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VOL.488 栄養と生殖活動 ~第68回アメリカ生殖医学会ハイライト

2012年10月21日

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 妊娠しやすいカラダづくり 第488号  2012年10月21日発行

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 お子さんを望まれるカップルを応援します。

 なかなかお子さんが授からないことに悩むカップルが、悩みを克服する
 ために、"二人で話し合い、考えを整理"して、"自分たちにふさわし
 い答えを出す"上でのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な
 視点で、毎週末、配信しています。


━[今週の更新情報]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

サイトの更新情報です。
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2012年10月15日 不妊講演会のお知らせ
知ることで変わる不妊治療
http://p.tl/saqz
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2012年10月18日 最新ニュース
高度生殖補助医療と子どもの出生体重の関係
http://p.tl/d9jh
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記事についてのご質問は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


━[最新ニュース解説]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 栄養と生殖活動 ~ 第68回アメリカ生殖医学会ハイライト

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10月20日から24日までカリフォルニアのサンディエゴでアメリカ生殖医学会
が開催されています。

世界の生殖医療の研究者や臨床ドクターが集い、日頃の研究成果が発表され
ますが、講演内容は事前に公開されています。

そこで、今週はその中から「栄養」をテーマとした研究発表のダイジェスト
をご紹介します。

体外受精や顕微授精などの高度生殖補助医療が進歩、普及し、当たり前な技
術になってくると、それらはとても有効な技術であることと同時に、その限
界もわかってきました。

高度医療と言っても、決して、万能ではない、すなわち、体外受精や顕微授
精を繰り返しても妊娠に至らないこともあるということです。

そして、生殖補助医療が及ばない領域の一つが「栄養」で、栄養と生殖機能
の関係についての研究報告が、最近、ヨーロッパやアメリカで盛んに行われ
るようになっています。

栄養と生殖機能には密接な関係があることは、当たり前と言えば、当たり前
なことです。私たち、人間は、食べて、栄養を体内に取り入れ、身体のパー
ツをつくり、活動に必要なエネルギーをつくっているわけで、栄養の量や質
次第で、身体活動のパフォーマンスが高くもなり、低くもなるわけで、妊娠、
出産という生殖活動も例外ではないわけです。

私たちが生きていくうえで、必須な栄養素、すなわち、たんぱく質や糖質、
脂質、そして、ビタミンやミネラルの5大栄養素の量と質、バランスが妊娠
や出産する力を左右するわけです。

私たちが追いかけ続けているテーマなので、つい力が入ってしまい、前置き
が長くなってしまいました。


■糖質を減らすことで体外受精の胚盤法到達率や妊娠率が改善される

アメリカのデラウェア州のChristiana Care Health System 病院の生殖医療
部門のドクターらは、若くて健康状態に問題なくても体外受精の際に良好な
胚ができない患者を対象に、食生活を改善するように指導し、治療成績の改
善を試みています。

これまでの体外受精で良好な胚盤胞が育ちにくかった12名の35歳未満で、
健康な女性患者を対象に、食物摂取頻度調査を受けてもらい、たんぱく質と
糖質、脂質の摂取バランスを調べ、2か月間、糖質を減らし、たんぱく質を
増やすように食事指導を受け、体外受精に臨みました。

そして、成熟卵の数や胚盤胞到達率を前回の治療と比較しました。

たんぱく質の摂取カロリーは平均16%増加し、3大栄養素に占める割合は、
15%から27%に増え、反対に、糖質は平均22.3%減少し、割合は48.6%から
40.1%に減りました。

その結果、胚盤胞到達率は18.9%(20/106)から45.3%(48/106)へと向上
したとのことです。

このことから、年齢の割には良好な胚が成育しない患者においては、次の治
療周期をはじめる2か月前からたんぱく質を増やし、糖質を減らすことで、
胚盤胞到達率が改善され得ると結論づけています。


■糖質の摂取が多い男性ほど精子濃度が低くなる

ハーバード公衆衛生大学院の研究者らは、ロチェスター大学で健康な男性大
学生(18~22歳)を対象に、2009~2010年にかけて、環境中の汚染物質の精
子の質への影響を評価するために実施しています。

調査で、食物摂取頻度調査で糖質の摂取量と精液の質との関係を調べました。

糖質の摂取量を4段階に分けたところ、糖質の摂取量が多くなるほど、精子
濃度が低くなることがわかりました(49、47、37、35)。

このことから糖質の摂取量と精液中の精子濃度が関連していると結論づけて
います。

◎糖質を減らす

日本でも糖質(炭水化物)制限ダイエットがちょっとしたブームですが、そ
もそも、先進国では糖質、それも精製度の高い糖質を摂り過ぎている傾向が
あるようです。

過剰な糖質、すなわち、活動のために燃焼し、消費されなかった分の糖質は、
脂肪に変換され蓄えられます。そのため糖質を制限することが脂肪として蓄
えられなくなるばかりではなく、それまで蓄えられた脂肪を分解する働きも
活発になるために有効なダイエット法になるというわけです。

