体内の栄養環境
が子どもが出生し、成人してからの体質にまで影響を及ぼすという、生活習
慣病胎児期発症説」について、取り上げていましたので、個人的にもとても
興味をもって参加しました。
さて、前置きが長くなりましたが、改めて、リスク(危険性)とベネフィッ
ト(メリット)について、考えさせられました。
どんな治療法も、いや、不妊治療に限らず、世の中のあらゆるモノやコトに
は、必ず、ベネフィット(よい面)とリスク(悪い面)があります。
私たちはベネフィットやリスクを過大視してしまうことがよくあります。
治療法を選択するときに大切なことは、その治療を受けた場合のベネフィッ
トとリスクを、何となくではなく、具体的に、可能であれば数字に置き換え
て挙げることです。
ゲノムインプリンティング異常症にはいくつかの疾患があるのですが、今回
の全国実態調査で高度生殖補助医療と発症リスク増加に関連があったのが、
Beckwith-Wiedemann症候群とSilver-Russell症候群で、体外受精や顕
微授精の出生児では発症頻度が約10倍になることが分かりました。
発症率が10倍になると言われると、体外受精や顕微授精を受けることは大
変なリスクを抱えてしまうように感じてしまいます。
ところが、今回の調査で、Beckwith-Wiedemann症候群は28万7000
人に1人の割合で、Silver-Russell 症候群は39万2000人に1人の
割合で発症していることもわかりました。ですから、その発症率が10倍に
なったとしても、依然として、大変少ない頻度なわけです。
因に、ダウン症は日本ダウン症ネットワークによりますと、約1000人弱
に1人の割合で生まれています。
過大視してしまいがちなのはリスクだけではありません。ベネフィットも、
何となくではなく、その治療を受ける目的をはっきりとさせ、どのくらい妊
娠に近づくのか、可能であれば数字で把握しておくべきです。
そして、リスクとベネフィットを挙げたら、それらを比べます。
もしも、リスクが大変低ければ、その治療法は安全だということになり、ベ
ネフィットの大きさとリスクの低さの差が大きければ、その治療法は受ける
メリットが大きいということになるわけです。
全ての治療法にはベネフィットとリスクがありますが、その内容と大きさは
ぞれぞれのカップルによって異なります。
不妊の原因やその程度が異なればベネフィットの内容や大きさも、当然、異
なるでしょう。
一方、カップルの考え方や志向、価値観が異なればリスクが高い、低いも、
当然、異なってきます。
不妊治療で治療法を選択する場合、すべてのカップルにとっての正解がない
ゆえんです。
自分たちが納得の行く治療法を選択する、すなわち、自分たちの納得解を出
すためには、リスクとベネフィットの両面を常に意識し、比較することが大
切なことだと思います。
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過去の編集長コラムは以下のサイトでご覧になれます。
▼編集長コラムバックナンバー
http://www.akanbou.com/column/main.html#1
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編集長コラムについての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
news-master@akanbou.com
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ヤングのコーナー 〜 流産を経験した後の治療に対するモチベーション
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こんにちは、ヤングです。
読者の皆さんは、どのようにして治療を続けていくモチベーションを保って
いますか?
Hさんからこのようなメールが届きました。
---[Hさんからのメールここから]-----------------------------------
私は42才。二人目不妊で5年間くらい治療を受けています。2週間くらい
前、6W4Dで流産してしまいました。
なかなか難しいのは分かっているのですが、立ち直れずにいます。保育園で
一緒だったお母さんたちは難なく2人目、3人目と授かっているのに。
先生には胚盤胞が取れているんだから大丈夫、やるしかないよと言われてい
ますが、なかなか前向きになれず苦しいです。
あきらめてしまえば楽なのに。全く妊娠できないわけではないから余計あき
らめきれない。
ヤングさんはどうやって苦しい時期を乗り越えましたか?
みなさんはどうやって、治療を続けていくモチベーションを保っているので
しょうか?
