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妊娠しやすいカラダづくり No.795 2018/9/9
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今週の内容__________________________________________________________
・更新情報
・今月のトピックス:食と妊娠する力(1) 炭水化物
・イベント&セミナー情報
・当社製品&サービス
・編集後記
今月のトピックス Sep. 2018_________________________________________
食と妊娠する力(1)炭水化物
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アメリカ生殖医学会誌「Fertility and Sterility」の9月号の特集(VIEWS AND REVIEWS)は栄養、すなわち、食事やサプリメントの生殖機能への影響がテーマです。
https://www.fertstert.org/current
編者はハーバード大学のジョージ・チャバロ先生で、2013年に先生の著書「Fertility Diet」を翻訳し、「妊娠しやすい食生活」として出版するというご縁をいただいて以来、なにかと助言いただいているこの分野の世界の第一人者です。
http://www.akanbou.com/doctor/interview17/
そこで、テーマごとのダイジェストをお送りしたいと思います。
まずは、「炭水化物」からです。
■精製度が高くなるほど質が低くなる
炭水化物の質と量は血糖値の安定性やインスリンの感受性(効き目)に影響します。
具体的に言えば、質の低い炭水化物、すなわち、精製度が高く、すみやかに吸収される炭水化物は食べた後に血糖値を急上昇を招きます。
そして、そのような質の低い炭水化物を多く食べることは、血糖値を不安定にし、インスリンの感度を低くするおそれが大きくなり、そのことは卵巣での男性ホルモンの産生を増やし、卵巣機能が低下するリスクが高くなります。
炭水化物の質の指標として、グリセミック指数(GI)とグリセミック負荷(GL)があります。
GIは糖質の吸収されやすさ、GLは食べた後の血糖値の上がりやすさをあらわします。精製度が高くなるほど吸収が早くなり、食後の血糖値が上がりやすくなるので、GIやGLが高い炭水化物ほど質が低くなります。
■精製度の高い炭水化物の摂取量と生殖機能
約2万人の女性看護師を8年間追跡した大規模な疫学研究である「看護師健康調査Ⅱ」で、GLの高い炭水化物の摂取量が多い女性ほど排卵障害の不妊症になりやすいことがわかりました。
また、別の研究では、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の女性は、そうでない女性に比べてGLの高い炭水化物の摂取量が多いことが明らかにされています。
そして、PCOSの女性は、炭水化物の摂取量を減らすとインスリンの効き目がよくなり、男性ホルモンのレベルが低下し、卵巣機能が改善されることがわかっています。
その一方で、月経サイクルが正常で健康な女性では炭水化物の摂取量は男性ホルモンや生殖ホルモンレベルには関連しないという研究報告があります。
■精製度の低い炭水化物の摂取量と体外受精治療成績
インスリン抵抗性や酸化ストレスは生殖機能の低下に関連することが知られていることから、全粒穀物や全粒穀物に含まれる成分、たとえば、フィチン酸やビタミン類、セレンなどには抗酸化、抗炎症作用があり、糖代謝、ひいては、生殖機能に好ましい影響を及ぼします。
さらに、全粒穀物に含まれるリグナンは女性ホルモンレベルを調節する働きがあることから生殖機能を支えます。
そして、体外受精や顕微授精を受ける女性を対象にした前向き研究(EART Study)では全粒穀物の摂取量の多い女性ほど出産率が高かったことが示されています。
■食物繊維と生殖機能や体外受精治療成績
食物繊維の摂取量が多く、脂肪摂取量が少ない女性は、女性ホルモンの再吸収が少ないことから女性ホルモンレベルが低いこと、同様に、規則正しい月経周期の健康な女性を対象にした研究(the Biocycle study)で、食物繊維を多く摂取する女性はE2(エストラジオール)レベルが低く、無排卵のリスクが高いことが示されています。
ただし、より長期に渡る女性看護師健康調査Ⅱでは食物繊維の摂取量と排卵障害の不妊症リスクが関連しませんでした。
さらに、EARTH studyでも食物繊維の摂取量と体外受精の治療成績は関連しませんでした。ただし、食物繊維が豊富な小麦ふすまの摂取量と高い出産率は関連することが示されています。
■まとめ
炭水化物の「質」が生殖機能に関連することが、エビデンスは限られてはいますが、これまでの研究で明らかです。
精製度が高く、糖質の吸収が早く、食後血糖値の急上昇を招くような質の低い炭水化物の摂取は生殖機能の低下に関連し、精製度の低い炭水化物は正常な生殖機能の維持、体外受精の良好な治療成績に関連することが示唆されています。
文献)Fertil Steril 2018; 110: 560
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編集後記____________________________________________________________
食と生殖機能について、アメリカ生殖医学会誌の特集で引用されている文献は、いずれも欧米の研究です。
食生活やその影響については人種や地域による差があるため、そのまま、受け入れるには、もちろん、無理があります。
ただし、炭水化物の質の生殖機能への影響については、動物実験でも明らかにされており、程度の違いはあれ、ヒトに備わった共通のメカニズムではないかと思います。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.795
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