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VOL.489 生活スタイルや年齢と治療成績 ~アメリカ生殖医学会ハイライト

2012年10月28日

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 妊娠しやすいカラダづくり 第489号  2012年10月28日発行

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 お子さんを望まれるカップルを応援します。

 なかなかお子さんが授からないことに悩むカップルが、悩みを克服する
 ために、"二人で話し合い、考えを整理"して、"自分たちにふさわし
 い答えを出す"上でのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な
 視点で、毎週末、配信しています。


━[最新ニュース解説]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

生活スタイルや年齢と治療成績 ~第68回アメリカ生殖医学会ハイライト

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前号ではカリフォルニアのサンディエゴで開催されたアメリカ生殖医学会の
学術集会の発表の中から栄養をテーマとした研究報告を紹介しました。

今週は、引き続き、生活スタイルや年齢と治療成績の関係についての研究報
告をご紹介します。

その前に、読者のMさんから前号の記事の感想をいただきました。

---[Mさんからのメールここから]-----------------------------------

いつも配信を楽しみにしています。

不妊に悩みだした当初は、ネットで手当り次第、検索し、情報をチェックし
ていました。ただ、いい加減だったり、単なる個人の体験談や意見、商品の
宣伝だったりすることに気づき、以降はこちらのメルマガとサイトだけを参
考にし、治療を続けてきました。

今回のような最新の研究動向を紹介していただけるととても助かります。

というのも、私たちのような高齢でタイムリミットを意識せざるを得ない者
にとっては、それこそワラをもすがるような気持ちになって、これでいいの
だろうか、もっとやっておくべきことはないのか、不安になったりします。

これって、どこまでいってもきりがないんですね。

でも、妊カラで、特別なことよりも、普段の食生活や睡眠、運動なんかの当
たり前なことが大切なんだと教えてもらい、とても気が楽になり、かえって、
治療にも前向きに取り組めるようになりました。

〈中略〉

これからも私たちの立場にたった情報を発信し続けてください。

---[Mさんからのメールここまで]-----------------------------------

Mさん、ありがとうございます。とても励みになりました。

情報はあり過ぎてもいけませんね。かえって、振り回されたりしますので、
きちんと取捨選択することが大切ですね。私たちの発信する情報についても
ご自身でご判断されることが大切だと思います。

さて、今週は生活スタイルや年齢と治療成績の関係についてです。


まずは、運動と体外受精の治療成績との関係についての発表がありました。

▼日常や胚移植後の身体活動と治療成績との関係

・普段から身体をよく動かしている女性のほうが体外受精の妊娠率が高い
・胚移植後の身体活動レベルは妊娠率に影響しない

アメリカのノースカロライナ大学の研究チームは、体外受精を受ける迄、日
常生活でどれくらい身体を動かしているのか、また、胚移植から妊娠判定迄
の間の身体活動が治療成績にどのような影響を及ぼすのか試験を実施してい
ます。

体外受精を始める100名の女性を対象に、専用の調査票を用いて、過去1
年間、どの程度、身体を動かしているのかを測定し、また、胚移植後、妊娠
判定まで専用の装置を装着して、身体活動の強度を測定しました。

測定データがとれた87名の女性の44名が妊娠しましたが、妊娠した女性
は妊娠しなかった女性に比べて、家事や運動での身体活動が高く、身体活動
スコアの平均以上の女性は平均以下の女性に比べて、妊娠率が2.93倍だった
とのこと。

一方、胚移植から妊娠判定までの身体活動レベルは妊娠率に影響しなかった
そうです。

◎インスリン感受性

研究チームは、運動はインスリン感受性を維持し、反対に、運動不足はイン
スリン抵抗性を高くし、そのことが高血糖を招き、生殖機能を損なう原因と
なると指摘しています。

インスリン感受性とは、インスリンの働きがよいということで、その結果、
血糖値が正常に維持されるようになり、反対に、インスリン抵抗性とは、
インスリンの効き目が悪くなるということで、その結果、高血糖を招き、
そのことが生殖機能を低下させるおそれがあるということになります。

インスリンの働きや血糖値は、直接的にも、間接的にも、生殖機能を低下さ
せるようです。

炭水化物を少なくして、たんぱく質を多くすると、受精卵の胚盤胞への到達
率が高くなったという研究報告がありましたが、それも高血糖に関連してい
ると考えられています。

高血糖は肥満、そして、糖尿病の原因になります。

このように考えると、妊娠しにくくなる身体の状態とは、すなわち、生活習
慣病のリスクが高くなる状態であるわけです。

そう考えると、妊娠しづらい状態は、未病の状態で、病気は発症していない
けれども、病気に向かっている途中の段階であると言えなくもありません。

ですから、妊娠しやすい生活スタイルに改めるということは、妊娠しやすく
なることは、もちろんのこと、将来の生活習慣病の予防にもなるということ
になります。


▼女性の運動習慣や就業と体外受精治療成績の関係

・女性の運動習慣の有無は治療成績に影響を及ぼさない
・女性の就業は体外受精の治療成績によい影響を及ぼす
・女性の仕事の負荷は治療成績に影響を及ぼさない

韓国のインジェ大学の研究者らは、女性の運動習慣や仕事をすることが体外
受精の成績にどのような影響を及ぼすのかを調べるために試験を実施しまし
た。

体外受精を受けている284名の女性(35.4±4.4歳)に、治療前に運動習慣
や仕事をしているか、仕事の負荷についてアンケートを行い、治療成績との
関係を調べました。

