メルマガ

VOL.493 精子DNA損傷と治療成績の関係

2012年11月25日

____________________________________________________________________

 妊娠しやすいカラダづくり No.493 2012/11/25
____________________________________________________________________
                        
今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:精子DNA損傷と治療成績の関係
・マイライフストーリー:第四回 人工授精にまつわるアレコレ
・お知らせ
・編集後記


最新ニュース解説 Nov.2012___________________________________________

精子DNA損傷と治療成績の関係 
--------------------------------------------------------------------
精子の役割は、父親のDNAを卵子まで運ぶことで、それは精子の頭部に格
納されています。そんな大切なものであるにもかかわらず、そもそも、精子
は酸化ストレスに弱いという宿命にあります。

酸化ストレスと男性不妊については「ドクターに訊く」をご覧ください。
http://www.akanbou.com/doctor/interview07/

精子が精路を通過する間に酸化ストレスを受けると、DNAが損傷を受けま
す。もしも、DNAの損傷の度合いが大きくなると、精子の質が低下してし
まいます。

そのため、お子さんを望まれる男性は体内の酸化ストレスが大きくならない
ように気をつけることが大切です。

今月の最新ニュース解説は、イギリスで、精子のDNA損傷率は体外受精や
顕微授精の治療成績にどのように影響を及ぼすのか、また、原因不明不妊の
カップルや精液検査で問題のなかった男性に、どの程度、精子DNA損傷が
みられるのかを調べた臨床研究結果*1)を紹介します。

◎精子DNA損傷率が高くなると体外受精の治療成績が悪化する

イギリスのクイーンズ大学ベルファストの研究者らは、体外受精を受けてい
る203組と顕微授精を受けている136組のカップルの男性パートナーの
精子DNA損傷率を調べ、25%未満、25%~50%、そして、50%以
上の3つのグループに分け、それぞれのグループの平均の出産率を比較しま
した。

その結果、男性パートナーの精子DNA損傷率が25%未満の体外受精の出
産率は平均33%だったのに対して、50%以上では13%と、男性の精子
DNAの損傷率が高くなると治療成績が悪くなることが分かりました。

一方、顕微授精では男性の精子DNAの損傷率と治療成績には関連性はみら
れませんでした。

◎原因不明不妊カップルの男性の約8割に精子DNA損傷

体外受精を受けている203組と顕微授精を受けている136組のカップル
のうち、精液検査に問題のなかった男性147名の内、精子DNA損傷率が
25%未満は16%、25%以上は84%でした。

また、女性にも、男性にも、検査結果に異常がみられなかった原因不明不妊
のカップルの男性70名のうち、精子DNA損傷率が25%未満だったのは
16%、25%以上は84%でした。

精液検査で問題のなかった男性や原因不明不妊のカップルの男性の8割以上
が精子DNA損傷率25%以上であることがわかりました。

◎不妊治療を受けていても

精子のDNA損傷率が高ければ、体外受精の妊娠率や出産率が低くなってし
まうようです。

もしも、体外受精を繰り返しても、なかなか、結果が出ない場合には、精子
のDNA損傷を疑うべきなのかもしれません。

◎精液検査が悪ければ

精子濃度や精子運動率が悪い場合は、すぐに体外受精や顕微授精を受ける前
に、男性不妊を専門とする泌尿器科医の診察を受けるべきです。

男性不妊の3割に精索静脈瘤があると言われています。精索静脈瘤による酸
化ストレス増大で精子のDNAが損傷を受けている可能性が大きいため、静
脈瘤の程度によっては、抗酸化療法、もしくは、精索静脈瘤の手術を受ける
ことで、DNA損傷率が低くなれば、自然妊娠や女性への負担の軽い方法で
妊娠できる可能性が高くなります。

◎原因不明不妊では

イギリスの試験では原因不明不妊カップルの男性の8割に精子DNA損傷が
ありました。

原因不明不妊では、人工授精や体外受精にステップアップすることになりま
すが、その場合でも精子DNAの損傷を疑い、抗酸化療法を試みるべきなの
かもしれません。

◎すべてのカップルの男性パートナーに

お子さんを望まれる男性は、酸化ストレスから精子DNAを守るべく、生活
習慣を見直すべきです。

精子DNAに最も大きなダメージを与えるのは喫煙ですので、禁煙すること
はもちろん、バランスのよい食生活、特に、抗酸化物質の豊富な新鮮な野菜
や果物をたくさん食べること、ストレスをうまくマネージメントすること、
抗酸化サプリメントを摂ることによって、精子を守ります。


最近、男性不妊について、マスコミでよく取り上げられるようになり、不妊
の原因は男性側にも半々の割合であるということが、少しずつ知られるよう
になっているようです。

