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VOL.580 不妊治療終結について考える

2014年07月27日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.580 2014/7/27
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今週の内容__________________________________________________________

・ドクターに訊く:不妊治療の終結について考える
・編集室から:不妊治療終結についてあなたの「声」をお聞かせください
・私たちが運営するサイト
・編集後記


ドクターに訊く Jul.2014_____________________________________________

 不妊治療の終結について考える
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ドクターに訊く、今回のテーマは「不妊治療終結について考える」です。昨
今の晩婚化の影響で不妊治療を受ける女性の年齢が、年々、高くなっていま
す。妊娠率に最も影響を及ぼすのは女性の年齢ですから、妊娠するまでに長
い期間がかかってしまうカップルが増えているということになります。

不妊治療では、たとえ、体外受精などの高度な生殖補助医療を繰り返しても、
必ずしも妊娠、出産が保障されているわけではなく、意を決して不妊治療を
はじめても、全てのカップルがお子さんを授かって、不妊治療を終えられる
とは限りません。

30代後半や40代で不妊治療をはじめた場合、運良く、お子さんを授かる
ことが出来ればいいのですが、治療期間が長くなってくると、いつまで不妊
治療を続けるのか、すなわち、「不妊治療の終結」について考えるようにな
ります。

ところが、なにを目安に不妊治療を終結すればいいのか、決まった指標があ
るわけではないため、それぞれのカップルにとっての「治療の止め時」に悩
むことになります。

そこで、不妊治療を受けるカップルの心のケアや不妊治療終結のためのサポー
トをライフワークとして取り組んでおられる、東京慈恵会医科大学産婦人科
講師の杉本公平先生に、「不妊治療終結」についてお話をお伺いしました。

治療終結時期に悩むカップルだけでなく、不妊治療を受けている全てのカッ
プルのお役に立てればと思います。

インタビューの内容

【1】不妊治療はなぜ苦しいのでしょうか?
【2】不妊であることは辛いことばかりなのでしょうか
【3】不妊治療の終結について考える
【4】不妊治療の終結に悩んでいる方へのメッセージとして


【1】不妊治療はなぜ苦しいのでしょうか?

細川)不妊学級*に参加させていただいたのですが、治療内容の説明だけで
なく、たとえば、「これから地獄のような毎日がはじまるのです。」という
ように、不妊であることや不妊治療を受けることで生じる悩み、味わう苦し
みについても、詳細に説明されていらっしゃったのには驚きました。

杉本先生)そうですね。世間では不妊症に関する情報発信が増えましたが、
まだまだ、正しく理解されているとは言い難い状況です。ですから、患者さ
んにとって大切な情報、そして、厳しい情報ほど、ぼかさないではっきりと
伝えることが大事であると考えています。そのことが、結果として、患者さ
んにとってストレス軽減になり、医師にとっては患者さんとのよい関係を構
築しやすくなると考えています。

細川)なるほど。不妊治療を受けること、不妊であることがなぜ苦しいのか
についても、予め患者さんにお話しになっておくのも、適切な情報提供の一
環であるというわけですね。

杉本先生)そうです。皆さん、ご承知の通り、不妊治療の苦しさは、治療そ
のものストレスだけでなく、対人関係や内面的問題にも及びます。対人関係
の悩みでは、たとえば、ご主人との不妊治療に対する温度差やスレ違いとい
うものがあります。

細川)そうですね。治療について、あれこれ相談にのって欲しいと思ってい
るのに、「好きにすればいい」という感じで、協力的でないという話しはよ
く聞きます。

杉本先生)それは、女性と男性とのプライオリティの違いからくるものだと
思われます。

細川)男女で大切に考える順番が違うと。


杉本先生)はい。女性にとっての最大の関心事は「妊娠」なのです。ところ
が、男性であるご主人にとっては「奥さんの体のことが一番心配」なのです。
ですから、妊娠できる治療かどうかよりも、奥さんの身体に負担にならない
治療かどうかが気になるので、治療内容について相談されても、「ほどほど
に」とか、「無理しないで」というように、なんとも、奥さんからすれば中
途半端に感じてしまう反応になってしまうわけです。

