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妊娠しやすいカラダづくり 第477号 2012年8月5日発行
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お子さんを望まれるカップルを応援します。
なかなかお子さんが授からないことに悩むカップルが、悩みを克服する
ために、"二人で話し合い、考えを整理"して、"自分たちにふさわし
い答えを出す"上でのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な
視点で、毎週末、配信しています。
━[今週のテーマ]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼8月の特集
精子の質にこそ目を向けよう!
▼ヤングのコーナー
今週の気になる記事「男性の妊娠させる力に影響を及ぼすもの」
▼編集後記
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8月の特集
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精子の質にこそ目を向けよう!
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7月29日の日曜日の読売新聞で男性不妊専門医の診療実績が掲載されまし
た。全国の男性不妊専門医の2011年の手術件数や患者数の一覧です。
手術は、精索静脈瘤と顕微鏡下精巣内精子採取術、精路再建術の件数を、そ
して、診療内容としては、勃起不全や射精障害、低ゴナドトロピン性性腺機
能低下症の患者数を、男性不妊専門医の診療実績として紹介されています。
おそらく、男性不妊を専門とする医療機関やドクターの診療実績がこのよう
な形で公開されるのは初めてのことではないでしょうか。そういう意味では
画期的な記事です。
━ 整っていない男性不妊の診療や治療環境
紹介されている医療機関は全国で31カ所、専門医は36名です。現在、体
外受精などの高度な不妊治療、すなわち、女性不妊の医療機関として登録さ
れているのは600カ所以上ですので、男性不妊の診療や治療が受けられる
医療機関や専門医が、いかに少ないか、改めて、わかります。
また、特定の医師に実績が集中しており、その実績のある男性不妊専門の医
療機関は、ほとんど、関東と大阪、兵庫に集中していることが一目瞭然です。
要するに、不妊の原因は、男性側、女性側、半々であると言われているにも
かかわらず、男性に対する診療や治療環境は、全く、整っていないわけです。
男性が自らの治療に消極的なので(需要が少ないので)、専門医が少ないの
か、専門医が少ないから、男性が治療を受けられないのかはわかりませんが、
この状況は、不妊治療を受けて妊娠を目指しているカップル、特に、女性に
は明らかに不利です。
なぜなら、男性不妊への診療や治療が十分になされないと、女性側により負
担の大きな治療が必要となり、治療回数も増え、治療期間も長くなるからで
す。
━ 患者側が自らの治療環境を整えるべき
世間の環境が整っていないのであれば、当然、患者側が自らの治療環境を整
えるべきです。
自分たちで必要な情報を集め、自分たちにはどんな選択肢があるのか、そし
て、ぞれぞれの選択肢について勉強し、自分たちにふさわしい医療機関やド
クターを探し、選ぶ必要があるというわけです。
そういう観点で言えば、今回の読売新聞の男性不妊専門医の診療実績一覧は
男性不妊患者にとってはとてもありがたい情報になるのではないでしょうか。
━ 精子の質にこそ目をむけたい
さて、女性不妊と男性不妊の診療や治療環境に大きな格差があるように、情
報や認識においても大きな偏りがあるようです。
たとえば、精子の質については、卵子の質ほどには意識されていません。
◎精子の質とは?
不妊の原因が男女いずれにあるのかにかかわりなく、受精卵が健全に成育す
るためには、卵子の質だけでなく、精子の質も一定の役割を担っていること
が、最近の研究で明らかになってきています。
精子の役割は、父親の遺伝情報を母親の卵子に運ぶこと。卵子に一番乗りし
て、その頭部に格納したDNAを卵子に送り込むのですが、そのDNAが損
傷を受けている程度が大きければ、受精できなくなり、もしも、受精出来て
も正常に分割、成長出来なくなります。
また、DNAの損傷は、流産のリスクや子の先天性疾患のリスクにも深く関
係していると言われています。
このようにDNA損傷の度合いが精子の質を決定し、DNAの損傷度合いが
大きくなれば、当然、妊娠しにくくなり、流産しやすくなってしまうわけで
す。
◎酸化ストレスが精子DNA損傷の主因
精子DNA損傷の主な原因は「酸化ストレス」であると考えられています。
つまり、体内の活性酸素の量が過剰になることによるものです。
そもそも、精子は活性酸素のダメージに脆い宿命にあります。精子の細胞膜
は、酸化されやすい不飽和脂肪酸で出来ていたり、精子を活性酸素から守る
抗酸化酵素が十分に備わっていないからです。
精子は精巣内の精細管でつくられます。精細管内には、精子のもとになる細
胞があり、ホルモンの働きかけによって約74日かけて精子がつくられます。
その後、精巣から精巣上体へ、さらに成熟しながら、約14日間かけて移動
し、精巣上体尾部で射精まで待機します。
このプロセスの最終段階、すなわち、精巣から精巣上体へ移動して、射精ま
で待機している間が最も酸化ストレスを受けやすくなる考えられています。
◎精子の質の低下は逆転可能
卵子の質は年齢による「老化」です。ところが、精子は卵子と違って、毎日、
つくられています。
もしも、強い酸化ストレスに曝されて、精子DNAの損傷率が高まったとし
ても、一時的なわけです。
約3ヶ月かけて、活性酸素の過剰な発生を抑制したり、抗酸化作用を高める
ことで、体内の酸化ストレスを低減させることができれば、精子の質を高め
ることは可能なのです。
つまり、「妊娠のために自分で取り組めること」の効果は、もしかしたら、
男性のほうが大きいと言えるかもしれないのです。
◎精液検査の結果にかかわらず
精子の質の低下、すなわち、精子DNA損傷は、精液検査ではわかりません。
精液検査では、精子の数や運動性能、形態はわかりますが、その質を測るこ
とは出来ません。
もちろん、精子DNAの損傷率が高くなると、精子の数が少なくなり、運動