ただし、現実は、不妊治療のために通院しているカップルの男性は精液検査
は受けても、男性不妊を専門とする泌尿器科医が診察にあたることは、滅多
にありません。

たとえ、精液検査の結果、男性不妊と診断されたとしても、です。要するに、
男性不妊外来のある一部の施設を除いて、男性不妊はスルーされているので
す。もしも、精子の数が少なかったり、運動率が低かったりして、妊娠しづ
らくなっていても、無精子症でなければ、人工授精や体外受精、顕微授精で
妊娠を目指すというわけです。

ところが、男性側に治療を施し、精液の質が改善されれば、女性側の治療は
不要になったり、より負担の軽い治療で妊娠出来る可能性が大きくなります。

さらに、たとえ、精液検査で精子の数や運動率が基準をクリアしていても、
精子DNAの損傷率が高く、精子の質が低下しているケースが多いことが今
回の報告でわかりました。

自分の精子は自分で守ることが大切ですね。

★男性が摂るべきサプリメントは?
http://www.akanbou.com/topics/topics/038.html

★文献

*1)Sperm DNA damage has a negative association with
live-birth rates after IVF
Reproductive BioMedicine Online Article in Press

--------------------------------------------------------------------
記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


マイライフストーリー________________________________________________

マイライフストーリとは、私たちとご縁のあった方々に、赤ちゃん待ち期間
をどんなふうに過ごしたのかについて語っていただく、それぞれの物語です。

はんなさんのライフストーリーの四回目です。


第四回 人工授精にまつわるアレコレ___________________________________

こんにちは、はんなです。マイライフストーリーも早4回を迎えました。

沢山の方々からメールを頂戴し、とても嬉しく思っております。同時に、ひ
とことで「不妊」と言っても状況はそれぞれ違うことに改めて気づかされま
した。

皆様全員とは言わないまでも、どなたかの気持ちに寄り添えたらと思いつつ、
今日は初めての人工授精とその後について書こうと思います。

さあ不妊治療!とふたりで決めたものの、肝心の主人の方の検査が終わって
おりません。

そこで、改めてドクターPに予約を取りました。但し今回医師に会うのは主
人です。

医院の場所と時間を伝え、直接ひとりでドクターPと話して貰いました。

茶色の紙袋と書類一式を持ち帰宅した彼。袋の中身はプラスチックの半透明
ケース。これに精液を入れ持参するか、直接病院でどうぞということでした。
彼は後者を選び、その二日後、再び病院に赴きました。

帰宅後、彼曰く「アメリカのAVは非常にムードが無く難しかった」そうです。

成程。


検査の結果は問題無く、運動量も数も十分とのことでした。逆に言えば、原
因不明の不妊とは言え、妊娠できないのは私の側に理由があると分かったの
で、結果に嬉しい反面、責任をまた少し感じました。

とにかく次のステップです。


数日後、私は再びドクターPに面会しました。人工授精の具体的なスケジュー
ルを決めるためです。

英語を必死に聞き取った結果、どうやら施術するのはこの病院ではなく、しか
もドクターP本人でもないとのこと。この国では分業が徹底しており、担当ド
クターの指示の下、専門職の技師が直接そういった業務を担当するようでした。


次の生理が始まったら、決められた日にクロミッドを飲みます。同時に葉酸な
どのサプリメントも渡されるので、それらを毎日摂取します。

ドクターPから紹介された近所のInfertility Center(不妊治療センター)に
て数日おきに採血をし、更にデジタル式の排卵チェッカーを渡され、反応が出
たら精子を入れましょうとのこと。ドクターPの指示通り、主人は再度精子を
病院で採取し、私はクロミッドとサプリメントを飲み始めました。


生理から9日目。チェッカーで反応が出たので、センターに電話をして予約を
取り、翌日病院に向いました。

そこはドクターPの病院とは違い待合室は広く、処置室がずらっと、15、6
室はあったでしょうか。広いところでした。

受付の後採血をし、一旦家に帰ります。その後自宅へ連絡が来て、その日の午
後処置をしましょうと言われ、再度病院に赴きました。

同い年位の女性技師が例のごとく大判の焼肉ナプキンを私に渡し、こちらも慣
れたもので、着替えて待ちます。

戻ってきた技師の手には主人の精子がありました。精子の入った細長い容器は
特殊な機械の中に差し込んであり、適温にしてありそして運動量・数共に申し
分ないから安心しなさいと説明を受けました。