細川)なるほど。そのために奥さんにとっては、自分のパートナーは治療に
ついて一緒に考えてくれない、他人事のような態度に映るのですね。

杉本先生)そうです。ですから、男女には違いがあるということを、お互い
に理解しておく必要があります。その上で、コミュニケーションをとる努力
をし、力を合わせることが大切だと思います。

細川)はい。

杉本先生)そもそも、カップルは、最初、相手の違い(自分にないもの)に
魅力を感じ、惹かれあうところがあったと思うのですね。ところが、ストレ
ス状態では、「違い」が「脅威」になってしまい、お互いのいうことが批判
や、攻撃に感じてしまうようになるのだと思います。

細川)なるほど。相手との違いが、状況次第で魅力にもなり、脅威にもなる
ということですね。

杉本先生)はい。また、不妊治療というのは、いくら頑張って通院して、努
力を続けても、結果は妊娠反応が出るかでないか、すなわち、100点か0
点しかないのです。要するに、頑張りに見合った評価など全くなされない、
努力に対する報酬を得られないという、それまでに経験したことのない世界
なのです。

細川)時間も、お金もかけて、治療の痛みにも耐えても、必ずしも相応の結
果が得られるわけではありませんね。

杉本先生)不妊治療期間が長くなるということは、努力を否定され続けるこ
とになり、まるで、人格を否定されているような感覚になり、自尊心がはな
はだしく傷つけられることになってしまうわけです。

細川)何ヶ月どころではなく、何年にもわたって、そんな経験を繰り返して
いる患者さんが少なくありませんね。

杉本先生)ただ、よくよく考えてみれば、妊娠することと人間の価値とは何
の関係もありません。このことを忘れないで欲しいのです。

*不妊学級とは?
東京慈恵会医科大学附属病院で、体外受精を検討する不妊患者さんに対して
行っている説明会のこと。担当の医師から治療内容や注意事項などについて
の説明がなされる。


【2】不妊であることは辛いことばかりなのでしょうか

細川)杉本先生は、不妊学級では、不妊を経験することは、辛いことばかり
ではなく、いろいろな意味のあることなのだということも、繰り返し、強調
しておられます。

杉本先生)いつも歴史上の女性に登場いただいています。豊臣秀吉の正室で
ある、おね、です。秀吉をよく助け、非常に賢く、人望のある女性であった
ことが知られています。

細川)はい。

杉本先生)彼女は子を授かることが出来なかったのですが、多くの子を親戚
などからもらいうけて養い育てたそうです。加藤清正や福島正則といった戦
国時代を代表する武将を立派に育て上げ、実の母親のように慕われていたと
いいます。跡取りが重要であった当時のことですから、彼女が不妊であった
ことの辛さは相当なものだったことは容易に想像できます。

細川)そうですね。

杉本先生)そんな人格者で人望もあった女性ですから、もしも、彼女に男の
子が授かっていたら、豊臣家も安泰だったに違いないという意見があります
が、私は全くの間違いだと考えています(笑)。

細川)全くの間違いだと?

杉本先生)そうです。それは、不妊経験が彼女の人格形成に大きな影響を及
ぼしたと考えられるからです。もしも、なんの苦労もなく子を授かっていた
ならば、戦国きっての賢妻と言われるような傑出した女性になっていたかど
うか、疑問に思っています。

細川)なるほど。

杉本先生)また、堀田あきお先生の本の中で紹介されている話で、こんな話
があります。最近、お子さんを授かって育児中の芸能人が、テレビで、こん
なことを話していました。それは、「子育ては親育てだって気づいたんです
よ。」、そして、「人間、子どもを産んで育てて初めて一人前になるんです
ね。」と。

