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VOL.815 不妊治療は出生児の健康にマイナスの影響を及ぼすのか

2019年01月27日


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 妊娠しやすいカラダづくり VOL.815                              2019/1/27
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今週の内容__________________________________________________________

・更新情報:
・最新ニュース解説:不妊治療は出生児の健康にマイナスの影響を及ぼすのか
・お知らせ
・当社製品&サービス
・編集後記


更新情報____________________________________________________________

サイト版「妊娠しやすいカラダづくり」の更新情報です。
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2019年1月26日 最新ニュース
生殖補助医療の低出生体重児や早産への影響
https://www.akanbou.com/news/news.2019012601.html
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2019年1月23日 最新ニュース
地中海食と精子の質
https://www.akanbou.com/news/news.2019012301.html
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2019年1月21日 曇り時々雨、のち晴れますように
いろいろなカウンセリング
https://www.akanbou.com/column/reproductivecounseling/20190121.html
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記事についてのご質問は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


最新ニュース解説 ______________________________________________

不妊治療は出生児の健康にマイナスの影響を及ぼすのか

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不妊治療(排卵誘発・人工授精・体外受精・顕微授精)による出生児は、小さく生まれてくる(低出生体重児)、早く生まれてくる(早産)ことが多いという報告がこれまでなされています。

ところが、それは不妊治療を受けたから、すなわち、不妊治療そのものが原因ではない可能性が高いことがイギリスやドイツ、フィンランドのグループによる研究結果が医学誌「ランセット」から発表されました。
https://www.akanbou.com/news/news.2019012601.html

◎どんな研究だったのか
ロンドン大学やマックス・プランク人口研究所、ヘルシンキ大学の研究者らは、フィンランドで1995年から2000年に生まれた子どもの20%にあたる65,723名を対象に、排卵誘発や人工授精、体外受精、顕微授精で生まれた子どもと自然妊娠で生まれた子どもの低出生体重児や早産のリスクを、2つの方法で比較しました。

まずは、全体の不妊治療による出生児(2,776名)と自然妊娠による出生児(62,947名)を比較したところ、不妊治療出生児のほうが自然妊娠出生児に比べて出生時体重が60g軽く、早産のリスクも2.15ポイント高いことがわかりました。

全体でみると、不妊治療を受けて生まれた子どもは自然妊娠の子どもに比べると低出生体重児や早産が多かったというものです。

ところが、解析方法を変えてみるとどうでしょう。

不妊治療による出生児のうち1,245名は、家庭内に同じ両親から自然妊娠で生まれた兄弟がいたので、兄弟間で不妊治療を受けて生まれた子どもと自然妊娠で生まれた子どもの出産時のリスクを比較しました。

そうすると、低出生体重児も早産も、リスクの差は小さくなり、出生時体重の差は31g、早産リスクの差は1.56ポイントで、もはや、統計学的に意味のある差ではなくなったというのです。

不妊治療で生まれた子どもに低出生体重児や早産が多いのは、不妊治療を受けたこと、そのものによるものではない可能性が高いことがわかりました。

おそらく、それ以外、たとえば、両親の遺伝的、環境的要因によるものではないかと考えられます。

◎今回の研究の意味について
体外受精をはじめとした不妊治療が普及し、不妊治療を受けて子どもを妊娠、出産することは珍しいことではなくなりました。

それは、生殖補助医療が安全で有効な医療であり、そして、多くのカップルに必要とされていることに他なりません。

ただし、安全性については、特に、体外受精や顕微授精などの高度生殖補助医療の出生児の長期に渡る心身の健康に対する影響については完全に把握されているわけではありません。

なぜなら、それを確かめるには、ある程度の期間が必要になるからです。

そのため、今回の研究でリスクが完全に把握されたわけではなく、これからも、生殖補助医療の出生児の健康に対する影響について、多くの研究結果が発表されるはずですので、それらを確認していくことが大切です。

