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妊娠しやすいカラダづくり 第486号 2012年10月7日発行
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お子さんを望まれるカップルを応援します。
なかなかお子さんが授からないことに悩むカップルが、悩みを克服する
ために、"二人で話し合い、考えを整理"して、"自分たちにふさわし
い答えを出す"上でのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な
視点で、毎週末、配信しています。
━[今週のテーマ]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
"甘い言葉"に惑わされないために
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トクホのコーラが爆発的にヒットしているそうです。
トクホというのは、特定保健用食品のことで、消費者庁によって、「お腹の
調子を整えます」とか、「コレステロールの吸収を抑える」などのような表
示が許されている食品のことです。もちろん、そのためには、効果や安全性
について、それなりの科学的な根拠を示し、国の審査と許可を受ける必要が
あります。
例のコーラに許可されているのは「脂肪の吸収を抑える」という表示です。
そもそも、コーラには、ジャンクフードとセットで"ヤバイ飲み物"という
イメージがあったので、トクホという"お墨付き"で、そんなタガがはずれ
たために、売れまくっているのかもしれません。
また、「あしたのジョー」を使ったCMが秀逸で、脂っこい食事やジャンク
フードをたらふく食べても、このコーラを飲みさえすれば体重なんか気にし
なくてもいいのか!、そんな感じで飛びついているようにも思います。
ただ、巷で出回っている怪しげなダイエットサプリメントの広告のように、
「食べてもチャラ!」なんて、そんな都合のいいことがあるのでしょうか?
このコーラのサイトやラベルの原材料名をチェックしてみると、表示が許可
された「食事から摂取した脂肪の吸収を抑えて、排出を増加させる」のは、
コーラに添加された難消化性デキストリンの働きによるもので、コーラその
ものが、決して、健康飲料になったわけではないことがわかります。
つまり、単に、脂肪の分解を遅らせる働きのある「難消化性デキストリン」
という食物繊維を、コーラに添加しているだけなのです。
サイトでは、「効果実証結果」として、82人を対象に、トクホのコーラを
飲んだ場合と比較対照飲料を飲んだ場合の食後の血中中性脂肪の上昇のグラ
フが紹介されています。
それをみると、確かに、トクホのコーラを飲んだ場合は血中の中性脂肪の上
昇が緩やかになっています。
ただし、食物繊維のおかげで、血中の中性脂肪濃度の上昇がゆっくりになっ
てはいますが、最終的に吸収された中性脂肪の量については不明です。また、
ゆっくりになっていると言っても、たかだか、10%弱です。
要するに、このコーラを飲むことで、食後の中性脂肪の血中濃度の上昇がほ
んの少し緩やかになるだけで、食べた脂肪がなかったことになったりしませ
んし、体重を気にしなくてよくなるわけでもないわけです。
また、このコーラのラベルに書かれている「脂肪の多い食事を摂りがちな方、
食後の中性脂肪が気になる方の食生活の改善に役立つ」なんて、到底言えま
せん。
手っ取り早く、楽に、事がなせる"飛び道具"は、とっても魅力的ですが、
食生活を改善するには、このコーラを飲むよりも、やっぱり、食事の内容を
見直し、運動するほうが、効果的、かつ、健康的です。
間違ったメッセージを発しているという意味で、このCMは、誇大広告とい
うよりも、もはや、消費者を欺いているようにしか思えません。
もちろん、100円ちょっとの炭酸飲料のことでそんなに目くじらを立てな
くても、ある種の"お遊び"的な感覚で楽しんでしまえばいいじゃないかと
考える向きもおられるでしょう。
ところが、このコーラには、砂糖の代わりに、アスパルテームなどの人工甘
味料が添加されています。
カロリーをゼロにしたダイエット飲料に使われている人工甘味料ですが、最
