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VOL.931 歯周病は妊娠を遅らせるかもしれない

2021年04月25日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.931            2021/4/25
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説: 歯周炎は妊娠を遅らせるかもしれない
・当社製品&サービス
・編集後記



最新ニュース解説 Apr.2021___________________________________________

  歯周炎は妊娠を遅らせるかもしれない
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歯周炎と診断されたことがある女性は、そうでない女性に比べて妊娠するまで長くかかる可能性があることがアメリカで実施された研究で明らかになりました(1)。

これまで歯周病は早産や低体重出生児のリスクを上昇させることが知られていますが、妊娠する力をも低下させるかもしれません。

◎どんな研究だったのか?
北米在住の妊娠希望の不妊症でない女性、2,764名を対象とした研究(PRESTO研究)で、2015年3月から2020年6月まで、まず最初に、歯周炎について、以下のような質問に回答してもらいました。

1)歯科医、もしくは歯科衛生士から歯周炎と診断されたことがありますか?

2)歯周炎の治療を受けたことがありますか?

3)永久歯が自然に抜けたことがありますか?

回答後、1年間、もしくは、妊娠に至るまで隔月ごとに妊娠の有無を追跡調査し、妊娠するまでに要した期間から周期あたりの妊娠率を算出し、過去の歯周炎との関係を調べました。

◎どんな結果だったのか?
研究期間中9,558周期で1,658例の妊娠が確認され、歯周炎が妊娠期間に及ぼす影響を正確に調べるため、年齢など妊娠率に関与する因子の影響を統計的に調整しました。

その結果、過去に歯周炎と診断されたことがある女性は診断されたことのない女性に比べて妊娠率が11%低いこと、歯周炎の治療を受けていない女性は受けた女性に比べて妊娠率が21%低いこと、永久歯が自然に抜けたことがある女性はない女性に比べて妊娠率が29%低いことがわかりました。

このように歯周炎は妊娠する力を低下させることが示唆されました。

◎歯周炎とは?
歯周炎とは、歯周病が進み、歯ぐきの炎症だけでなく、歯を支える骨が溶けてしまう病気のことです。

歯周病は、歯周病菌(歯周病を引き起こす細菌)の感染によって発症します。そして、歯周病学会によりますと、30歳以上の成人の約80%がかかっているとされている、よくある病気です。

そもそも、歯周病には痛みなどの自覚症状が伴わないことから、本人が気づいていないことが多いのが特徴です。

それにもかかわらず、歯周病菌は腫れた歯肉から簡単に血管内に出ていくことから、いろいろな病気の発症リスクを上昇させることが知られていて、妊娠、出産の領域でも早産や低出生体重児のリスクをも高めることが知られています。

◎歯周病と妊娠しやすさ
歯周病があると妊娠するまで時間がかかることはこれまでもいくつかの研究報告がなされています。

妊娠を希望する256名の女性を対象にしたフィンランドのヘルシンキ大学の研究では、唾液と血液を採取し、唾液中の歯周病原因細菌の有無を検査した後、1年間追跡調査し、歯周病と妊娠する力の関係を調べました(2)。

その結果、1年で256名中、205名が妊娠しましたが、1年以内に妊娠できた女性に比べて妊娠できなかった女性では、唾液中に歯周病原因菌が検出された女性の割合が4倍も多かったとのこと。

このことから歯周病は不妊症のリスクファクターになる得ると結論づけられています。

その一方で、歯周病の治療や予防で早産や低体重出生児のリスクを低下させることが出来るとの報告もなされています。

イタリアとギリシャの大学の研究グループは、7つのランダム化比較試験(総対象者数2,663名)の結果を統合、分析した結果、妊娠中に歯周病治療を受けた女性は受けなかった女性に比べて早産や低体重出生児のリスクが有意に低いことを見出し、妊娠中に歯周病治療を受けることで早産や低体重児の発生率が低くなると結論づけています。

◎歯周病予防は妊活の必須項目
歯周病は、歯周病原因菌に感染し、歯と歯肉の境目(歯肉溝)の清掃が行き届かないでいると、そこに多くの細菌が停滞し(歯垢の蓄積)歯肉の辺縁が「炎症」を帯びて赤くなったり、腫れたりし、発症します。

これまでの研究で歯周病の発症や重症化は妊娠する力を低下させるだけでなく、早産低体重出生児のリスクも高くなることがわかっています。

そのため、妊娠を希望する女性は、まずは、歯科医に歯周病の有無や口腔内の細菌叢検査で歯周病原因菌が常在化していないかどうかを調べることが大切です。

その結果、歯周病がある場合は治療し、完治させておき、なくても口腔内をケアし、歯周病を予防しましょう。

文献:

[1]Hum Reprod 2011 Advance Article doi:10. 1093/humrep/deab058
[2]J Oral Microbiol 2017; 9: 1330644

[3]Am J Obstet Gynecol 2009; 200: 225.

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編集後記____________________________________________________________

妊活がきっかけで歯のケアを徹底するようになると将来に渡って健康度が高まることになりますね。

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