率も低下し、奇形率も悪くなる傾向にありますので、精液検査の結果は精子
の質をあらわす目安にはなり得ます。
ところが、精液検査の結果が基準をクリアしていても、精子DNAの損傷率
が高いケースもあり得ます。
人工授精や体外受精の治療成績が、必ずしも、その時々の精液所見にリンク
しないのはそのためかもしれません。
精液所見にかかわらず、お子さんを望まれる男性は、精子を酸化ストレスか
ら守り、精子の質を高める努力をすることはとても大切なことです。
酸化ストレスは、活性酸素の発生量と抗酸化力のバランスが崩れることで高
くなります。
そのため、活性酸素の発生量が過剰になるようにライフスタイルを見直し、
抗酸化物質の摂取を増やすような食生活を心がけ、抗酸化サプリメントを服
用することです。
━ 精子を酸化ストレスから守るために
不妊検査を受ける際には、男性と女性が同時に受けることは当たり前のこと
として、早く妊娠するため、もしも、不妊治療を受けていれば、女性への負
担を軽くするためにも、男性は精子の質を意識して、精子を酸化ストレスか
ら守ることが大切です。
体内の酸化ストレスを低減するには、日々の生活を見直すことが最も効果的
です。
◎活性酸素の過剰発生を予防する
禁煙すること、大量の飲酒を控えること、規則正しい生活習慣(質のよい睡
眠)、過剰な運動を控える(最近、ブームの自転車も長時間乗るとよくあり
ません)、ストレスマネージメント等。
食品添加物は活性酸素を増やします。加工食品の食べ過ぎは禁物です。
また、頻繁に射精することも大切です。古い精子はDNAの損傷率が高くな
るからです。毎日射精すると精子DNAの損傷率が最も低くなります。
◎抗酸化力を高める
抗酸化物質が豊富な新鮮な野菜や果物をたくさん食べること。抗酸化サプリ
メントを摂取することも効果的です。
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記事ついての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
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ヤングのコーナー ~今週の気になる記事
「男性の妊娠させる力に影響を及ぼすもの」
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こんにちは、ヤングです。
全面リニューアルした「妊カラ」ウェブサイトご覧になっていただけました
か?サイト内検索機能が追加され、皆さんの欲しい情報にアクセスしやすく
なったかと思いますが、いかがでしょうか?
皆さんの忌憚のないご意見・ご感想を聞かせていただけると嬉しいです。
さて、今週の気になる記事、8月の特集の通り、男性の妊娠させる力につい
てです。
自分もそうですが、今まで不妊と言われている原因は女性側にある場合がほ
とんどで、男性側にある場合は少ないと思っていました。
しかし、最近では男性側に原因があるケースが半分以上に上り、実際男性の
10人に1人は、精子に問題を抱えているといわれているそうです。
その要因は様々かと思いますが、「妊カラ」サイト内で普段の食生活や生活
習慣が精子の状態や体外受精の成績に関係する内容の記事が多くありました
ので、今号では、食生活と生活習慣にフォーカスしていくつか記事をピック
アップしてみました。
私自身も自分だけで「妊娠しやすいカラダ」を目指し、食生活や生活習慣に
気をつけていましたが、ご夫婦一緒に食生活や生活習慣を見直すことも改め
て大切ではないかと実感しています。
■今週の気になる記事をPickUp!
・男性パートナーの食生活や生活習慣と顕微授精治療成績の関係
http://www.akanbou.com/news/news.2011112801.html
・脂肪の摂取と精液の質との関係
http://www.akanbou.com/news/news.2012031501.html
・ビタミンDと精子の運動能力や形態との関係
http://www.akanbou.com/news/news.2011032401.html
・オメガ3脂肪酸と男性の精子の質との関係
http://www.akanbou.com/news/news.2010041401.html
・喫煙は精子発生の際の染色体の正常な形成を阻害する
http://www.akanbou.com/news/news.2010090901.html
・男性の体重が体外受精や顕微授精の妊娠率に及ぼす影響
http://www.akanbou.com/news/news.2010080501.html
・肉や乳製品の食べ過ぎは精子の質の低下を招くおそれ
http://www.akanbou.com/news/news.2009041901.html
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さい。また、皆さんの声もお聞かせいただければ嬉しいです。
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編 集 後 記
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男性にも、女性にも言えることなのですが、精子や卵子の健康、すなわち、
自分自身の健康に他ならないのですね。
「妊娠しやすいカラダづくり」にしても、「妊娠させやすいカラダづくり」
にしても、これらを実践すれば、必ず、赤ちゃんがやってくるというわけ
ではありません。
あくまで、健全に妊娠し、出産するための体内の環境づくりであって、直接
的に、妊娠や出産のプロセスをコントロールするものではないからです。
ただ、男性も、女性も、自らのカラダやココロのパフォーマンスは、必ず、
高まります。
そのことは、長い目でみると、新しい家族のためにつながることになるのだ
と思います。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.477
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://www.akanbou.com
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◎配信部数:5,202部(8月5日現在)
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