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VOL.481 避けがたい心の苦痛に対して私たちに何ができるのだろう

2012年09月02日

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 妊娠しやすいカラダづくり 第481号  2012年9月2日発行

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 お子さんを望まれるカップルを応援します。

 なかなかお子さんが授からないことに悩むカップルが、悩みを克服する
 ために、"二人で話し合い、考えを整理"して、"自分たちにふさわし
 い答えを出す"上でのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な
 視点で、毎週末、配信しています。


━[今週のテーマ]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼編集長コラム
避けがたい心の苦痛に対して私たちに何ができるのだろう

▼ヤングのコーナー
今号をもってヤングのコーナーを終了させていただきます

▼編集後記


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 編 集 長 コ ラ ム
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 避けがたい心の苦痛に対して私たちに何ができるのだろう
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なかなか授からない女性の心の苦痛について、アメリカの研究チームが、大
変興味深い研究結果を報告しています(*1)。

25歳から45歳のランダムに選択した4787人の女性の中で、不妊症と
診断された266名の女性を対象に、不妊治療を受けたか受けなかったか、
子どもを授かったか授からなかったかで8つのグループに分けて、調査開始
時と3年後の心の苦痛のレベルを測定しています。

それによると、心の苦痛レベルが最も高かったのは以下の4つのグループで
した。

・調査開始時に治療を受けていたが子どもを授かっていないグループ。
・調査開始時も3年後も治療を受けていて子どもを授かったグループ。
・調査開始時に治療を受けていて子どもを授かったグループ。
・調査開始時も3年後も治療を受けていて子どもを授かっていないグループ。

そして、その次に苦痛レベルが高かったのは次の2つのグループでした。

・調査開始時は治療を受けていなかったが3年後は治療を受けていて子ども
 を授かっていないグループ。
・調査開始時は治療を受けていなかったが3年後は治療を受けていて子ども
 を授かったグループ。

最後に、苦痛レベルが最も低かったのは次の2つのグループでした。

・不妊治療を受けていなくて子どもを授かっていないグループ。
・不妊治療を受けていなくて子どもを授かったグループ。

いかがですか?

心の苦痛は、"子どもを授かったか授からなかったか"ではなく、"不妊治
療を受けたか受けなかったか"なのです。

そして、不妊治療を受けたグループでは、その期間が長いほど心の苦痛が大
きくなっています。

驚くべき内容です。

要するに、心の苦痛の根本原因は、子どもを授からないこと、すなわち、不
妊そのものよりも、不妊治療経験だというのです。

もう一つ、研究報告を紹介します。

それは、体外受精や顕微授精を受けている40組のカップルを対象に、それ
ぞれの治療段階、すなわち、hmg注射、hcg注射、採卵、受精確認、胚移植、
胚移植8日目、妊娠判定時のカップルの心の苦痛レベルを測定したイギリス
とスウェーデンの研究チームの報告です(*2)。

それによると、女性も、男性も、心の苦痛レベルは、胚移植後までは、ほと
んど、フラットですが、妊娠判定時にだけ飛びぬけて高くなっています。

このことは、体外受精や顕微授精の治療周期において、心の苦痛の最も大き
な源は、治療結果を知らされることだということを物語っています。

つまり、心の苦痛の最大の原因は、"治療が報われないこと"だというわけ
です。

さて、なかなか授からないこと、そして、不妊治療を受ける辛さや苦しさは、
そのことを経験している当人でないと絶対にわからないものでしょう。

たとえ、同じ悩みを抱える人でも、その背景はぞれぞれに異なるわけで、理
解し合うことは、決して、簡単なことではないのかもしれません。

だからこそ、現在進行形で治療を受けておられるカップルにとっても、これ
から治療をはじめようとされているカップルにとっても、この2つの研究報
告の内容を知っておいて欲しいと思うのです。

誤解しないでもらいたいのは、だからと言って、不妊治療を受けずに妊娠を
目指したほうがいいと言いたいわけではありません。

そうではなくて、予めこのことを知っておくことで、自分を客観視したり、
備えたりすることが出来るのではないかと思うのです。

そして、そのことが、苦痛や悲しさ、辛さ、ストレスの軽減になるのではな
いかということ。

何を言いたいのかと言うと、もしも、心の苦痛の最大の原因が子どもを授か
らないこと、そのものであるならば、これはもう、私たちにはどうすること
もできないということになるのですが、そうではなくて、そのことよりも、
不妊治療経験だということは、私たちの取り組み次第ではどうにかなるとい
うことです。