そして彼女は、精子を挿入する注射器のような器具を用意し始めました。準備
は物々しく、私は相変わらず靴を履いたまま。

そして処置はものの数秒で終了しました。


病院にはラジオらしき音楽が流れており、技師は「この曲の次の次の曲が終わ
るまで寝てて。終わったら帰っていいわよ♪」と気軽な指示を出し、部屋を出
て行きました。

次の次?ほんとうにそれでいいのか??と思いつつ、緊張が徐々に解けていき
ました。


翌日からは、毎日期待と不安で朝目覚めました。体調の変化にも、このころか
ら敏感になっていきました。

走ったり飛んだりしないように過ごし、お酒も控えました。主人はそんな私の
急な変化を、どちらかというと不安に思っていたようです。


生理初日から数えて25日目、そろそろ何らかの結果が出る時期、ちょうどそ
のとき、高校~大学時代の同級生が近所に住んでいることが分かり、久しぶり
に夜、彼女と食事をすることになりました。


夜出ることも控えていたので、久々の外出は不安がありつつも気分良く、風邪
気味と偽ってノンアルコール飲料を飲みつつ、こちらで立派に働いている彼女
の話を肴に楽しく過ごしていましたが、その最中、下腹部に突然軽い痛みを感
じました。

痛みは何度も繰り返して起こり、食事をしながらとても心配になりました。私
は念のためトイレに中座しチェックしましたが、何事も無いようで、不審に思
いながらもその日は普通に帰宅しました。


翌日病院に電話し、出血は無く体温の変化も特に無いことを告げると、看護師
は特に問題ではないようなので、出血があったり痛みが酷くなるようであれば
再度連絡を、と言われました。

その翌日、朝、体温が0.5度下がっていました。

本当にがっかりです。涙がこぼれました。

痛みは相変わらずで、その夜出血がありました。病院で念のため調べてもらう
と、やはり次の生理が始まっていました。


こうして初めての人工授精は失敗に終わりました。

--------------------------------------------------------------------
はんなさんへのメールをお寄せください。
info@akanbou.com


運営サイト__________________________________________________________

私たちはお子さんを望まれるカップルを応援します。

▼不妊に悩む夫婦の自己決定を支援する情報サイト
→「妊娠しやすいカラダづくり」
http://p.tl/WTld

▼妊カラ・男性不妊編
→「男性不妊 ~ ふたりで知っておきたいオトコのこと」
http://p.tl/7ZWq

▼医師がサポートするサプリメントセレクトショップ
→「ネイチャーズギフト」
http://p.tl/9Qp3

▼ドコモ、au、ソフトバンク公式携帯サイト
→「おしえて!不妊ナビ」
http://funinavi.edia.ne.jp/index.html

▼ツイッター
→「妊娠しやすいカラダづくり」
http://twitter.com/ninkara


編集後記____________________________________________________________

男性の精液検査の結果が思わしくなくても、男性不妊外来のある一部の施設
を除けば、男性不妊を専門とする泌尿器科医の診察を受け、治療の可能性を
探ることは滅多にありません。

このことは、不妊治療に携わっている専門家の構成を考えれば、全く致し方
ないことです。

不妊治療の中心は産婦人科医で、産婦人科医をエンブリオロジストや看護師、
カウンセラー、泌尿器科医がバックアックする体制になっています。

そして、数的割合は、産婦人科医を100とすると、エンブリオロジストが
30、看護師が20、そして、カウンセラーや泌尿器科医が、それぞれ、2
です。

つまり、男性患者は受け身では自らの治療環境は得られないのです。

適切な情報を得て、男性不妊外来を探し、男性不妊を専門とする泌尿器科医
を自分で探すことです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.493
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整
理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出
来る限り客観的な視点で、お届けしています。
--------------------------------------------------------------------
発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://p.tl/Cg3G
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎発行部数
・自社配信: 530部
・まぐまぐ: 4,764部
・合計部数: 5,294部(11月25日現在)
--------------------------------------------------------------------
◎免責事項について
当メールマガジンの提供する情報は医師の治療の代わりになるものでは決し
てありません。プログラムの実行は各人の責任の元で行って下さい。プログ
ラムの実行に伴う結果に関しては、当社の責任の範囲外とさせて頂きます。
--------------------------------------------------------------------
◎注意事項
読者の皆さんから寄せられたメールは、事前の告知なく掲載させていただく
場合がございます。匿名などのご希望があれば、明記してください。また、
掲載を望まれない場合も、その旨、明記願います。メールに記載された内容
の掲載によって生じる、いかる事態、また何人に対しても一切責任を負い
ませんのでご了承ください。
--------------------------------------------------------------------
◎著作権について
当メールマガジンの内容に関する著作権は株式会社パートナーズに帰属しま
す。一切の無断転載はご遠慮下さい。