近、アメリカではこれが肥満の原因になると話題になっているというのです。
テキサス大学の6814人の成人を7年間追跡した研究で、毎日ダイエット
ソーダを飲んだグループの36%にメタボリック症候群のリスクが、67%
に2型糖尿病のリスクがあることを報告しています。
ハーバード大学リサーチフェローで、医師の大西睦子先生は人工甘味料が肥
満の原因になるのは人間の行動的、心理的な反応と生理的な反応の2つの理
由あるとしています。
行動的、心理的な反応というのは、人工甘味料はカロリーがないから、その
分安心して飲んでもいいと思うようになるということ。また、人工甘味料は、
天然の甘味料より数百倍も甘味をもっているため、人工甘味料を摂り続ける
と、中毒になり、さらに甘い食べ物を食べたくなるとのこと。
一方、生理的な反応は、人工甘味料でも摂った後はインスリン分泌が上昇す
ることがわかっています。ところが、血糖の上昇がないわけですから、一時
的に低血糖になり、すぐに食欲が増進し、人工甘味料を摂るほど、空腹感が
増すと言います。
さらに、人工甘味料を摂り続けると、身体はだまされまいとするメカニズム
が働いて、インスリンの分泌が悪くなり、しまいには本物の糖を摂取しても、
インスリンが分泌されなくなってしまうと言うのです。
もしも、トクホのコーラのラベルに表示されているように、「食後に1日1
本を目安にお飲みください」という通りに、毎日、トクホのコーラを飲み続
けると、食後の血中の中性脂肪の上昇がちょびっと、遅くなるかもしれませ
んが、期待に反して、太りやすくなったり、糖尿病になるやすくなるかもし
れないのです。
インスリンの分泌が悪くなったり、効き目が悪くなったりすると、当然、ホ
ルモンのバランスが悪くなり、妊娠しづらくなってしまう可能性が高くなっ
てしまいます。
さて、ここまで読まれた読者の方の中には、国はなんでそんなものをトクホ
として認めるのか、疑問に感じている方がいらっしゃるかもしれません。
ただ、難消化性デキストリンそのものは、安全な食物繊維であり、今やトク
ホの3分の1に関与成分として使われていますし、人工甘味料も食品に甘味
をつける添加物として認められています。
要は、個人として、それらの使い方、食べ方、そして、選択の問題でしょう。
手っ取り早く、楽に事がなせる"飛び道具"として、過度に使えば、毒にな
ることがあるわけです。
そういう意味では、私たちに都合よく、食べ物を加工するのは、結局、都合
よくない結果を招いてしまう面があるのかもしれません。
たとえば、妊娠しやすいカラダづくりというテーマでは、低脂肪や無脂肪の
乳製品を多くとる女性は、無調整の乳製品を多くとる女性に比べて、排卵障
害による不妊になるリスクが高くなることがアメリカのハーバード公衆衛生
大学院による疫学調査の結果で明らかになっています。
18555人の女性の看護師を対象とした疫学調査で、食生活と妊娠するま
でに要した期間、不妊治療の有無を分析したところ、乳製品のトータルの摂
取量は妊娠する力への影響はみられなかったのですが、乳製品の種類につい
ては、明確な違いが出ています。
それは、低脂肪や無脂肪の乳製品を多く食べる女性は、そうでない女性に比
べて、排卵障害による不妊のリスクが高く、反対に、無調整の全乳の乳製品
を多く食べる女性は、そうでない女性に比べて、排卵障害による不妊のリス
クが低いというものです。
脂肪について調整を加えていない、牛乳やアイスクリーム、ヨーグルトをた
くさん食べていた女性は、排卵障害による不妊になりにくいことが確認され
たというのです(※)。
このことについて、研究チームは、低脂肪や無脂肪の乳製品の加工製造過程
で発生する、生殖ホルモンの構成の変化を指摘しています。
乳製品の原料である牛乳には、水分や脂肪、たんぱく質、そして、炭水化物
(乳糖)、さらに、250以上の物質が含まれていることが分かっています。
その中には、ビタミンやミネラル、必須アミノ酸、そして、さまざまなホル
モンが含まれています。
それらは、牛乳の水分中に溶けて存在するものもあれば、脂肪部分に付着し
ているものもあります。
牛乳に含まれる物質の中で、妊孕性に影響を及ぼす可能性の高いのはホルモ
ンです。
