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妊娠しやすいカラダづくり No.713 2017/2/12
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今週の内容__________________________________________________________
・トピックス:冬に不足しやすいビタミンD
・当社製品&サービス
・編集後記
今月のトピックス Feb.2017___________________________________________
冬に不足しやすいビタミンD
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妊娠中の女性のビタミンD不足は早産のリスクを高め、ビタミンDのサプリメントは早産リスクを低下させるかもしれないというメタ解析(同じテーマの複数の論文のデータを収集、統合して、解析したもの)が発表されました(1)。
これまでも、妊婦のビタミンD欠乏は早産だけでなく、子癇前症や妊娠糖尿病、SGA(子宮内発育遅延)の原因になるという研究報告が多数なされています。
要するに、ビタミンDは胎児の正常な成育に関わっているということです。
ビタミンDは、細胞内に存在するビタミンD受容体に結合し、遺伝子発現を介して作用するのですが、そのビタミンD受容体は、卵巣や卵子の周囲を取り巻く細胞(顆粒膜細胞)、子宮、胎盤に存在することが確かめれています。
つまり、ビタミンDは、胎児の成育だけでなく、その前や前の前の段階、すなわち、卵胞の発育や胚の形成、着床にも関与していることがわかります。
実際に、ビタミンDは、体外受精の治療成績や着床環境、PCOS女性の排卵障害、子宮筋腫、子宮内膜症に関連するという研究報告も多くなされています。
このようにビタミンDは、妊娠、出産を「縁の下の力持ち」的存在で支えているのですが、ビタミンDは、食品からも摂っていますが、主には、紫外線を浴びることで体内でつくられています。
そのため、紫外線を避ける女性は不足しやすいのですが、特に、日照時間の短い冬に不足しやすいと言われています。
■45万人の出生児を対象にしたイギリスの研究(2)
イギリスのケンブリッジ大学の研究グループは、45万人の出生児を対象に出生季節と出生時体重や初経年齢(女児)、成人後の身長とBMIの関係を調べています。
その結果、出生時体重や初経年齢、成人後の身長は出生季節と有意に関連し、夏(6〜8月)に生まれた子どもはその他の季節に生まれた子どもに比べて、出生時体重が重く、女児の初経年齢が高く、成人後の身長が高かったと言います。また、2月に生まれた子どもは9月に生まれた子どもに比べて低出生体重児の割合が有意に高いこともわかりました。
そして、それらは、英語で言うところのsecond trimester、すなわち、妊娠の第2三半期(妊娠14週~27週6日)の日照時間に関連していたというのです。
これのことから、さまざまな要因が胎児の成育に関係しているものの、母体の子宮内のビタミンD濃度が最も影響すると結論づけています。
■1万周期の体外受精治療成績を対象にしたベルギーの研究(3)
ベルギーのゲント大学の研究グループは、大学病院で体外受精を受けた患者4259名の新鮮胚移植9865周期の治療成績と治療(卵巣刺激)開始前1ヶ月間の天候との関係を調べています。
その結果、治療開始前1ヶ月間の日照時間や降雨日数と出産率が関連し、日照時間が長いほど、降雨日数が少ないほど周期あたりの出産率が有意に良好だったとのこと。
このことから、治療開始1ヶ月前の天候は体外受精の出産率に影響を及ぼしたと結論づけています。
研究グループは、考えられるメカニズムとして、メラトニンとビタミンDの関与を挙げています。
■ビタミンD濃度の目安と不足について
ビタミンDが不足しているかどうかは、血中の25(OH)D濃度を指標としています。目安は30〜50 ng/mLです。
ビタミンDは、1日に30分程度、週に2,3回、日光に当たっていれば不足することはないとされていますが、あくまで紫外線防止しないことが前提です。
日本人女性の半数以上はビタミンDが不足しているとの調査報告がありますが、それは、日焼け止めの使用などによって紫外線を避けるライフスタイルの影響が大きいのではないかと専門家の間で考えられています。
国立環境研究所と東京家政大学の研究チームは、健康な生活を送るのに必要不可欠な成人の1日の量をつくるのに必要な日光浴の時間を日本の3地点(札幌、つくば、那覇)で調べています(4)。
その結果、両手と顔を晴天日の太陽光に露出したと仮定した場合、紫外線の弱い冬の12月の正午では那覇で8分、つくばでは22分、そして、緯度の高い札幌では76分の日光浴が必要であることがわかったとのことです。
■ビタミンDを効率よく摂取するために
ビタミンDを効率よく摂取するには、まず紫外線対策をせずに日光にあたるのが望ましいのですが、女性にとっては難しいかもしれません。
まずは、毎日の食事でキノコ類や魚を意識して食べるようにすること、その上で、サプリメントで補うのが確実です。
その場合、ビタミンDは、毎日15~25μgを補充することで必要とされる血中濃度は確実に保たれるとの試験結果があります。
最近、ビタミンD濃度の指標とされている血中の25(OH)Dを測定し、低値の場合にはサプリメントで補充することを推奨する不妊治療クリニックが増えていますが、まだまだ、一部のようです。
医療機関での測定が難しい場合は、1日に25〜50マイクログラムであれば、自己判断でビタミンDのサプリメントを摂取しても(過剰摂取の)問題はありません。
また、ビタミンDのサプリメントを摂取する場合でも、空腹時や朝食、昼食後に摂取するよりも、夕食後に摂取するほうが体内に吸収される割合が最も大きくなるとの研究報告があります(5)。
アメリカのクリーブランドクリニックでビタミンDサプリメントを摂取する患者を対象に朝食や昼食後の摂取から夕食後の摂取に切り替えてもらったとこと血中濃度が平均57%も増加したと言います。
せっかくサプリメントで補充するのであれば飲み方にも気をつけたほうがよさそうです。
◎文献
1)J Obstet Gynecol Res. 2017; 43: 247-256
2)Heliyon 2015.e00031
3)Facts Views Vis Obgyn 2016; 8: 75-83
4)J Nutri Sci Vitaminol. 2013; 59: 257-263
5)J Bone Mineral Research 2010; 25: 928-930
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編集後記____________________________________________________________
寒い日が続きますが、こんな時には、根菜を意識して食べたいですね。根野菜は、土中のミネラル分をはじめとした、さまざまな成分を、自らを守るために蓄えているからです。
であれば、根の野菜に蓄えられた養分ををいただかない手はありません。まさに、自然の厳しさには、自然の恵みで、身を守るというわけです。
ごぼう、にんじん、だいこん、山芋等々。毎朝、お味噌汁か、スープにすると、たくさん取れます。
しょうがやネギなどを添えれば、尚、いいですね。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.713
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