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VOL.752 オメガ3系脂肪酸と体外受精治療成績の関係

2017年11月12日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.752 2017/11/12
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今週の内容__________________________________________________________

・更新情報
・最新ニュース解説: オメガ3系脂肪酸と体外受精治療成績の関係
・イベント&セミナー情報
・当社製品&サービス
・編集後記


更新情報____________________________________________________________

サイト版「妊娠しやすいカラダづくり」の更新情報です。
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2017年11月06日 編集長コラム
残留農薬対策を考える
http://www.akanbou.com/column/henshuuchou/20171106.html
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2017年11月06日 曇り時々雨、のち晴れますように
本の紹介とお知らせ
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最新ニュース解説 Nov.2017__________________________________________

 オメガ3系脂肪酸と体外受精治療成績の関係
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アメリカのハーバード大学では2004年から「EARTH (Environment And Reproductive Health) Study」という研究が、現在進行形で行われています。環境中の化学物質や生活習慣、特に、食事が妊娠する力にどのような影響を及ぼすのかを調査することを目的としています。

具体的には、大学の関連病院であるマサチューセッツ総合病院で体外受精や顕微授精を受けているカップルを対象として、どんな食事をしているのか調査し、栄養素の摂取状況を算出したり、血液や尿中の化学物質や栄養素の濃度を測定したりして、それらが治療成績とどのように関連するのかを調べています。

これまで100本以上の論文が発表されていますが、食事(栄養)と体外受精の治療成績の関連についての研究は、ほとんどEARTH Studyによるものと言っても過言ではありません。

そのEARTH Studyの最新の研究報告(1)が11月10日に公開されました。テーマは必須脂肪酸と体外受精や顕微授精の治療成績との関連についてです。

必須脂肪酸というのは、体内でつくられないため食事からとる必要のある脂肪酸のことで、多価不飽和脂肪酸と呼ばれていて、オメガ6系脂肪酸とオメガ3系脂肪酸があります。

■オメガ6系脂肪酸とオメガ3系脂肪酸と体外受精治療成績の関係

EARTH Studyに登録した女性232名からランダムに100名を選び、治療周期3日目から9日目に血中のオメガ6系脂肪酸とオメガ3系脂肪酸を測定し、その後1年間の136周期との治療成績との関連を調べています。

その結果、血中のオメガ3系脂肪酸のDHAやEPA濃度が高いほど妊娠率や出産率が高く、DHAやEPA濃度が1%上昇するごとに妊娠率や出産率は、どちらも8%増加したというのです。上昇効果はEPAのほうが大きく、EPA濃度が1%上昇するごとに妊娠率は10%、出産率は15%、それぞれ増加したとのこと。

その一方で、オメガ6系脂肪酸やトータルの必須脂肪酸濃度、さらには、オメガ6とオメガ3の比率については、いずれも治療成績に関連しませんでした。

もう1つ、体外受精に臨む女性168名に治療開始前に食物摂取頻度調査票を使って食事やサプリメントからのオメガ6系脂肪酸とオメガ3系脂肪酸の摂取量を算出し、その後1年間の297治療周期との関連を調べています。

食事やサプリメントからの摂取量でもDHAやEPAの摂取量が多いほど治療成績が高いことがわかりました。たとえば、総エネルギー摂取の1%の飽和脂肪酸をDHAやEPAに変えることは2.37倍の出産率と関連しました。

■DHA・EPAの供給源は魚

食事やサプリメントから必須脂肪酸の摂取量を算出した結果をみると、DHAやEPAは約60%は魚、約25%は魚油のサプリメント、魚以外の魚介類から約5%、鶏肉や卵から4%という割合で摂取していて、その供給源は主に魚であることがわかります。

