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VOL.714 たとえ男性パートナーの精液検査に問題がなくても

2017年02月19日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.714 2017/2/19
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今週の内容__________________________________________________________

・更新情報
・最新ニュース解説:たとえ男性パートナーの精液検査に問題がなくても
・当社製品&サービス
・編集後記


更新情報____________________________________________________________

サイト版「妊娠しやすいカラダづくり」の更新情報です。
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2017年2月18日 曇り時々雨、のち晴れますように
双子
http://www.akanbou.com/column/reproductivecounseling/20170218.html
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2017年2月5日 編集長コラム
自分の身体や生活を知ることからはじめるべき
http://www.akanbou.com/column/henshuuchou/20170206.html
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記事についてのご質問は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
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最新ニュース解説 Feb.2017___________________________________________

 たとえ男性パートナーの精液検査に問題がなくても
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体外受精や顕微授精に臨むカップルの男性パートナーのカフェインやアルコールの摂取量は、精液所見とは関連しなかったけれども、治療成績とは関連したという研究結果が発表されました。アメリカのハーバード大学とその関連病院のマサチューセッツ総合病院の共同チームによる研究(EARTH Study)です。

この研究結果は、ART治療開始前の男性パートナーのカフェインやアルコールの摂取量が治療成績になんらかの影響を及ぼしている可能性があるということ、そして、精液所見、すなわち、精子の数や運動率は、必ずしも、男性の妊娠させる力を正確に反映していない可能性があることを示しています。

もしも、そうであれば、ART治療に臨むカップルの男性パートナーにとっては、たとえ、精液検査に問題がなくても、健康なライフスタイルを心がけるに越したことはないのかもしれません。

まさに、不妊治療は「ふたりで取り組む」ことが大切だというわけです。

■不妊カップルの男性パートナーのカフェインやアルコール摂取と精液所見や治療成績

これまで、男性のカフェインやアルコール摂取量と精液所見との関係については、多くの研究が行われています。

ところが、それらの結果は関連するというものもあれば、関連しないというものもあり、一貫性がありません。

そこで、EARTH Studyでは、男性のカフェインやアルコールの摂取量と精液所見の関連だけでなく、その先の治療成績の関連まで調べようということになったとのこと。

ART治療に臨むカップルの男性パートナー171名に治療開始前に、過去1年間の食習慣について質問票に回答してもらい、1日あたりのカフェインやアルコールの摂取量を調べ、摂取量で4つのグループに分け、被験者の338の精液検査結果とその後のカップルの205周期の治療成績との関連を調べました。

その結果、カフェインやアルコールの摂取量と精液所見は関連しませんでした。

一方、治療成績とは関連し、男性パートナーがカフェインを多く摂っているカップルほど着床率や妊娠率、出産率が有意に低いことがわかりました。

どれくらいだったかと言いいますと、男性パートナーのカフェイン摂取量が最も多かったグループ(≧272mg/day)のカップルと最も少なかったグループ(<99mg/day)のカップルの調整後の出産率は、それぞれ、19%、55%でした。

その反対に、男性パートナーがアルコールを多く摂っているカップルほど着床率や妊娠率、出産率が有意に高く、男性パートナーのアルコール摂取量が最も多かったグループ(≧22g/day)のカップルと最も少なかったグループ(<3g/day)のカップルの調整後の出産率は、それぞれ、61%、28%だったとのこと。

■アルコール摂取の影響について

カフェインの摂取はART成績にマイナスの影響を及ぼし、反対に、アルコール摂取はよい影響を及ぼすかもしれないというわけです。

さて、この結果をどのように受け止めればいいのでしょうか。コーヒーはやめ、アルコールを積極的に飲むべきなのでしょうか。

まずは、それぞれの摂取量をチェックしてみましょう。

アルコールのほうは、全体の中央値は9.9g、その79%はビールからでした。

摂取量でわけた4グループの1日の平均摂取量を少ないほうから順にみてみると、最も少なかったグループ(<3g/day)で1.3g、次のグループ(3-9.9g/day)は7.1g、その次のグループ(10-18.9g)は14.1g、そして、最も多かったグループ(≧19g)では37.4gでした。