細川)子どもを産んで、育てて一人前になれると。

杉本先生)もっともらしく聞こえますが、必ずしもそんなことないと思いま
す。子どもを産み、育てないと一人前になれないなんてことは全くありませ
ん。

細川)はい。

杉本先生)そのことを実際に調べた研究報告があります。体外受精が始まっ
たばかりの頃、体外受精で妊娠、出産した女性には母性は育たないというよ
うなことが、まことしやかに言われていたそうです。

細川)そうなんですか。

杉本先生)そこで、Balenさんという先生が、本当にそうなのかどうか調べ
たのです。具体的には、自然妊娠で子を産んだ母親と一般不妊治療の母親、
体外受精の母親を対象に母性の適正テストを実施したのです。

細川)はい。

杉本先生)その結果は驚くべくものでした。自然妊娠した母親のグループよ
りも一般不妊治療や体外受精で妊娠した母親のグループのほうが社会性のあ
るおおらかで立派な母親になれることがわかったのです。

細川)なんとも勇気づけられる結果です。

杉本先生)私はこの論文を読んだ時に、ふと、おねのことを思い出しました
(笑)。おねがすぐれた女性であったのは、むしろ、不妊という辛い経験をし
たからではないか、そう考えるようになりました。

細川)なるほど。

杉本先生)最終的にお子さんを授かっても、授からなくても、不妊を経験す
るということは、自分の努力だけではどうにもならないことをいやというほ
ど味わわされるということで、自分の思い通りにならない経験を繰り返すこ
とになります。

細川)そうですね。

杉本先生)そのことで自分自身の内面に真剣に向き合うことに多くの時間を
費やすことが出来るようになり、自分自身と向き合い続けることで人格的に
成長できるようになるのではないでしょうか。

細川)そのことが何にも代え難い価値のある経験になるということですね。


【3】不妊治療の終結について考える

細川)杉本先生は、不妊治療の終結のサポートにも力を注いでいらっしゃい
ます。

杉本先生)はい。大学病院という性格上、必然的に高齢の患者さんや子宮内
膜症などのある難治性の不妊患者さんが多く、当然、治療成績も低く、治療
期間も長くなってしまわざるを得ません。そのような状況で、不妊治療の終
結点を見出せず苦しんでいる40歳以上の患者さんが大勢いらっしゃいます。

細川)はい。

杉本先生)生殖医療の目覚ましい発展にもかかわらず、40歳以上の高齢不
妊患者さんの治療成績を劇的に向上させる手だては見当たりません。そのた
め、不妊治療終結に際しての適切なサポートの重要性がますます高まってい
ます。2009年に治療終結についてアンケート調査を行いましたが、治療
終結を決める因子として最も多かったのは「年齢」でした。

細川)○○歳までは頑張って続けようということですね。

杉本先生)そうです。そして、その場合、何歳なのかを聞いてみると、大変
興味深いことに、40歳未満の方は、40歳を治療の終結とする傾向がある
のですが、40歳以上になると半数以上が無回答でした。つまり、治療の終
結を見出せなくなっている方が多いのではないかと考えられるわけです。長
い治療による疲れが、治療終結について考える気力も奪ってしまっているの
でしょうか。

細川)いろいろなことを考えさせられるデータです。

杉本先生)そうですね。また、2011年の調査では、「治療の限界点につ
いての情報」*1を提供しても、治療終結年齢や治療回数は変化しないこと
がわかりました。

細川)それは意外な気がします。要するに、治療終結の年齢や治療回数を考
える上で、妊娠、出産の最高齢、その患者さんの治療回数などには影響され
ないということでしょうか。

杉本先生)治療終結を考えるうえで、「治療の限界点に関する内容」*1の
情報提供は我々医療者が思うほど意義は多くないと考えられますね。

細川)はい。

杉本先生)ただ、情報提供のタイミングとしては、不妊治療開始前、体外受
精や顕微授精開始前を答えた方が多く、あらかじめ情報提供を受けておきた
いという患者さんの考えが反映されているものと考えられます。

