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妊娠しやすいカラダづくり No.539 2013/10/13
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今週の内容__________________________________________________________
・今月の特集:妊娠力を最適化する
・妊カラ編集室から:「Fine祭り2013」チケットを妊カラ読者にプレゼント
・編集後記
今月の Oct.2013_____________________________________________________
妊娠力を最適化する
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妊娠する力を左右するものやことはたくさんあります。そして、それについ
ての情報はもっとたくさんあります。要するに、あいまいで、怪しげな情報
が多いということです。
なにを信じるべきか、最終的には自分で考え、判断するしかないわけですが、
頼りになるのは、やはり、エビデンスと言われている、信頼できる医学論文
のデータです。
ドクターも、生活面などのアドバイスは、当然、エビデンスに基づいて、患
者さんにアドバイスするわけです。
今回、アメリカ生殖医学会が、ドクター向けに、患者さんに生活習慣につい
てのアドバイスをするための見解、「Optimizing natural fertility」を学
会の委員会から出しました。5年前に最初のものが出て、その際にも妊カラ
で紹介しましたが、5年もたっているので、今回も取り上げることにしまし
た。
Optimizing natural fertility: a committee opinion
Fertil Steril. 2013;100:631-7
■妊娠力を最適化する
これは、ドクターが患者さんにライフスタイルや性生活についてのカウン
セリングやアドバイスを行う際に指針とすべきガイドラインとして、アメ
リカ生殖医学会の委員会が統一見解としてまとめたものです。
━ 妊娠するまでにかかる期間について
通常、妊娠するために、避妊しないでセックスをはじめた場合、最初の月が
妊娠の確率が最も高く、その後、徐々に下がっていきます。
約80%のカップルが最初の6か月で妊娠し、周期あたりの妊娠率は最初の
3か月が最も高くなります。
━ 年齢の影響について
年齢が最も妊娠率に影響を及ぼし、30代後半になると20代前半の半分の
確率になってしまいます。
年齢の影響は男女ともにありますが、女性のほうが顕著にあらわれ、女性は
35歳以上になると妊娠率は著しく低下しますが、男性の場合、35歳以上
の精液所見では、データ上は低下するものの、実際、妊娠させる力に影響が
及ぶのは50歳以上になってからのことです。
━ 男性の射精の頻度の影響について
男性が5日間以上射精しないと精子数に影響が生じる一方で、2日間の禁欲
では精子の数は通常値だったと報告されています。頻繁に射精すると、精液
中の精子が少なくなってしまうとよく言われていますがそのようなことはあ
ありません。
実際、精子の数や質、運動能力ともに正常な男性であれば、毎日射精を行っ
ても、およそ、1万匹近くの精子が確認できたとの報告もあります。さらに、
乏精子症の男性でさえ、毎日射精をしたときに精子量と運動量が最大になっ
たという報告もあります。
このように男性にとって、頻繁に、たとえば、毎日、セックスであろうと、
マスターベーションであろうと、射精したからといって、精子の数が少なく
なるわけではありません。
それどころか、最近の研究では、頻繁に射精するほうが、新鮮な(つくられ
てすぐの)精子が増え、DNAの損傷率が低い精子が多くなることから、数
だけでなく、男性の妊娠させる力に決定的に影響を及ぼす精子の質も高くな
ることがわかっています。
お子さんを望む男性は週に3回は射精するのが望ましいと言えます。
━ セックスの頻度の影響について
毎日、セックスを行えば、妊娠の確率は最も高くなります。ただし、それに
より、かえって、ストレスをため込んでしまう可能性もあるので気をつけた
いものです。
妊娠を望む221のカップルを対象に行われた調査では、毎日、セックスを
行っているカップルは周期あたりの妊娠率が33%と最も高く、週1回にな
ると、半分以下の15%だったとのことです。
そもそも、なかなか妊娠しないことに悩んだり、焦ったりすることでストレ
