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妊娠しやすいカラダづくり No.853 2019/10/20
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今週の内容__________________________________________________________
・更新情報
・トピックス:日本人・多嚢胞性卵巣症候群女性へのミオイノシトールの有効性
・当社製品&サービス
・編集後記
更新情報____________________________________________________________
サイト版「妊娠しやすいカラダづくり」の更新情報です。
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2019年10月14日 最新ニュース
妊娠前の脂質や脂溶性ビタミン濃度と体外受精治療成績の関係
https://www.akanbou.com/news/news.2019101401.html
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info@akanbou.com
トピックス Oct.2019________________________________________________
日本人・多嚢胞性卵巣症候群女性へのミオイノシトールの有効性
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最近、イノシトールについてのお問い合わせいただくことが目に見えて増えました。最近、当社の製品を用いた臨床試験の論文が医学誌に掲載されたましたので、この機会に特集したいと思います。
そもそも、イノシトールは、PCOSの患者さんのインスリンの効き目をよくすることで排卵機能が改善するという効果について、1999年にNEJMという一流の医学誌で発表されて以来、欧米で多くの臨床研究報告がなされています。
最近、PCOS、さらには、卵巣機能低下の不妊女性への有効性についてのランダム化比較対象試験のメタ解析が相次いで報告され、注目されるようになっています。
そんな中で、リプロダクションクリニック大阪の北宅院長による当社の製品を用いた臨床試験で、日本人に多くみられる非肥満、低男性化徴候型のPCOSにおいてもその有効性が示され、先日、医学誌に掲載されました。
https://www.babyandme.jp/wp/wp-content/uploads/2019/10/Clin.-Exp.-Obstet.-Gynecol.-201946549.pdf
◎イノシトールとは?
イノシトールは水溶性のビタミン様物質で、さまざまな植物、たとえば、穀物やナッツ、果物、特にメロンやオレンジに豊富に含まれています。
基本的には私たちの体内でつくられていて、9つの立体異性体(化学式は同じだけけれども構造が異なる)が存在し、そのうち、ミオイノシトールが生体内にもっとも多く、一般的です。
一方、動物の体内ではイノシトールリン脂質(ホスファチジルイノシトール)として細胞膜を構成しています。
この細胞膜に存在するということがイノシトールの働きにとって大切なことです。
◎イノシトールの働き
イノシトールは、インスリンやFSH(卵胞刺激ホルモン)といったホルモンが作用を発揮するための命令を伝達するのに関わっていて、必須の役割を担っています。
そのため、イノシトールは、インスリンの効き目や卵の成熟度合いに関わっているのです。
◎インスリン受容体の情報伝達におけるイノシトールリン脂質
インスリンと受容体が結合することにより、細胞内へのグルコースの取り込みやグリコーゲン合成を開始させるシグナル伝達が始まりますが、そのプロセスにおいて多くのイノシトール含有リン酸が関わっています(1)。
そのため、卵胞液中のイノシトール濃度は卵子の質に関連するという報告がなされています。
◎卵胞液中のミオイノシトール濃度と卵子の質
53名のIVF患者の採卵時に採取した卵胞液を成熟卵や受精卵に至った群(A群)と至らなかった群(B群)にわけ、それぞれのミオイノシトール濃度を比較した結果、ミオイノシトール濃度はB群に比べてA群のほうが有意に高かったというのです。
卵胞液中のミオイノシトール濃度は卵子の質と相関することから、ミオイノシトールは卵の成熟に関与していると考えられるわけです。
◎ミオイノシトールの有効性
最近のメタ解析では、前述の通り、ミオイノシトールはインスリンやFSHのシグナル伝達を担うことから、PCOS女性の排卵率やART治療成績の改善に寄与することが報告されており、ミオイノシトールはインスリン抵抗性を伴うPCOS女性患者に推奨されてよいと結論づけています。
◎PCOS日本人女性のICSI治療成績へのミオイノシトール補充の有効性
これまでの研究はいずれの欧米のもので、東アジア型、すなわち、肥満でなく、男性徴候型でもないというPCOS女性へのイノシトール投与の臨床試験は実施されていませんでした。
そこで、日本人の東アジア型のPCOS女性を対象にした前向き試験が実施され、その有効性を検討することにしました。
東アジア型PCOS女性50名のうち25名にはミオイノシトール4g+葉酸400μg(MYO/FA群)を、もう25名には葉酸400μgのみ(FA群)を、それぞれ、採卵周期の月経3日目から採卵直前まで摂取してもらい、同じプロトコル(フレキシブル・GnRHアンタゴニスト法)で調節卵巣刺激を実施、培養成績を比較しました。
その結果、MYO/FA群はFA群に比べて有意にHMG製剤総投与量が少なく、M2卵数や受精卵数が有意に多く、M2卵回収率も有意に高かったことがわかりました。
このことから東アジア型PCOSの日本人女性でもミオイノシトールを補充することの有効性が示されました。
◎卵巣機能低下女性への成熟卵率を改善
また、イノシトールはPCOS女性だけでなく、卵巣機能の低下した女性に対しても成熟卵率の増加に有効であったという報告もなされています。
卵巣機能低下女性のIVF成績へのミオイノシトール投与による前向き比較観察試験で、卵巣機能の低下した女性IVF患者72名を無作為にミオイノシトール4g+葉酸400μg群、葉酸400μgのみの群にわけ、卵巣刺激3ヶ月前から投与、同じプロトコルによる培養成績を比較しました。
その結果、排卵誘発剤の使用量はイノシトール群で有意に低く、M2卵率が有意に高く、イノシトール+葉酸補充で卵巣の反応性が改善されたことがわかりました。
卵巣機能低下女性を対象にした臨床試験では卵巣刺激の3ヶ月前からイノシトールの摂取がスタートしています。
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・お勧めの本:妊娠しやすいカラダづくり BOOK GUIDE
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編集後記____________________________________________________________
Nurses'Health Study3やEARTH Studyのprincipal investigatorで、栄養と生殖機能研究の第一人者であるハーバード大学のJorge Chavarro先生の初来日を記念し講演会を11月10日に東京丸の内にて開催します。
Chavarro先生をはじめ、それぞれの領域の第一人者でいらっしゃる先生方から生殖医療に携わる医療従事者が知っておくべき最新のエビデンスについてご講演いただきます。
◎ハーバード大学 Jorge Chavarro先生 初来日記念講演会
https://partner-s.info/memoriallecture
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.853
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不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点でお届けしています。
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://partner-s.info/
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