細川)そうですね。

杉本先生)そして、不妊治療の終結についてカウンセリングを行う相手とし
て適切なのは医師と答えた方が80%に上っていました。

細川)治療の終結については、不妊カウンセラーではなく、ドクターに相談
したいということですね。これはわかるような気がします。

杉本先生)ただ、現実には日常の診療の中では治療終結についてのカウンセ
リングを行う時間的な余裕はありません。

細川)はい。

杉本先生)その一方で、この問題に取り組む上で参考になるコメントがいく
つか得られました。たとえば、「メンタルケアがあれば治療終結も自然に出
てくる」というものです。

細川)情報提供よりもメンタルなケアが必要かもしれないということですね。

杉本先生)そうです。治療終結を決定する上で、精神的に支えられているこ
と、適切な精神的なサポートを受けていることが重要なのかもしれません。

細川)はい。

杉本先生)そして、私のこれまでの経験ですが、特別な心理カウンセリング
というよりも、日常の診療の中で、たとえば、注射のときなどのささいな気
遣いや言葉がけ、治療内容についての再確認などのようなささやかなケアが
患者さんからは高く評価されました。長い時間を割いてカウンセリングを行
わなくても、日常診療で適切なケアを積み重ねて患者さんを精神的に支援し
ていくことは治療終結にお役に立てるのかもしれないですね。

細川)とても勉強になります。

杉本先生)また、「治療終結は医師におかませする」というものもありまし
た。これはインフォームドコンセント*2という観点からは認められないか
もしれません。ただし、スプリチュアルケアという観点からは「委ねる」こ
とも自律した決定の一つとしてとらえられています。治療終結ということを
考えていく上で、さまざまな視点から患者さんのケアを考えていかなければ
ならないと考えています。

*1)治療の限界点に関する内容とは

(1)年齢
出産された患者さんでは治療時点で「44歳」が最高齢でした。
妊娠された患者さんでは治療時点で「44歳」が最高齢でした。

(2)治療回数
出産された患者さんでは「8周期目」の治療で初めて妊娠された方が最も遅
い妊娠でした。
妊娠された患者さんでは「9周期目」の治療で初めて妊娠された方が最も遅
い妊娠でした。ただし、この方は流産されました。

(3)卵巣機能
ここでは月経3日目頃の血液中のFSH値を指標としています。FSHが高
いほど卵巣機能が悪いとされています。
出産された患者さんでは17.6(IU/L)が最も高値でした。
妊娠された患者さんでが22.2(IU/L)が最も高値でした。

*2)インフォームドコンセントとは
医師から十分な説明を受けたうえで患者自身が最終的な診療方法を選択する
こと。


【4】不妊治療の終結に悩んでいる方へのメッセージとして

細川)最後に、現在、不妊治療の終結に悩んでいて、なかなか決められない
という方々へのメッセージをいただきたいのですが。

杉本先生)はい。まずは、体外受精を繰り返しても妊娠に至れない方は大勢
いらっしゃいます。最初にもお話ししましたが、妊娠できないことと人間
(女性として)の価値とは全く関係ないということを忘れないでください。

細川)妊娠できないことと人間の価値とは全く関係ないと。

杉本先生)はい。また、たとえ、高齢で妊娠の確率が低くても、お子さんを
望むことは悪いことでもなんでもありません。そんな善悪の問題ではありま
せん。そして、そのために辛い治療を耐えて頑張ってきたことはとても立派
なことだと思いますし、そんな自分を誉めてあげて欲しいとも思います。

細川)はい。

杉本先生)以前、54歳で他のクリニックからの紹介でこられた患者さんが
いらっしゃいました。既に閉経されていましたが不妊治療を強く希望されま
した。2回目の診療の時に、「私のやっていることって、バカが騒いでいる
ように見えるでしょ?」と、少々、自虐的におっしゃったのです。私は、思
わず、気色ばんで「バカが騒いだっていいじゃないですか!」と言い放って
しまったのですね。私自身自分のように医師でありながら不妊カウンセリン
グを行っていることがまさに「バカが騒いでいる」ように思えていたので、
そのことも伝えました。