スフルなところに、排卵のタイミングに「スケジュール通り」に行うセック
スに努めていると、喜びや満足感よりも苦痛を伴うようになってしまいます。
そして、セックスの回数そのものも少なくなる悪循環に陥ると、皮肉にも、
かえって、妊娠しづらくなってしまうのです。
妊娠を切望するカップルへのアドバイスとして、毎日、隔日のセックスは妊
娠率が高くなりはしますが、苦痛を感じだしたら、立ち止まって、ペースを
見直すことが大切かもしれません。
━ 妊娠しやすいタイミングについて
妊娠の可能性があるのは、通常、排卵までの6日間とされています。中でも、
排卵までの3日間のセックスが最も妊娠の確率が高くなります。
221組のカップルを対象にした調査では、排卵の2日前から排卵日にセッ
を行ったときの妊娠率が最も高いことがわかりました。また、別の調査では、
排卵日の前日にセックスを行った時が最も妊娠率が高く、排卵日当日から確
率が下がることがわかりました。
まとめとしては、月経サイクルが順調な女性の場合、月経が終わった直後か
ら排卵日までセックスを続けることが望ましいと言えます。
━ 排卵日の予測について
頸管粘液の状態と妊娠率の関係を調べるために、1681組を対象に行われ
た研究では、頸管粘液の量がもっとも多い日にセックスを行うと、妊娠の確
率が38%と最も高く、その前後の日のセックスを行えば妊娠率が約15~
20%に低くなったとのこと。
また、2832サイクルを対象に行った研究では、粘液の変化と基礎体温の
関係は密接で、妊娠しやすい時期をより正確に割り出すことができることが
わかりました。
排卵日検査薬については、実際の排卵は検査薬で検出された日ではなくその
翌日や2日後に起きることがあり、誤った検査結果が出る確率は約7%との
報告があります。
やむを得ない事情により、セックスをあまり多くの回数出来ないカップルに
とって、排卵検査薬は助けとなっているが、ある研究では、基礎体温、ある
いは、排卵検査薬と同様、もしくはそれら以上に、粘液状態の変化を観察す
る方が、より正確に妊娠しやすいタイミングを知ることが出来るとのこと。
━ セックスの方法について
性行為の後にあおむけになって精子の移動を促し、また体外に精子が漏れる
のを防ごうとするのは科学的根拠がありません。
なぜなら、膣内に射精された精子はすみやかに子宮頸管から子宮に向かうか
らです。
もちろん、精子が泳いでいくわけですが、女性の子宮や卵管は精子を運ぶ働
きがあることが知られています。
そのことを確かめる研究があります。精子に見立てた小さな粒子を卵胞期の
女性の膣の奥に置いて、その後の動きを追跡したところ、小粒子はたった2
分で、卵管に移動したというのです。
さらに、驚くべきことに、小粒子は成熟卵胞のある卵巣がある側の卵管のみ
にみられたことです。そして、主席卵胞が育つにつれて移送される粒子の量
が増えていったとのこと。つまり、子宮や卵管は、卵胞が成熟している卵巣
の方に引き寄せるような働きがあるというわけです。
━ 食生活とライフスタイル
痩せ過ぎと太り過ぎは妊娠しにくくります。そして、健康的なライフスタイ
ルによって、排卵障害のある女性の妊娠率は向上する可能性があります。た
だし、ベジタリアンや低脂肪ダイエット、ビタミンを多く摂る食生活、アン
チオキシダント、漢方などが妊娠率や産まれてくる子の性に影響する根拠は
今のところまだ乏しい。
妊娠を望む女性は、葉酸(一日400mcg)を摂ることで先天的な神経管異常の
リスクを低下させることになります。
◎喫煙
喫煙は妊娠、出産に悪影響を及ぼします。10,928名の喫煙する女性と19,128
名の喫わない女性を対象に行われた大規模な調査では、喫煙する女性の方が明
らかに不妊症のリスクが高いことが確かめられています。
喫煙する女性はしない女性に比べて、卵胞が早く減少します。そのため、喫煙
する女性は、そうでない女性より、1から4年も早く更年期が訪れることが知
られています。
また、喫煙は流産のリスクを高めます。
男性でも、喫煙により精子の濃度や運動量が低下し、DNAの断片化率を高め、
精子の質を悪化させます、
◎アルコール
女性にとって、飲酒の妊娠への影響ははっきりとしていません。幾つかの研究
では、女性のアルコール摂取が妊娠に悪影響を及ぼすとしているが、また別の
研究では、むしろ妊娠を促進するとの報告があります。
ストックホルムで行われた、7,393名を対象とした調査によると、1日2杯の
アルコール飲料を摂取する女性の不妊リスクは非常に高く、1日1杯以下しか
飲まない女性のリスクは低いことを確かめています。その他研究での最近のト