それぞれのアルコール量は、実際、どのくらいの飲酒量になるのでしょうか。

中央値の9.9gでビールに換算すれば小ビンの70%の量だそうです。因みに、このレベルはアメリカ人全体の半分くらいだそうです。要するに、この試験の被験者カップルの男性はアメリカ人にしてはあまり飲まないということになります。

さて、摂取量の上位2つのグループの平均は、14.1g、37.4gで、それぞれ、ビール小ビン1本、ビール中ビン2本弱です。

治療成績が比較的良好であったグループの摂取量はこのレベルです。

体外受精や顕微授精に臨むカップルの男性パートナーにとって、アルコールについて言えることは、それほど気にする必要はないということになります。

アルコールの代謝、すなわち、お酒に強い弱いは人種的な差が大きいとされていますので、一概には言えないということを認識しておく必要はあると思いますが。

そもそも、これまでの研究では、男性パートナーのアルコール摂取量とART治療成績についても一貫性に欠ける結果が報告されています。

そのため、今回、男性パートナーのアルコール摂取量が多いほど治療成績がよかったという結果が報告されていますが、普段、飲まない、あるいは、飲めない男性が無理して飲む必要はありませんし、飲酒の習慣のある男性のほうは、毎日、ビール中びん1本程度であればそれほど気にする必要はないということが言えると思います。

■カフェイン摂取量の影響について

カフェイン摂取量の全体の中央値は161mg、その87%はコーヒーからでした。

摂取量でわけた4グループの1日の平均摂取量を少ないほうから順にみてみると、最も少なかったグループ(<99mg/day)で29.4mg、次のグループ(67-160.9mg/day)は115.1g、その次のグループ(161-271.9mg)は232.4g、そして、最も多かったグループ(≧272mg)では361.3mgでした。

公益財団法人日本中毒情報センターのによると、コーヒー1杯で100〜150mgとのことです。そして、今回のデータでは摂取量下位の2グループの治療成績はほぼ同じレベルで、それ以降、急激に低下しています。

つまり、カフェインの1日の摂取量が232.4g、361.3mgというレベルで、コーヒーに換算すれば2、3杯以上ということになります。

男性パートナーのカフェイン摂取量がART成績にマイナスの影響を及ぼすという研究報告はこれまでも一貫しています。

コーヒー3杯以上(カフェイン300mg以上)飲むと精子DNA損傷率上昇のリスクが高くなるという報告(2)、また、男性パートナーのカフェイン摂取量と流産のリスクが相関したという報告(3)もあります。

これらが、カフェインの摂取量が増えると精子濃度や運動率に関係なく、出産率が低下することのメカニズムなのかもしれません。

そのため、男性パートナーはカフェインの摂取量については注意したほうがよいかもしれません。
カフェインというとコーヒーを連想しますが、最近は栄養ドリンクに含まれていることがよくあるようです。

■ふたりで取り組む不妊治療

不妊原因の半分は男性側にあると言われていますが、男性の検査は、現在のところ、精液検査のみです。

ところが、たとえ、精液検査の結果に問題がなくても、パートナーの治療成績にマイナスの影響を及ぼす可能性があるとなれば、不妊原因が女性だけにあるからと言って、また、精液検査に問題がなかったからと言って、男性は関係ないとは、全く、言えなくなってしまいます。

ART治療に臨むカップルの治療前からの食生活やライフスタイルが治療成績になんらかの影響を及ぼすというデータが、徐々に、蓄積されています。

まさに、不妊治療は「ふたりで取り組む」べきものだということになります。

◎文献
1)Andrology. 2017 Feb 10. [Epub ahead of print]
2)Hum Retrod. 2007; 22: 180.
3)Fertil Steril 2016; 106: 180

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編集後記____________________________________________________________

よく、「やはり、オーガニックにこだわったほうがよいのでしょうか?」と質問されます。

本当のことはわかりませんが、やはり、安全で安心できる食材を選ぶに越したことはないでしょう。

ただし、毎日のことで、経済的なことが伴いますので、優先順位をつけることが大切なのかもしれません。

お米と油、調味料のように、毎日、必ず、食べるもので、食のベースになるものを優先したほうがよいということは言えます。

身体への影響力が高いですからね。お米と油、そして、調味料は、よく吟味して、質が高く、納得のいくものを揃えたいものです。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]    VOL.714
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
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