そして、現在、私たちが飲んでいる牛乳には、50年ほど前に比べると、比
べ物にならないくらいの量のホルモンが含まれていると言われています。
牛乳やチーズ、その他の乳製品には、プロクラチンや性腺刺激ホルモン放出
ホルモン、エストロゲン、そして、プロゲステロンなどの女性ホルモン、さ
らには、一連の男性ホルモンやその前駆体が含まれています。
そもそも乳牛は雌牛ですから、もちろん、各種男性ホルモンも含まれますが、
やはり、含有量は、女性ホルモンのほうが主です。
脂肪分を調整して、低脂肪や無脂肪牛乳に加工する際に、脂肪分を取り除く
わけですが、その時に、脂肪と親和性の高い、主に、エストロゲンやプロゲ
ステロンが、一緒にすくい取られてしまうという現象が起こります。
その結果、牛乳の水分中に存在する、いくつかの男性ホルモン、インスリン
様成長因子、そして、プロラクチンなどが残されることになるのです。
また、インスリン様成長因子は、テストステロンと結合する、性ホルモン結
合グロブリンの産生を抑制することで、男性ホルモン優位の状況を、より、
促進することも考えられ、このような含有ホルモンの構成の変化が、排卵障
害のリスクを高くするのではないかとのこと。
つまりは、男性ホルモン優位になることで、卵胞の成熟を阻害する可能性が
あるということです。
いかがでしょうか?
私たち、人間の都合よく、すなわち、手っ取り早く、楽に、簡単に、事をな
そうとして、食品や食材からなにかを排除したり、なにかを添加したりする
ことは、自然の恵みを壊しているのかもしれません。
現代社会はITが当たり前になり、ひとつひとつ段階を踏むよりも、ショー
トカットするのが効率的で、価値のあるやり方だとされています。
そして、健康な心や身体をつくるのにも、魔法の食べ物や飲み物を期待し、
求めてしまいます。そして、その時々でいろいろなものが流行しますが、未
だかつて、そんなものに出会ったことがありません。
言えることは、体重を減らすには、摂取カロリーよりも、消費カロリーを増
やすことです。
食べたものの吸収を抑制したり、ゼロカロリーのものを選んで運動しないよ
り、天然の甘味とカロリーを、感謝しつつ、美味しくいただき、運動したほ
うがよいようです。
甘い言葉やイメージに惑わされないように、しっかり、選択し、自己防衛し
たいものですね。
※文献
A prospective study of dairy foods intake and anovulatoryinfertility.
Human Reprod. 2007;22:1340-47
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━[編集後記]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
昨日から日本臨床栄養学会総会が開催されています。
今日、以前、このメルマガでもお話しした、受精前後の母親の体内の栄養状
態がお子さんが出生し、成人してからの生活習慣病の発症リスクに影響を及
ぼすという、生活習慣病胎児期発症説についての講演を聞いてまいりました。
この分野の日本の第一人者でいらっしゃる、早稲田大学総合研究機能の福岡
教授による講演です。
なぜ、葉酸を摂らなければならないのか、そして、葉酸は少な過ぎても、多
過ぎても、いけないのかについても、お話しがあり、とても勉強になりまし
た。
是非とも、皆さんにお知らせしなければと思い、講演終了後もいろいろと教
えていただき、改めて、先生にインタビューさせていただくことになりまし
た。
おって、記事にし、皆さんと共有したいと思います。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.486
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://p.tl/dkqN
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・まぐまぐ: 4,813部
・合計部数: 5,224部(10月7日現在)
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