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妊娠しやすいカラダづくり No.711 2017/1/29
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今週の内容__________________________________________________________
・今月のトピックス:全粒穀物を取り入れる
・当社製品&サービス
・編集後記
今月のトピックス Jan.2017___________________________________________
全粒穀物を取り入れる
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不妊治療を受けているカップルにとって、「食生活」は気になるテーマだと思います。
新しい命が成育するのに必要とされる栄養素は「食べて」摂取するわけですから、健康的な食生活が大切なことは言うまでもないことですが、知りたいのは、ずばり、「食事」は治療成績に影響するのかどうか、そして、もしも、影響するのであれば、どんな「食べ方」がいいのか、ということでしょう。
実際のところ、これまで、「食べ方」と体外受精や顕微授精の治療成績との関連を調べた研究は、いくつかあります。
そして、その結論は「食べ方」と治療成績は関連するというものです。
ただし、あくまで、関連するということを確かめたものであって、ある食べ方をすれば、治療成績が改善されることが確かめられているわけではありません。
つまり、現時点では治療成績を改善させるような食べ方があるかどうかはわかっていないけれども、悪くしない食べ方はあるというところでしょうか。
そもそも、現時点でどんな食生活を送っているのか、人、それぞれであり、体質も違います。その上、食べ方を変えても、身体の働きや体質に変化が出てくるまで、ある程度の期間が必要になります。さらには、栄養と妊娠力に影響するものはたくさんあって、かつ、入り組んでいるということもあって、誰にでもあてはまるようなことは言えないのが現実です。
そんな中でも、これまでの研究でわかっていることから、やってみる価値があることはいくつかあります。
今週は、その一つとして、「全粒穀物を取り入れる」ことをお勧めしたいと思います。
■生活習慣病の予防効果が最も確かめられている「地中海食」
生活習慣病の予防効果が最も確かめられているのは「地中海食」で、これまで、総死亡率をはじめ、循環器疾患や糖尿病、がん、そして、認知症などにかかりにくい食べ方であることが検証されています。
生殖医療の領域でも例外ではなく、多くの論文が発表されていて、地中海食と体外受精の治療成績の関連についての研究がオランダの大学病院で実施されています(1)。
161組の体外受精に臨むカップルを対象に食事調査を行い、食べ方の傾向を調べてみると、地中海食に近い食べ方をしているカップルほど、その後の妊娠率が良好であったことがわかっています。
このことから、不妊治療を受けるカップルにとっての「治療に有利な食べ方」として、「地中海食」は一つのモデルになりそうです。
それでは、地中海食とは具体的にはどんな食べ方なのでしょうか。
簡単に言えば、野菜や果物、豆類、ナッツ類、全粒穀物、魚、一価不飽和脂肪酸(オリーブオイル、キャノーラオイル、菜種油など)を多く食べ、獣肉や乳製品、アルコールはほどほどにするというものです。
これをみればわかるように、実は、地中海食と和食はとても似ています。
東大の佐々木教授は、これまでの研究から、昔ながらの和食を地中海食に近づける方法として、全粒穀物を取り入れ、野菜や果物を倍くらいに増やせばいいと結論づけています(2)。
このように、全粒穀物、野菜と果物が鍵になりそうです。
■全粒穀物の摂取量と体外受精の治療成績の関係
ハーバード大学では、関連病院のマサチューセッツ総合病院で体外受精を受けているカップルを対象に食事と治療成績の関連を調査する研究「EARTH研究」を行っています。
その中で、昨年、全粒穀物の摂取量と治療成績の関連についての臨床試験が行われ、治療開始前の1年間に全粒穀物をよく食べている女性ほど、体外受精の出産率が高かったことがわかっています(3)。
体外受精に臨む273名の女性を対象に、それまでの1年間の食事調査を行い、全粒穀物の摂取量とその後の427治療周期の治療成績との関連を解析しています。
その結果、全粒穀物の1日あたりの摂取量で4つのグループにわけたところ、全粒穀物の摂取量が多いほど女性ほど治療周期あたりの着床率や出産率が高く、摂取量が最も少なかったグループでの出産率が35%、最も多かったグループでは53%と、18%の差があったとのこと。
因みに、成熟卵数や胚質は全粒穀物の摂取量で違いがなかったのに対して、胚移植時の子宮内膜厚は摂取量が多いほど厚かったことから、子宮内膜の受容能の一つの目安である子宮内膜厚を介するものではないかとしています。
■全粒穀物を取り入れる
全粒穀物とは、無精製、あるいは、精製度の低い穀物のことで、たとえば、玄米や発芽米、ふすまを取っていない麦、全粒粉の小麦を使ったパンやパスタ、オートミール、挽きぐるみのソバなどです。
特徴は、食物繊維やビタミンB群、鉄分をはじめとしたミネラルが多いこと、また、食物繊維が多いことによって、ゆっくりと消化吸収されるため、血糖値を急激に上がることがなく、血糖値やインスリンレベルが安定することです。
これらは、いずれも卵子や精子の成育環境をよくすることに寄与し、そのことが良好な治療成績につながっていると考えられます。
そして、精製食品をできるだけ避けることも大切で、白米や白いパン、白い砂糖入りの食品や飲料は、特に、空腹時には摂らないように注意します。
また、大切なことは、全粒穀物を取り入れるのは「期間限定」ではなく、「習慣化」するということです。
期間限定であれば、「食べ方」の改善が身体の働きや体質の変化につながらないからです。
■不妊治療に有利になるだけでなく、将来の生活習慣病の予防にもなる
考えてみれば、不妊治療はいつかは終了します。
ところが、もしも、不妊治療を受けたことがきっかけになって、全粒穀物を取り入れることを「習慣化」すれば、その後の長い人生で、家族の生活習慣病にかかりにくい健康が手に入る確率が高くなります。
もしも、赤ちゃんが授かることができれば、赤ちゃんにとっての「食育」になるはずです。
何事も経験してみないとわからないものですが、食に対する意識も同じかもしれません。
◎文献
(1)Fertil Steril 2010; 94: 2096-2101.
(2)栄養データはこう読む!P.236(女子栄養大学出版部)
(3)Fertil Steril 2016; 105: 1503-1510
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編集後記____________________________________________________________
新しい年のはじまりに、いろいろと計画を立てていることと思いますが、授かるために、そして、健全な妊娠、出産のためには、やはり、「ちゃんと食べること」がベースになりますね。
食べるものは、私たちの身体にとっては、エネルギー源になり、また、身体を構成する材料になるからで、それらは、すべて、食べ物だけでまかなわれています。
なので、食べるものの質が悪いと、効率よくエネルギーがつくることが困難になり、また、身体そのものの質も劣化するようになるのは当然でしょう。
食べ物の質が自分たちの身体の質に直結するというわけです。
そして、新しい命は、100%、両親が食べたもので育まれます。
食材にこだわり、バランスよく、美味しくいただきたいものです。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.711
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編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
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