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VOL.737 ヨーロッパ生殖医学会ダイジェスト(3)

2017年07月30日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.737 2017/7/30
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今週の内容__________________________________________________________

・更新情報
・今週の必読記事:精液検査で精子の質はわかりますか?
・トピックス:ヨーロッパ生殖医学会ダイジェスト(3)
・当社製品&サービス
・編集後記


今週の必読記事______________________________________________________

 精液検査で精子の質はわかりますか?
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精液検査では、精液量や精子数、精子運動率、正常形態精子率が測定されます。精子の数が少なかったり、運動率が低かったり、正常な形態の精子が少なかったりすると自然妊娠しにくくなるからです。

ただし、不妊治療に臨む女性の年齢が高くなり、1回あたりの治療成績が低く、治療が長期化する傾向にある中で、精子の質を測定することの重要性が高まっています。精子の質が人工授精や体外受精、顕微授精の成績を左右することがわかってきたからです。

精子の質を反映しているのが精子DNA断片化率(DNA Fragmentation Index: DFI)です。

▼記事はこちらから。
http://maleinfertility.jp/blog/?p=2024


トピックス Jul.2017_________________________________________________

 ヨーロッ生殖医学会ダイジェスト(3)
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7月2日から5日までスイスのジュネーブで開催された第34回ヨーロッパ生殖医学会で口頭やポスターで発表された研究内容の要約の中から食事(栄養)と生殖機能との関連研究をピックアップしてご紹介しています。

3回目のテーマは男性不妊です。

抗酸化物質をたくさん摂れるような食事は良好な精子の質や体外受精や顕微授精の良好な治療成績と関連する、また、原因不明で精液所見が基準を下回っている場合、特に、精索静脈瘤があったり、精子DNA損傷率が高いような場合では抗酸化サプリメントが有効であるという研究報告がなされています。

■食事パターンの精子の質やART治療成績への影響

スペインのバレンシア大学付属病院の研究チームは、地中海食のように抗酸化物質を豊富に摂取できる食事パターンは良好な精液所見やパートナーの良好な治療成績に関連することを示しました。

大学病院で不妊治療を受けているカップルの男性パートナー196名(正常精子:28名、精子無力症:73名、乏精子症+精子無力症:62名、乏精子症+精子無力症+奇形精子症:33名)の男性に食事摂取頻度調査票で食品の摂取量や頻度について回答してもらい、食事パターンや栄養素の摂取状況を算出し、精液所見やパートナーの治療成績との関連を調べました。

その結果、野菜や果物、シリアル、オメガ3やオメガ6脂肪酸などの植物油をよく食べる男性ほど精子濃度や総運動精子数、前進運動率が有意に良好であった一方、飽和脂肪酸をよく食べる男性ほど精子濃度や総運動精子数が有意に低いことがわかりました。

また、セレンやオメガ3やオメガ6脂肪酸をよく食べる男性ほど精子正常形態率が有意に高く、セレンやオメガ3脂肪酸の摂取量で3つのグループにわけたところ、セレンを最も多く摂取していた男性は最も少なかった男性に比べて精子正常形態率が1.4%、オメガ3脂肪酸を最も多く摂っていた男性が最も少なかった男性に比べて精子正常形態率が3.2%高いことがわかりました。

そして、地中海食(全粒穀物、野菜、果物をよく食べる)に近い食べ方の男性ほどパートナーの女性の妊娠率が有意に高いことがわかりました。

この研究で注目すべきは男性の食事摂取状況とそのパートナーの治療成績の関連を調べ、男性の地中海食に近い食べ方とパートナーの女性の良好な妊娠率が有意に関連したということです。