細川)ええ。

杉本先生)その患者さんは、その瞬間大泣きされましたが、「ようやく治療
をやめる決心ができそうです。」とおっしゃって微笑まれました。そして、
その次のカウンセリングで穏やかに治療を終結されました。もしかしたら、
私が言い放ったことが、それまでやってこられたことを肯定してもらったと
感じていただけて、そのことがきっかけになって、冷静に考えられるように
なられたのかもしれません。

細川)なるほど。

杉本先生)私は、高齢の患者さんには治療成績を提示して、「もしも、私が
あなただったら治療をやめると思いますが、あなたが続けたいとおっしゃる
のであれば、私は全力で治療しますし、どこまでもおつきあいします。そし
て、治療を終結した後、気が変わって治療を受けたくなったら、いつでもお
越しください。」とお話ししています。

細川)決して、見放さないということですね。

杉本先生)それが最大のケアだと思っていますから。

細川)ええ。

杉本先生)それによって、はじめて自分を冷静にみつめられるようになる患
者さんも少なくないのです。

細川)そうなのですね。

杉本先生)そして、たとえ、お子さんを授かることが出来なかったとしても、
それまでの治療は決して無駄ではなかったということ。

細川)それまでの治療は無駄ではなかったと。

杉本先生)これも実際の患者さんのお話ですが、受精障害の患者さんがいらっ
しゃいまして、以前いた病院で顕微授精の機器が導入されたばかりのことで

した。その患者さんは「私の卵をその実験台に使ってください」と申し出ら
れたのですね。もちろん、そんなことは出来ません。その患者さんは、「私
はそろそろ自分が妊娠できないって気がついてます。でも、実験台になるこ
とで私の後の方が救われるようになることに少しでも貢献できれば、嬉しい
です。私が今、努力して通っているのは、全力を尽くしたと思って納得して
治療を終結しないと、将来前向きに人生を歩めないと思うからです。」とおっ
しゃいました。

細川)ご自身の納得のためだと。

杉本先生)そうです。このことは、結局、お子さんを授かることが出来ずに
不妊治療を終結せざるを得なかった全ての患者さんに言えることなのですが、
皆さんの治療結果は、必ず、日本の生殖医療の発展に寄与することになるの
です。今や、日本は世界一の体外受精大国になりましたが、それは、辛い治
療に立ち向かう患者さんたちの真摯な姿勢が医療者を突き動かしてきた結果
であると私は信じています。

細川)患者さんたちの真摯な姿勢が医療者を突き動かしてきた結果、多くの
カップルが大きな恩恵を受けることが出来る治療環境が整ったというわけで
すね。

杉本先生)その通りです。結果が伴わないと無駄であるなんてことは全くあ
りません。この間のソチオリンピックで浅田真央さんは結果を出す(メダル
を獲得する)ことが出来ませんでした。でも、浅田真央さんの演技が無駄だっ
たなんて誰も思っていないのではないでしょうか。少なくとも私は大きな感
動をいただきました。金メダルを獲られてもあれほどの感動はなかったと思
います。

細川)よくわかりました。治療の終結のための誰にでもあてはまる指標はな
いということですね。

杉本先生)そうなのです。ですから、私も自分の行っているケアが100点
満点と思わないし、私の方法が合わない方もいることを理解しています。だ
からと言って100点になるまで何もしないというのは正しくないと思いま
す。100点の自信がなくても、治療終結という患者さんの辛い意思決定か
ら逃げずによりそっていくこと。そこまで付き合う覚悟を持って医師が診療
することが、患者さんを治療終結の苦しみから少しでも救うことができる方
法であると考えております。

細川)よくわかりました。ありがとうございます。治療終結を決められずに
悩み、苦しんでいる患者さんにとって必要なのは医学的な情報よりも、精神
的なケアであること、そして、どのようにケアをすればいいのかについても
マニュアルなど存在せず、大切なのは患者さんへの思いやるお気持ちだとい
うことがよくわかりました。私たちにとってもとても貴重な機会を設けてい
ただいたと思っています。本当にありがとうございました。