そういう意味でも、今回の研究はとても重要なな報告です。

生殖補助医療出生児の低体重出生児や早産のリスク上昇は、治療そのものの影響ではない可能性が高いということをこれまでの研究に比べて最も質の高いデータを出したからです。

低出生体重児とは、出生時体重が2,500g未満で生まれた赤ちゃんのことで、早産は37週未満で生まれてくることで、どちらも、出生児の短期的、長期的健康に対していろいろなリスクが高まります。

これまで、生殖補助医療出生児は自然妊娠出生児に比べて低出生体重児や早産のリスクが高いことが知られていましたが、その原因が、果たして、不妊治療を受けたことによるものなのか、正確に調べることはとても困難でした。

なぜなら、それらのリスク要因は、母親の年齢やBMI、栄養状態、妊娠前の生活習慣、遺伝的、環境的な要因、また、多胎かどうかなど、多数存在するからです。

そのため、他の要因について、同じ条件にし、生殖補助医療出生児と自然妊娠出生児のリスクを比べる必要があります。

今回の研究ではフィンランドの出生登録データベースを利用し、同じ両親、すなわち、兄弟間で生殖補助医療出生児と自然妊娠出生児がいるケースで、リスクを比較しました。

その結果、いずれのリスクについても有意な差はなかったことがわかりました。

◎最後に
生まれてくる子どもの心身の健康と関連する因子は、最近の研究でも次々に明らかになっています。
その中でも注目されているのは受精前後の子宮内の栄養環境で、妊娠前からの女性の栄養状態が子どもの出生後の長期間に渡る健康状態に影響を及ぼすというものです。

それは受精前後の栄養状態が、遺伝子発現の調節に関わり、子どもの体質を決定するのに深く関与しているというメカニズムがわかってきたからです。

不妊治療、特に体外受精や顕微授精を受けることで子どもの健康へ影響が気になることがあるかもしれませんが、これまでの研究ではそれらの治療の影響よりも、両親の影響が大きいことが、次第に明らかになっています。

■参考ページ
・妊娠前からの食生活が子どもの一生の体質をつくる
https://www.akanbou.com/doctor/interview12/

・妊娠初期と中期の血漿中のオメガ3脂肪酸濃度は早産リスクに関連する
https://www.akanbou.com/news/news.2018081501.html

・妊娠中のビタミンD補充と胎児の成長や罹患率、死亡率:メタ解析
https://www.akanbou.com/news/news.2018053101.html

・妊娠中のビタミンD欠乏は出生児の統合失調症リスク因子になるかもしれない
https://www.akanbou.com/news/news.2018122401.html

・妊娠中の母親のビタミンDレベルと出生児の幼年期の神経発達
https://www.akanbou.com/news/news.2017072701.html

・妊娠前後の葉酸やマルチビタミンサプリメントと子の自閉症リスク
https://www.akanbou.com/news/news.2018010601.html

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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


お知らせ____________________________________________________________

■不妊治療と経済的負担に関するアンケート2018へのご協力のお願い
http://www.akanbou.com/seminar/20181014-4870.html

■不妊患者の経済的負担の軽減等を目指すための署名活動へのご協力のお願い
http://www.akanbou.com/seminar/20181014-4871.html


当社製品&サービス________________________________________________

・サプリメント:BABY&ME~新しい命のための環境づくり
 https://babyandme.jp/

・翻訳書:妊娠しやすい食生活
 http://www.akanbou.com/shoku/

・お勧めの本:妊娠しやすいカラダづくり BOOK GUIDE
 http://www.akanbou.com/bookguide/


編集後記____________________________________________________________

不妊治療に限らず、生きていくうえでいろいろなことで選択肢が増えた現代では、さまざまなリスクについて正しく認識しておくことが必須になりましたね。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]           VOL.815
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://partner-s.info/
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・自社配信: 1,452部
・まぐまぐ: 2,784部
・合計部数: 4,236部(1月27日現在)
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