もちろん、カップルの食事パターンは似ていると考えられることから、カップルの食事パターンが地中海食に近いことと良好な妊娠率が関連するとも言えるのかもしれません。

■精索静脈瘤のあるOAT症候群の男性と精索静脈瘤のないOAT症候群の男性への抗酸化サプリメントの有効性:二重盲検無作為化比較対照試験

イタリアのローマ・ラ・サピエンツァ大学の研究者らは、OAT症候群(精子濃度、精子運動率、正常精子形態率が全て基準値を下回る)の男性に対する抗酸化サプリメントは有効、かつ、安全な治療法であり、効果は精索静脈瘤のあるOAT症候群の男性のほうが大きいことを示しました。

OAT症候群の男性不妊患者104名(その内精索静脈瘤のある男性が52名)を無作為にサプリメント摂取群とプラセボ(偽薬)群に分け、6ヶ月間、抗酸化サプリメント(L-カルニチン、アセチル-L-カルニチン、フルクトース、クエン酸、セレン、コエンザイムQ10、ビタミンC、ビタミンB12、亜鉛の合剤)とプラセボを、それぞれ、飲んでもらい、摂取前後の精液所見を比較しました。

その結果は以下の通りでした。

◎精子濃度
◯精索静脈瘤あり
・サプリメント群:49.4±18.9百万/mL
・プラセボ群  :39.3±16.8百万/mL
◯精索静脈瘤なし
・サプリメント群:52.3±9.1百万/mL
・プラセボ群  :47.5±7.9百万/mL
精索静脈瘤ありの変化率は26.7%だったのに対して精索静脈瘤なしでは9.9%でした。

◎総運動精子数
◯精索静脈瘤あり
・サプリメント群:38.3±8.0百万/mL
・プラセボ群  :33.9±6.9百万/mL
◯精索静脈瘤なし
・サプリメント群:39.9±8.0百万/mL
・プラセボ群  :35.0±7.5百万/mL
精索静脈瘤ありの変化率は18.6%だったのに対して精索静脈瘤なしでは13.8%でした。

◎前進運動率
◯精索静脈瘤あり
・サプリメント群:27.4±7.9百万/mL
・プラセボ群  :23.1±6.7百万/mL
◯精索静脈瘤なし
・サプリメント群:29.7±9.1百万/mL
・プラセボ群  :25.1±7.0百万/mL
精索静脈瘤ありの変化率は18.6%だったのに対して精索静脈瘤なしでは18.6%でした。

このように精索静脈瘤のあるなしに関わらず、6ヶ月間の抗酸化サプリメントはOAT症候群の男性の精液所見を有意に改善しましたが、その効果は精索静脈瘤のある男性のほうが大きいことがわかりました。

精索静脈瘤の程度によりますが、時間的に半年間かけてでも男性の精子の状態の改善に取り組みたいという考えであれば、抗酸化サプリメントは安全で、有効な方法になり得ることが示されました。

■原因不明の男性不妊で精子DNA損傷率が高いケースでは抗酸化サプリメントで治療成績の改善が期待できるかもしれない

インドのコルカタのIRM(Institute of Reproductive Medicine)の研究者らは、原因不明の男性不妊で精子DNA損傷率が高いケースでは抗酸化サプリメントがICSIの治療成績の改善につながる可能性を示しました。

原因不明の男性不妊患者でこれまで少なくとも2周期の妊娠に至らなかった、もしくは、流産に終わった治療周期を経験し、女性パートナーが38歳以下で不妊原因のない162名を、酸化ストレスや精子DNA損傷率が正常なグループ(グループA:104名)と高い(精子DNA損傷率≧25%)グループ(グループB:58名)に分け、6ヶ月間、抗酸化サプリメント(ビタミンC、リコピン、亜鉛、セレン、葉酸、ビタミンB12他の合剤)を飲んでもらい、ICSIに臨み、摂取前後の精液所見や治療成績を比較しました。