---[杉本公平先生プロフィール]----------------------------

産婦人科医師。東京慈恵会医科大学卒業。現在、東京慈恵会医科大学産婦人
科講師。生殖部門チーフ。不妊症外来担当。専門は高齢不妊患者への治療及
びカウンセリング、子宮内膜症合併不妊症例などの腹腔鏡手術。生殖医療専
門医、腹腔鏡技術認定医、臨床遺伝専門医、不妊カウンセラーとして、日々、
患者の診療にあたり、臨床経験から学んだ「グリーフ・ケア」や「スピリチュ
アル・ケア」に基づいた産婦人科医療に取り組んでいる。また、がん・生殖
医療研究会のカウンセリング小委員会の委員長として 妊孕性温存医療の必
要な患者さんのカウンセリング体制構築に力を入れている。

▼著書「誰も教えてくれなかった卵子の本」
http://urx.nu/8tYc

▼東京慈恵会医科大学附属病院・総合母子健康医療センター
http://www.jikei-boshi.jp/

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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


妊カラ編集室からのお願い____________________________________________
 
不妊治療の終結についてあなたの「声」をお聞かせください!
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今回のドクターに訊くは、東京慈恵会医科大学産婦人科講師の杉本公平先生
に「不妊治療終結について考える」というテーマでお話をお伺いしました。

不妊治療終結の時期について悩んでいるというご相談をいただくことが、年
々、増えています。

そんな方々にとって、今回の記事が、少しでも、お役に立つことが出来れば
と、願うばかりです。

それぞれのカップルには、それぞれの「止め時」があるのだと思いますが、
杉本先生もおっしゃっていたように、治療終結に悩む方々には、医学的な情
報は、私たちが思っているほど、治療終結時期を決定する際の参考にならな
いようです。

また、それまで、費やした時間や費用、思いが大きければ大きいほど、自分
でピリオドを打つのは難しくなるとも聞きます。

だからこそ、なにかを解決するというよりも、それまでの経験をどう受け入
れ、これからの人生にどう活かしていくのか、自分たちなりに決着をつける
ということが避けて通れないのもしれません。

そのため、皆さんの「お声」をお聞かせいただきたいのです!

今回の記事についてのご感想やご意見、そして、不妊治療終結についての悩
みや経験をお寄せいただければと思います。

皆さんからの情報が、治療終結に悩んでいる方々に少しでも参考になればと
思います。

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私たちが運営しているサイト__________________________________________

▼不妊に悩む夫婦の自己決定を支援する情報サイト
→「妊娠しやすいカラダづくり」
http://www.akanbou.com/

▼妊カラ・男性不妊編
→「男性不妊 ~ ふたりで知っておきたいオトコのこと」
http://www.akanbou.com/dansei-funin/

▼お子さんを望まれるふたりのためのサプリメント
→「BABY&ME」
http://babyandme.jp/

▼ドコモ、au、ソフトバンク公式携帯サイト
→「おしえて!不妊ナビ」
http://funinavi.edia.ne.jp/index.html


編集後記____________________________________________________________

「不妊治療終結について考える」というテーマの記事を掲載して欲しいとい
う声が、年々、高まっています。

それだけ、この問題に悩んでいるカップルが増えているのだと思います。

当社には体外受精や顕微授精を経験した女性が何人かいますが、じずれもあ
りがたいことに、妊娠、出産して治療を終えています。

ですから、このテーマの記事を作成していくにあたり、日々、不妊治療終結
に悩む患者さんの診療にあたっているドクターやカウンセラーの先生、そし
て、治療終結に悩んでいるカップル、悩んでいたカップルの方々にご協力い
ただきしかありません。

ご感想やご意見、手記をお待ちしています。

暑い日が続きますが、くれぐれも体調を崩すようなことのないように、夏を
楽しまれますように!

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.580
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします
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不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整
理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出
来る限り客観的な視点で、お届けしています。
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://www.akanbou.com/
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◎発行部数
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・まぐまぐ: 4,210部
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