レンドとしても、やはりアルコールの過度な摂取は妊娠率を下げるとの報告が
なされています。
◎カフェイン
過度のカフェイン摂取(一日5杯のコーヒーまたはそれに準じるもの)は妊娠
を妨げます。
妊娠中は一日200-300mg(一日2、3杯のコーヒー)のカフェイン摂取が流
産のリスクを高めるものの、先天異常のリスクとは無関係である。
◎その他
サウナについては、女性の受精に対して悪影響は無く、また合併症のない妊婦
についても安全である。
その一方で、男性に対してのアドバイスとしては睾丸を熱に晒さないことです。
環境汚染や毒物も受精に影響する可能性がある。情報はまだ限られているもの
の報告は増えています。ドライクリーニングや印刷業で用いられる溶剤などが
要因で女性の妊娠率が下がることがあります。重金属の類は精子の数値に異常
をきたすこともあり、農業従事者が使う農薬や殺虫剤なども懸念されています。
━ まとめとして
・妊娠しやすい時期は排卵日より6日前から排卵日までで、それは粘液の質と
量に関連がある。
・妊娠しやすい時期に頻繁に性行為を行う(毎日か一日おき)と妊娠率は上が
るが、それより頻度が低くても(週に2、3回)でも確率はそれほど変わら
ない。
・性行為の体位や行為後の体勢などは妊娠率に明らかな影響はない。
・それほど頻繁に性行為を行わないカップルにとって、排卵日検査薬は時に有
用である。
・少量のアルコール摂取(1日1、2杯)や少量のカフェイン摂取でも受精に
影響がある可能性がある。
━ アドバイスとして
・年齢と共に妊娠に至るまでの時間は長期化する。35歳以上の女性が妊娠を
試みてから受精せずに6か月が経過した場合は、専門家へ相談するべき。
・正常な月経サイクルの女性は月経後からを毎日か、一日おきに性行為行うと、
妊娠率の向上につながる。
・喫煙、過度の飲酒(1日2杯以上)は、妊娠を希望するカップルが避けるべ
きである。
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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com
妊カラ編集室から____________________________________________________
「Fine祭り2013 」 チケットを妊カラ読者プレゼントします!
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2013年11月3日(日・祝)に、恒例のイベント、『Fine祭り2013 ちゃんと知
りたい!男女の不妊』が開催されます。
不妊をテーマにした、最も内容が充実し、かつ、最も規模の大きいイベント
です。主催は、不妊当事者団体であるNPO法人Fineです(http://j-fine.jp/)
私たちは、第一回目の開催から協賛企業として参加しています。内容は以下
の通りです。
◎『Fine祭り』とは
http://j-fine.jp/activity/event/fine_matsuri.html
不妊当事者と医療関係者や企業などのサポーターが一堂に会するイベントと
して、毎年開催しています。今年は、ホールでの講演&トークセッション、
ホワイエで協賛企業による展示や販売、また不妊スペシャリストの無料相談
コーナーなど、さまざまな方面から当事者を支援したいとのこと。
◎精子と卵子の話から最新情報まで
「卵子の老化」が話題になっていますが、不妊の原因の半分は男性にあると
も言われています。今年は、男性不妊症の最前線で活躍する泌尿器科医と、
精巣精子を用いたICSIによる妊娠例の日本初の報告をした不妊専門医が講演
します。
不妊治療中の人はもとより、これから妊活を始めようとする人々、その周り
の人々や一般の方々にも、ぜひ知ってほしい内容です。
◎ヒキタクニオ氏(作家)が男性不妊体験を語る
トークセッションのゲストは、『「ヒキタさん、ご懐妊ですよ!」男45歳・
不妊治療はじめました』(光文社)の著者、ヒキタクニオさん。『妊活バイブ
ル』(講談社)の著者、白河桃子さんも登場し、不妊治療や妊活、ライフプラ
ンの参考になるトークが展開される予定です。
■開催概要(http://j-fine.jp/matsuri/2013/matsuri.html)
◆日時:2013年11月3日(日・祝)10:00~16:00(予定)
◆会場:THE GRAND HALL(東京・品川)
◆講演・トークセッションの内容:
「男性不妊の新常識 ~最前線の現場から~」
石川智基先生(リプロダクションクリニック大阪 CEO)
「本質から考えたい不妊治療