一方、糖質を消費したり、蓄えたりする際に、血糖値の動きとインスリンと
いうホルモンが深く関わっていて、糖質の摂り方や摂る量によって、血糖値
の動きやインスリンの働きが影響を受け、そのことが、直接、卵子や精子の
質に関与したり、生殖ホルモンを通じて、間接的に妊娠する力に影響を及ぼ
したりするのです。

そのため、糖質の摂り方や摂る量が不適切になると、妊娠しづらくなってし
まうおそれが出てくるというわけです。

▼関連ページ

・炭水化物の食べ方を変えて妊娠する力を高める
http://p.tl/A4Nb


■葉酸を多く摂るほど受精率が高くなる

ハーバード公衆衛生大学院とマサチューセッツ総合病院の研究チームは、こ
れまで食生活と生殖能力の関係について、多くの疫学研究や臨床研究の結果
を報告しています。

今回は葉酸の摂取量と高度生殖補助医療の受精率の関係について発表してい
ます。

試験は、ハーバード公衆衛生大学院が実施している環境中の物質と生殖能力
との関連を調べることを目的に実施されている、「EART Study」という疫学
調査に参加していて、マサチューセッツ総合病院で体外受精や顕微授精を受
けている145名の女性の205治療周期を対象にしています。

疫学調査に参加している女性だからか、毎日の葉酸摂取量は多く、平均の摂
取量は1843mcg(265-5586mcg)で、その74%は葉酸のサプリメントから摂取
していたとのこと。

そして、葉酸摂取量で4段階のグループに分けて、受精率との関連を調べた
ところ、葉酸摂取量が増えるにしたがって、受精率も高くなることが確認さ
れたというのです(77%、81%、84%)。

ただし、受精以降の治療成績との関連は認められなかったと言います。

このことから葉酸の摂取量は高度生殖補助医療における受精率と有意に関連
すると結論づけています。

◎葉酸の補充について

葉酸は細胞が分裂する際にDNAが正しくコピーされるのに必須の栄養素で
あることから、葉酸が不足すると子どもの先天異常のリスクが高くなること
から、厚生労働省も妊娠前から葉酸を補充することを勧めています。

ただし、葉酸の役割を考えると、葉酸の不足は特定の先天異常のリスクを高
くするだけでなく、生殖細胞の成育全般に影響を及ぼすはずです。

その証拠に葉酸の摂取は体外受精時の卵の発育環境を向上させるとの報告が
これまでにも多くなされています。

ただし、その一方、妊娠後期になると葉酸の過剰摂取が子どものアレルギー
発症リスクを高くするとの報告もありますので、特にに妊娠後は1,000mcg以
上の葉酸を補充することは避けたほうがよいとされています。

▼関連ページ

・葉酸の摂取は体外受精時の卵の発育環境を向上させる
http://p.tl/W2cH
・葉酸は胚の生存力を高める
http://p.tl/cPRR
・葉酸の供給源となる食品例と葉酸含有量
http://p.tl/Ycji
・マルチビタミンミネラル
http://p.tl/DbgX
・葉酸
http://p.tl/gOM2


今回のアメリカ生殖医学会では、栄養に関連する発表として、上記以外にも
男性の血中ビタミンD濃度と精液の質のとの関連を調べた試験の結果が報告
されていますが、明確な関連はなかったとのこと。

今回は、たまたま、糖質や葉酸の摂取について発表されていますが、だから
と言って糖質を制限し、葉酸をたくさん摂りさえすればよいというものでは
ありません。

特定の栄養素や成分を大量に摂取したり、制限すればよいというものではな
く、人間が活動するうえで、「必須の栄養素」を「偏りなく」摂るというこ
とに尽きます。

▼関連ページ
・生活習慣を見直す「食生活」
http://p.tl/rfOr


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━[編集後記]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1年で最もさわやかな季節です。

雨がしとしと降り続くとき、かんかん照りで外に出るのもはばかれるような
とき、排気ガスと煙突からの煙で深呼吸するのもはばかれるようなとき、そ
して、草木のかおりを運んでくれるさわやかなそよ風と突き抜けるような青
い空、皆さんはどんなときにエネルギーが満ちてくるのを感じることができ
るでしょうか?

言わずもがな、ですね。

全く同じことが、母親になる女性の体内でも言えるのではないでしょうか。

新しい命が、自ら"生きようとする"力が満ちてくるのは、酸欠状態ではな
く、血液の淀んでいる状態ではなく、新鮮な酸素や栄養素がスムースに循環
している生殖器官の環境があってこそです。

妊娠しやすいカラダとは、言い換えれば、新しい命が健全に育まれる体内環
境です。

子づくりと子育ては、同時にはじまると言えるかもしれません。

そして、そんな体内環境を整えるのは、母親になる女性、そうです、あなた
にしかできないことでもある、そう思います。


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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.488
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://p.tl/PTWp
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◎発行部数
・自社配信: 433部
・まぐまぐ: 4,790部
・合計部数: 5,223部(10月21日現在)
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