仕事中もネットで流産について検索したりしてしまいます。私よりずっと悲
しい体験している人がたくさんいることは分かっていますが苦しいです。
---[Hさんからのメールここまで]-----------------------------------
私も過去に一度流産を経験しているので、本当に辛く苦しいお気持ち、お察
しいたします。
しかも周囲で2人目、3人目と授かっているのを目の当たりにしているので
あれば、尚更苦しい思いをされていることと思います。
私は、流産後、子供をあきらめられなかったから、やっぱり子供が欲しかっ
たから、気持ちを切替えて前を向いて治療に挑むことしかできませんでした。
当時、自然妊娠という選択肢は私の中にはなく、不妊治療で子供が授かる事
ができるかもしれないという思い、いや希望ですね。この希望が私の原動力
に繋がっていたと思います。
皆さんは、辛い時期をどのように乗り越え、治療へのモチベーションを保っ
ていますか?
是非皆さんの声を聞かせて下さい!!
苦しい思いで闘っている人たちの気持ちが少しでも楽になるように、、、そ
んなお力添えになれればいいなぁと思っています。
メールお待ちしております。
最後に。
個人的な意見として治療を続けて行くモチベーション保てない時は、誰にで
もあると思うし、自分の気持ちを受け入れて自然に任せてみるという選択肢
もあると思います。
無理にモチベーション保たなくても良い気がします。
「ひと休み、ひと休み」です。そんな時期があっても良いかと思います。
妊カラサイト内でも流産に関する記事や、Q&A、流産経験後、妊娠したと
いう報告が多くあります。ほんの一部ですが、ご紹介したいと思います。少
しでも、Hさん、そして、同じ経験をされている読者の皆さんの参考になれ
ば幸いです。
■「流産」に関する記事をPickUp!
・流産について正しく理解する
http://www.akanbou.com/topics/topics/002.html
・高度生殖補助医療における流産について
http://www.akanbou.com/news/news.2007070401.html
・「流産の後は妊娠しやすい」というのは本当なのでしょうか?
http://www.akanbou.com/qa/qa.dr.tatsumi-029.html
・不妊、習慣流産をへて
http://www.akanbou.com/houhoku/houkoku-2008030601.html
・排卵誘発剤を止め、2度の流産の後に
http://www.akanbou.com/houhoku/houkoku-2008013101.html
・過去の妊娠報告一覧
http://www.akanbou.com/houhoku/houkoku-archive.html
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young@akanbou.com
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株式会社パートナーズ運営サイト
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▼不妊に悩む夫婦の自己決定を支援する情報サイト
→「妊娠しやすいカラダづくり」
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▼妊カラ・男性不妊編
→「男性不妊 〜 ふたりで知っておきたいオトコのこと」
http://www.akanbou.com/dansei-funin/index.html
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→「ネイチャーズギフト」
http://www.nature-g.com/
▼ドコモ、au、ソフトバンク公式携帯サイト
→「おしえて!不妊ナビ」
http://funinavi.edia.ne.jp/index.html
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ツイッターからも情報を発信しています
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ツイッターからもさまざまな情報を発信しています。サイトに紹介するほど
でもない研究報告やトピックなども紹介しています。よければフォローくだ
さい。また、皆さんの声もお聞かせいただければ嬉しいです。
・妊娠しやすいカラダづくりツイッター
http://twitter.com/ninkara
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編 集 後 記
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最近、不妊治療のドクターの間でも意見や考え方が異なることが多くなって
いるように思います。
そもそも、どのような治療を、どんなペースで受けて妊娠を目指すべきか、
大まかな目安はあっても、決まったルールなどありません。
また、最近の不妊治療、特に、高度生殖補助医療が進歩して、その周辺のさ
まざまな技術が開発されたことも影響があるのかもしれません。
頼りにすべき先生の言うことがバラバラなんて、患者の側からすれば混乱し
てしまいます。
ところが、1つのチャンスととらえることも出来ます。
意見や考え方の違いを知って、比較し、どれが一番自分たちの考えや志向、
価値観に近いのかを考える機会になるからです。
選ぶこと、選ばなければならないということは、つくづく、簡単ではないと
思いますが、自分たちらしい選択が出来たときは、その後の、満足感も高く
なるようにも思います。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.469
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://www.akanbou.com
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◎配信部数
・自社配信: 201部
・まぐまぐ:5,001部
・合計部数:5,202部(6月10日現在)
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当メールマガジンの提供する情報は医師の治療の代わりになるものでは決し
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