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VOL.700 性交は妊娠の方法に関わらず妊娠、出産に有利に働く可能性

2016年11月13日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.700 2016/11/13
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今週の内容__________________________________________________________

・更新情報
・トピックス:性交は妊娠の方法に関わらず妊娠、出産に有利に働く可能性
・イベント&セミナー情報
・当社製品&サービス
・編集後記


今月のトピックス Nov.2016__________________________________________

 性交は妊娠の方法に関わらず妊娠、出産に有利に働く可能性
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アメリカ生殖医学会は「Optimizing natural fertility (妊娠する力を最適化する)」という学会見解(a committee opinion)の2016年版を公開しました。
http://www.fertstert.org/article/S0015-0282(16)62849-2/fulltext

妊娠する力に最も影響を及ぼすのは「女性の年齢」で、その次が「性交回数」であるとして、妊娠希望の221組のカップルを対象に行われた性交回数と妊娠率の関係を調べた研究を紹介しています。

それは、毎日性交すると周期あたりの妊娠率が33%と最も高くなり、性交頻度が週に1回になると15%に低下するというものです。

性交回数が多いほど妊娠しやすくなるのです。

つまり、「性交には妊娠への障害を取り除く効果がある」というわけです。

ただし、このことは、皆さん、既にご存知のことでしょう。

今週、お伝えしたいのは、性交が妊娠率に影響するのは、自然妊娠だけでなく、たとえ、人工授精や体外受精、顕微授精を受けていても、同じことが言えるかもしれないということです。

そして、性交は、妊娠率だけでなく、妊娠、出産の合併症リスクの低下や胎児の健康にまで影響するかもしれないのです。


━ 精液は着床環境を免疫的に整えるスイッチをオンにする

オーストラリアとスペインで体外受精の移植日前後の性交と妊娠率を調べた研究があります(1)。

移植直後の性交は子宮の収縮を招き、着床の障害になったり、感染の原因になったりする可能性があることから、移植後の性交は控えたほうがよいという考え方があります。

ところが、その一方で、射精された精液が子宮や卵管などの女性の生殖器官に触れることで、女性側の着床環境が免疫的に整うことが動物実験でわかっています。

そもそも、女性にとって受精卵は「異物」であり、本来は免疫機能が働き、排除されるのですが、妊娠時には、不思議なことに「異物」を排除しないで、受け入れるように免疫が働きます。

そして、そのスイッチをオンにする役割が精液にあることが動物で確かめられているのです。

そこで、アデレード大学の研究グループは、人間にも同じようなメカニズムが働くのかもしれないと考え、478周期の体外受精の1343個の胚移植で、移植時期の性交の有無による治療成績を比較しました。

その結果、治療周期あたりの妊娠率には差はありませんでしたが、妊娠に至った胚の割合は移植時期に性交があったほうが高いことがわかりました。

もう1つ、性交や精液の注入と妊娠率の関係を調べたメタ解析(過去の複数の研究のデータを収集、統合し、統計的方法による解析)があります(2)。

トータルで7つの無作為比較対象試験(被験者総数2,204名)では、性交があった、もしくは、精液を注入したカップルのほうが妊娠の確率が23%高かったことがわかりました。

人間においても、精液は女性の生殖器官で着床に有利な免疫的働きを促すスイッチをオンにするのかもしれません。

━ 性交そのものが着床環境を免疫的に整えるように促す

インディアナ大学のキンゼイ研究所で、精液だけでなく、性行為そのものも免疫システムに影響を及ぼしているのではないかと考え、そのことを確かめた研究があります(3)。

30名の女性に、月経サイクル中の月経期、卵胞期、排卵期、黄体期の4回、唾液を提供してもらい、唾液中の生殖ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)や2種類のヘルパーT細胞(Th1、Th2)が放出するサイトカイン(IFN-γ、IL-4)を測定し、それぞれの値の月経サイクル内の変動と性交との関係を解析したものです。

その結果、性交のあった女性では、黄体期に妊娠に有利に働くサイトカインが優勢でしたが、性交のなかった女性ではみられませんでした。

結果はコンドームの使用の有無に影響を受けなかったことから、性交そのものが、月経周期中の免疫反応が妊娠に有利に働くのかもしれません。

━ 精液は妊娠合併症のリスクや胎児の健康にも影響するかもしれない

カップルの性的な関係のあった期間と妊娠後の子癇前症やSGA (子宮内発育遅延)との関係をニュージーランドとオーストラリアで調べた研究があります(4)。

2,507名の初産の妊婦を対象にパートナーとの性的な関係の期間と子癇前症やSGAの発症との関係を調べたところ、期間が短いカップルほど子癇前症やSGAの発症リスクが高いことがわかりました。

これは、女性の生殖器官がパートナーの精液に触れる頻度が高くなるほど、女性の生殖器官が妊娠合併症のリスク低減や子宮内の胎児の成育に有利な状態になることによるのではないかとしています。

性交は「妊娠しやすさ」だけでなく、「妊娠合併症のリスク低減」や「胎児の成長」にも有利に働くかもしれません。

━ 性交は妊娠の方法に関わらず妊娠、出産に有利に働くかもしれない

自然妊娠では性交回数が多くなるほど妊娠の確率が高くなるのは理屈抜きで理解できますが、人工授精や体外受精、顕微授精では、もはや、性交は不要と考えがちかもしれません。

ところが、私たちには、「膣内射精で精液が女性の生殖器官に触れること」や「性交そのもの」が女性の身体が妊娠や出産に有利に働くメカニズムが備わっている可能性が大きいことがわかりました。

であれば、たとえ、タイミング指導でも排卵期以外にも性交すること、そして、たとえ、生殖補助医療を受けていても性交することは「いいこと」になるわけです。

ただし、くれぐれも誤解しないでいただきたいのは、不妊治療を受けている場合、「性交」は妊娠、出産に有利に働くようですが、「性交」は必要条件ではありません。

つまり、ここでも、性交は「義務」ではないけれども、多少なりとも、妊娠、出産のサポートになるかもしれないということです。

それにしても、新しい命の誕生に際しての人間の身体のつくりの精巧さ、奥深さ、そして、神秘さに、驚かされるとともに、あらためて感動し、畏敬の念を抱かざるを得ません。

また、もしかしたら、セックスレスの妊娠へのマイナスの影響は私たちが想像している以上に大きいのかもしれません。

■文献
1)Hum Reprod. 2000; 15: 2653
2)Hum Reprod Update. 2015; 21: 275
3)Fertil Steril 2014;104:1513
4)J Reprod Immunol. 2009; 82: 66

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編集後記____________________________________________________________

性交の役割は、単に、精液を女性の生殖器官に送り込むことだけではなかったということが、今週のトピックスをまとめていて、よくわかりました。

同様に、精液の役割は、単に、精子を女性の生殖器官に送り込むころだけではなかったのですね。

それにしても、精液中に存在するさまざまな物質が女性の生殖器官にある物質と相互作用を起こし、女性の免疫を調整する遺伝子の発現をコントロールし、妊娠や出産に有利な状態に整えるよいうメカニズムがあると聞くと、新しい命の誕生のメカニズムの精巧さ、奥深さに、ただただ、驚かされるばかりです。

そう思うと、妊娠や出産を私たちの都合でコントロールできることなどあり得ないということも痛感します。

そんな精巧な命を与えてくれたことに感謝し、そして、新しい命の誕生を祈るだけですね。

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編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
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