その結果、仕事をもつ女性(54.7%)は仕事をしていない女性(47.3%)よ
りも妊娠率が統計学的に有意に高かったとのこと。

ただし、仕事の負荷と治療成績は関連しませんでした。

一方、運動習慣がある女性と運動習慣のない女性の妊娠率にも違いは見られ
ませんでした。

◎女性の生活スタイル

アメリカのノースカロライナ大学の結果と合わせて考えると、特定の運動習
慣がなくても、日常生活の中で、身体を動かすようにし、身体活動を高める
ように心がければとよいということになります。

また、仕事をしながら不妊治療を受けた女性のほうが妊娠率が高かったとい
うことで、不妊治療に臨むにあたって、必ずしも仕事が障害になるわけでは
ないということでしょうか。

仕事については一概には言えないと思いますが、治療に専念するために仕事
をやめると、かえって、ストレスになる場合があるのかもしれません。


次は、年齢が不妊治療成績にどの程度の影響を及ぼすのかについての報告で
す。

▼原因不明不妊女性への人工授精の年齢別累積妊娠率

・40歳までは妊娠率の低下は小さいが40歳を超えると大きくなる

アメリカのメリーランド州のShady Grove Fertility Centerのドクターらは、
原因不明不妊症に対する卵巣刺激(クロミッド+HMG)を伴う人工授精の
6周期の累積妊娠率を年齢別に算出しました。

21歳から46歳の4017名の原因不明不妊の女性の卵巣刺激を伴う人工
授精の7602治療周期の6周期の累積妊娠率を年齢別は以下の通りでした。

35歳未満 51.4±6.25%
35-37歳  64.8±5.71%
38-40歳  46.9±12.45%
40歳以上 24.06±2.61%

40歳まではそれほど大きく下がっていませんが、40歳を超えると妊娠率
の低下が大きくなっています。


▼38-44歳の原因不明不妊女性への人工授精と体外受精の妊娠率比較

・38歳以上の女性では体外受精は人工授精の2.5倍の妊娠率がある

アメリカのジョージタウン大学病院のドクターらは、38歳から44歳の原
因不明不妊の女性への治療法別妊娠率を算出しました。

原因不明、もしくは、卵巣機能低下による不妊症(その他の不妊原因や男性
不妊は除外)と診断された38~44歳の女性の人工授精2717治療周期
と体外受精3563治療周期の妊娠率を比較しました。

   38 39 40 41 42 43 44
体外受精 27.8% 25.7% 19.2% 14.3% 10.4% 7.3% 3.2%
人工授精 9.7% 7.8% 10.2% 7.7% 5.7% 3.5% 3.0%

年齢が高くなるほど、体外受精と人工授精の妊娠率の差は小さくなる傾向が
あります。

全体では体外受精は人工授精の2.5倍の妊娠率があります。

◎年齢と治療方法

原因不明不妊や年齢による卵巣機能低下の不妊症の場合、不妊治療に臨むに
あたって、体外受精を受けるべきかどうか、人工授精から体外受精への移行
のタイミングなどは誰しも悩むところだと思います。

女性の年齢が高くなるにしたがって、不妊治療の妊娠率が低くなっていく傾
向にあり、それは体外受精でも例外ではありません。

妊娠率では体外受精が最も高くなりますので、治療法にこだわらず早く妊娠
を目指したいという考えでは早期に体外受精をスタートするのが得策です。

ただし、あくまでも自然に近い方法にこだわりたいとの考えであれば、人工
授精を続けるという選択肢も十分にあると言えます。

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━[編集後記]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ここ数年、心理学でも、経済学でも、幸福に関する研究が盛んに行われてい
て、それによって、いろいろなことがわかってきています。

そもそも、幸福度なんて客観的に測定できませんでしたから、学問の対象に
はなりにくかったのですが、今では幸福を科学的な手法で評価する研究もい
ろいろと開発され、ほぼ客観的な測定が可能になっているようです。

で、わかったことの1つに、幸福感はよく睡眠をとることで大きくなるとい
うことがあります。

いいことがあろうとなかろうと、はたまた、辛いことがあろうとなかろうと、
とにかく、しっかりと寝ることで、幸福感が増すというのです。

人間には、寝ると幸せを感じるメカニズムが備わっているようです。

また、最近、5日間、夜中1時~5時の4時間睡眠をとったグループと、10時か
ら翌7時の9時間睡眠をとったグループの食生活を比べた実験結果が発表され
ています。

それによると、夜中の1時から5時に睡眠をとったグループは、10時から7
時まで睡眠をとったグループの比べて、甘いものや辛いものを食べたくなる
傾向がみられ、脂肪や炭水化物の摂取量が多くなったとのこと。

睡眠の質が食欲や実際の食事量にも影響を与え、結果としてエネルギーを過
剰に摂取する傾向がみられたというのです。

人間には、寝られないとエネルギーを蓄えようとするメカニズムが備わって
いるようです。

また、私たちを眠りに誘う、メラトニンというホルモンは、ホルモンである
にもかかわらず、卵胞液中で強力な抗酸化作用発揮して、卵の成育を保護し
ているそうです。

睡眠は私たちが思っている以上に私たちを支えてくれているようです。

よい睡眠を追求することで、私たちがコントロールできないさまざまな身体
の働きがうまくいくようになるのですね。

頑張って?眠る甲斐があるということです。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.489
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://p.tl/nFrH
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◎発行部数
・自社配信: 447部
・まぐまぐ: 4,783部
・合計部数: 5,230部(10月28日現在)
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