~正しい知識と理解から、正しい不安と安心を~」
浅田義正先生(浅田レディースクリニック 理事長)
「子どもを持つ、育てるということ~"不妊"や"妊活"の視点から~」
ヒキタクニオ氏(作家)、白河桃子氏(ジャーナリスト・ライター)、池上
文尋氏(不妊治療ジャーナリスト)、松本亜樹子(NPO法人Fine 理事長)
◆展示コーナー
不妊当事者を応援する企業等が参加、商品やグッズの展示・販売など。私た
ち、株式会社パートナーズも出展します。
◆不妊スペシャリスト相談コーナー
不妊症看護認定看護師さん・エンブリオロジストによる無料相談。
◆入場料
前売り券 1000円、チケットぴあにて発売中
(*前売り券が余った場合のみ当日券販売予定、1500円)
このメールマガジンをご購読の方で、Fine祭りに参加したいという方に、チ
ケットを20名様にプレゼントします。
メールにて、お名前、ご住所、電話番号を記載の上、ご応募ください。メー
ルのタイトルに「Fine祭りチケットプレゼント応募」を書いて、以下のアド
レス宛にお送りください。
info@akanbou.com
尚、ご応募が20名以上になった場合は抽選とさせていただきます。
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私たちはお子さんを望まれるカップルを応援します。
▼不妊に悩む夫婦の自己決定を支援する情報サイト
→「妊娠しやすいカラダづくり」
http://www.akanbou.com/
▼妊カラ・男性不妊編
→「男性不妊 ~ ふたりで知っておきたいオトコのこと」
http://www.akanbou.com/dansei-funin/
▼お子さんを望まれるふたりのためのサプリメント
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http://babyandme.jp/
▼ドコモ、au、ソフトバンク公式携帯サイト
→「おしえて!不妊ナビ」
http://funinavi.edia.ne.jp/index.html
編集後記____________________________________________________________
現在、アメリカのボストンに出張中です。
この秋に出版する予定の翻訳本、「The Fertility Diet」の著者である、
ハーバードメディカルスクール準教授チャバロ先生に会って、インタビュー
することです。
アメリカの食生活や栄養素と生殖機能の関連についての研究の第一人者でい
らっしゃるチャバロ先生から最新の知見を得るべく、今からワクワクしてい
ます。
そして、アメリカ生殖医学会に参加し、アメリカの不妊患者さんをサポート
するさまざまなモノやソフトについての情報を収集し、その動向を知ること
も目的の1つです。
それにしても、夏のような日本から、一気に晩秋といった寒さです。ちょう
ど、メジャーリーグの地元レッドソックスがタイガースとのリーグチャンピ
オンシップの初戦が、さっき、始まったところです。フェンウェイ球場は滞
在しているホテルからすぐのところで、街はとっても盛り上がっています。
皆さんに役立つ情報をお届け出来るように頑張ってまいります。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.539
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お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします
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不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整
理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出
来る限り客観的な視点で、お届けしています。
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://www.akanbou.com/
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◎発行部数
・自社配信: 1,087部
・まぐまぐ: 4,278部
・合計部数: 5,365部(10月13日現在)
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