オメガ6系脂肪酸やオメガ3系脂肪酸は必須脂肪酸であり、体内でつくることが出来ないので食事から摂るしかないことは既に述べた通りです。

つまり、食事内容で必須脂肪酸の摂取量が決まるというわけです。

肉はよく食べるけれども、魚はあまり食べない食生活だと、オメガ3系脂肪酸が不足する可能性が、相当に、高くなります。

体外受精の治療成績に有利な食事を考えるとすれば、魚を積極的に食べることは必須になるのかもしれません。

EPAはイワシやサバに、DHAはアジやカツオ、マグロに豊富です。

今回の研究ではEPAがより治療成績にプラスの影響を及ぼしているという結果でしたので、イワシやサバの缶詰は常用しておくのがよいかもしれません。

■全体のバランスが大切

魚をあまり食べないという方は、もちろん、積極的に食べたほうがよいと思いますが、難しい場合は、サプリメントを利用するのがいいと思います。

ただし、その場合でも、もしも、肉中心で魚をあまり食べないという方は、単にオメガ3系脂肪酸のサプリメントを補充するだけでなく、肉を減らすことも大切です。

なぜなら、肉に含まれる脂肪酸は主に飽和脂肪酸で、今回の研究では総エネルギーの1%の飽和脂肪酸をDHAやEPAに変えることで治療成績の向上に関連することがわかったからです。

つまり、DHAやEPAを増やしさえすればよいというわけではなく、全体のバランスも大切だということでしょう。

また、今回の研究はアメリカ人女性を対象にしたもので、日本人とは食生活や体格、人種が違います。

たとえば、アメリカやカナダ人、デンマーク人の妊娠希望の女性を対象にした脂肪酸と自然妊娠の妊娠率(妊娠する迄にかかった期間)の関係を調べた研究(2)があります。

とても興味深い結果で、トランス脂肪酸の摂取量で4グループに分けたところ、アメリカ人やカナダ人ではトランス脂肪酸の摂取量が一番多い女性は一番少ない女性に比べて妊娠率が低かったのに対して、デンマーク人では変わらなかったというのです。また、オメガ3脂肪酸でもアメリカ人やカナダ人は一番低い摂取量の女性は一番多い女性に比べて妊娠率が低かったのに対して、デンマーク人女性では変わらなかったとのこと。

なせ研究結果に違いが出るのかは、それぞれの脂肪酸の摂取量を比べてみると理解できます。トランス脂肪酸の摂取量の総エネルギーに対する平均の割合は北米では1.62%であるのに対してデンマークでは0.60%、オメガ3系脂肪酸は北米では0.87%であるのに対してデンマークでは1.07%たったのです。

つまり、アメリカ人やカナダ人は、普段からトランス脂肪酸をたくさん摂取し、オメガ3系脂肪酸はあまり摂っていなくて、デンマーク人はトランス脂肪酸はあまり摂っていなくて、オメガ3系脂肪酸はたくさん摂っているのです。

そのため、トランス脂肪酸は妊娠にはマイナスに、オメガ3系脂肪酸はプラスに働くと言われていますが、その影響があらわれたのはアメリカ人やカナダ人だけだったというわけです。

■栄養素の働きを理解し満遍なく食べる

私たちは栄養素を食べているわけではなく、食べ物を食べて、そこから栄養素を摂り入れています。

そのため、結局は食べ方によって、摂り入れる栄養素の量やバランスが決まります。

いろいろな研究結果をもとにさまざまな情報や意見がありますが、質の高い研究結果でさえ、そのまま受け取るわけにはいかないところに、「食」の情報の難しさがあります。

そのため、いろいろな情報やアドバイスに接しても、慌てることなく、栄養素の働きを知ったうえで、新鮮な食材を調理し、満遍なく、食べることが大切だと思います。

◎文献)
1)Hum Reprod. Advance articles published:10 November 2017
2)Am J Epidemiol. Epub ahead of print 8 Jun 2017

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編集後記____________________________________________________________

気持ちのよい秋晴れですね。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]    VOL.752
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編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
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