148周期の顕微授精が実施され、110周期の新鮮胚移植と38周期の凍結融解胚移植が行われました。

その結果は以下の通りでした。

◎グループA(精子DNA損傷率< 25%)
・精子濃度:29.5±7.96 vs. 54.65±11.05 有意差なし
・運動率 :15.8±3.13 vs. 28.60±4.37 有意差あり
・酸化ストレス:32107.15±9623.53 vs. 31257.0±9240.0 有意差なし
・抗酸化作用:1164.20±99.76 vs. 2010.65±116.30 有意差あり
・精子DNA損傷率:24.40±2.82 vs. 21.75±2.39 有意差なし

◎グループB(精子DNA損傷率≧25%)
・精子濃度:18.40±3.15 vs. 46.70±5.65 有意差あり
・運動率 :19.20±2.80 vs. 35.50±4.35 有意差あり
・酸化ストレス:72330.50±9124.45 vs. 41230.65±6245.10 有意差あり
・抗酸化作用:1144.50±134.45 vs. 1640.75±175.60 有意差あり
・精子DNA損傷率:29.45±2.55 vs. 20.30±2.24 有意差あり

◯妊娠率
・グループA:30.76%
・グループB:48.27% 有意差あり

◯出産率
・グループA:9.37%
・グループB:32.14% 有意差あり

大変興味深い結果です。原因不明で精子濃度や運動率、正常精子形態率が基準値を下回る男性不妊患者でも、酸化ストレスが高く、精子DNA損傷率が高い場合には、抗酸化サプリメントの有効性が高くなることが示されました。

■まとめとして

男性不妊の多くは、原因不明のOAT症候群であるため、エビデンスのある治療法がないため、女性に対して顕微授精を施すことになります。

ただし、精索静脈瘤があったり、精子DNA損傷率が高い(25%以上)場合には、抗酸化サプリメントを6ヶ月間、摂取することで精子の質の改善だけでなく、その後の顕微授精の治療成績も改善が期待できることが示されました。

その場合、女性への治療が顕微授精から体外受精、体外受精から人工授精、人工授精から自然妊娠へと、ステップダウンが期待できるかもしれません。

カップルで精製度の低い主食、野菜や果物、豆類、魚中心の食生活を心がけることも大切です。

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・サプリメント:BABY&ME~新しい命のための環境づくり
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・翻訳書:妊娠しやすい食生活
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・妊娠しやすいカラダづくり BOOK GUIDE
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編集後記____________________________________________________________

夏は高温多湿なために体力が消耗してしまいがちで、食欲もなくなるため、栄養補給をしにくくなります。また、食事も素麺やうどんなどのあっさりしたもの(炭水化物)ばかりに偏り、栄養がアンバランスになりがちです。その上に熱帯夜が続くととても寝苦しく、睡眠不足に陥ります。さらに、汗をかくと、汗とともにミネラルも消失します。

そこで、夏バテ対策としては、まずは、ビタミンB群をしっかると摂ること。夏を乗り切るエネルギーを生産するためです。特にビタミンB1が不可欠ですが、あっさりしたものばかりを食べていると、肉に多く含まれているビタミンB1が不足し、エネルギーが作りづらくなってしまいます。

ビタミンB1は、特に豚肉に多く含まれています。 その他の食材では、豆腐、ゴマ、枝豆、落花生、ハム、ウナギの蒲焼に多く含まれています。

ミネラルの補給も欠かせません。夏の暑さによって体温が上昇し、熱放散の必要が増すと、私たちは汗をかき、水分蒸発を盛んにして体温を下げています。汗はそのほとんどが水分ですが、塩化ナトリウムが約0.6%含まれています。

また、塩化ナトリウム以外にも、わずかにカリウムやマグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛などのミネラルが含まれています。

私たちは、何もしないでいても1日0.5リットルの汗をかき、夏や運動をした際には、1~1.5リットルもの汗をかくとも言われています。ミネラルの不足は、体の各所の代謝障害を引き起こし、夏バテに多い「だるい」「疲れやすい」といった症状を引き起こします。

こう毎日暑いと食欲もなくなりがちですが、夏バテを防ぐためにも、バランスの良い食事をより意識することが大切です。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]    VOL.736
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編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
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