無力感ほど辛いものはありませんが、どうにかなるとなれば、少しは前を向
けるじゃないかと、そう言いたいのです。

それでは、不妊治療に臨むにあたって、避けがたい心の苦痛に対して私たち
に何ができるのでしょうか。

それぞれのカップルにとって、ぞれぞれのやり方があると思いますが、一つ、
オキシトシンという脳内物質があります。

脳内物質と言われていますが、ホルモンのようでもあり、その働きは多彩で
す。

その中で、幸福な家庭を築くためのサポートをする働きがある、私たちはそ
のように理解しています。

これまでの研究で確かめられている働きの中で、オキシトシンは「男女の愛
を育み」、「性交時に精子と卵子を出会いやすくし」、「出産時に子宮を収
縮させ胎児を母体から出させ」、「授乳時に母性脳を形成する」というもの
があります。

いかがですか?

まさに、「幸福な家庭を築くサポート」ですよね。

この脳内物質が、女性にも、男性にも、活発に分泌されれば、お互いの愛情
が深まり、セックスの回数が増え、その内容が濃くなり、そして、妊娠しや
すくなり、安産や家族の絆を強くするのです。

そして、オキシトシンは「ストレスに強いメンタリティ」を育む働きもあり
ます。

一方、この幸福な家庭を築くサポートになるオキシトシンは"スキンシップ"
で分泌が活発になることもわかっています。

つまり、お互いの肌に触れあうということです。

ところが、東京女性医科大学産婦人科と慶應義塾大学の産婦人科の共同研究
(*3)によると、不妊外来に通院を始めると、男女間のコミュニケーショ
ン不足や性交回数の低下に陥ってしまいやすくなると報告しています。

それも、カップルの年齢が高くなるほど、その傾向が強くなるとのこと。

このことは、高齢になるほど、不妊治療期間が長くなり、そのことが心の苦
痛を大きくする可能性が高くなるにも関わらず、それに対して全くの無防備
であることを物語っています。

そんなカップルほど、お互いに頻繁に触れ合い、オキシトシンを活発に分泌
させ、絆を深め、ストレスに強いメンタリティを育みたいものです。

そのことは、きっと、幸福な家庭を育むことにつながる、そう信じます。


---[文献]---------------------------------------------------------

*1)Greil,et al.
Infertility treatment and fertility-specific distress: A longitudinal
analysis of a population-based sample of U.S. women
Social Science & Medicine. 2011Jul;73(1):87-94

*2)Bovin,et al.
Psychological reactions during in-vitro fertilization: similar
response pattern in husbands and wives
Hum Reprod.1998;13(11):3262-3267

*3)清水聖子他
不妊外来通院者における加齢及び性別によるセクシャリティの評価
2011年抗加齢医学会口頭発表P038

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 ヤングのコーナー終了のご挨拶
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こんにちは、ヤングです。

私、無事に産休に入ることになりましたので、今号をもちまして「ヤングの
コーナー」を終了させていただきます。

私も皆さんと同じように、このメールマガジンの一読者でありました。そし
て、おこがましいかもしれませんが、同じ願いを持つ皆様の少しでもお役に
立つことができればと思い「ヤングのコーナー」をはじめさせていただき、
メールマガジンやヤング宛のメールを通じて皆さんとコミュニケーションが
とれたことは、私にとっても貴重な経験となりました。

短い間でしたが、皆さんからメールをいただく度に嬉しく思い、自分なりに
思いを込めてお返事も書かせていただきました。

また、皆さんからの温かいメッセージに私が励ます立場であるにも関わらず、
逆に励まされ、パワーをいただきました。本当にありがとうございました。

最近、高齢の方の妊娠・出産が増えているようです。私もその一人です。

年齢が高くなるにつれ、生殖機能が老化をたどるという事実は覆せませんが、
日々の生活習慣や食事、適度な運動という当たり前の事を心掛けることで、
いつ妊娠しても良いように体内環境を整えておくことの大切さを「妊娠しや
すいカラダづくり」のウェブサイトと、このメールマガジンを通じて痛感さ
せていただいています。

これから、しばらくの間休むことになりますが、離れていても皆さんの願い
が1日でも早く叶うように陰ながら応援させていただきます。

今まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

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 編 集 後 記
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8月30日、31日の2日間、大阪で開催された日本受精着床学会にてブー
ス出展し、当社のサプリメントを展示しました。生殖医療を専門とする研究
者や臨床ドクターのための学会で、これまでも多くの医療機関で当社のサプ
リメントを取り扱っていただいてきましたが、この機会に多くのドクターの
先生方に評価していただくことが出来ました。

身が引き締まる思いでいっぱいです。

さて、学会では、卵子の老化とミトコンドリアの関係についての研究発表が
多数なされていました。

来週はそのことについて特集したいと思います。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.481
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
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