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VOL.940 妊娠中の母親のミネラル濃度と出生児の血圧

2021年06月27日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.940            2021/6/27
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今週の内容__________________________________________________________

・更新情報
・最新ニュース解説:妊娠中の母親のミネラル濃度と出生後の子どもの血圧
・当社製品&サービス
・編集後記



更新情報____________________________________________________________

  サイト版「妊娠しやすいカラダづくり」の更新情報です。
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2021年6月27日 最新ニュース
飲酒の量とタイミングの妊娠率への影響
https://www.akanbou.com/news/news.2021062301.html
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最新ニュース解説 Jun.2021___________________________________________

 妊娠中の母親のミネラル濃度と出生後の子どもの血圧
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妊娠中の母親の血中のセレンやマンガン濃度が高いほど、出生後の子どもの血圧が低くなること、また、マンガンにはカドミウムによる血圧上昇作用を「中和」させる働きがあるという研究結果(1)が、アメリカのジョンズホプキンス大学の研究チームから報告されました。

妊娠前の女性の栄養環境が、未だ見ぬ子どもの健康にまで影響を及ぼすことが示されたことから、注目されています。

◎どんな研究だったのか?
母親の健康状態の出生児への影響を調査研究しているボストン出生コホートのデータを使用した研究です。

具体的には、2002年から2013年に出産したボストン地域の約1,200人の母親から出産後24-72時間に採取した血液中の有害な重金属とミネラルを測定し、出生児の3歳から15歳の検診時に測定した血圧との関係を調査しました。

◎どんな結果だったのか?
母親の水銀や鉛の濃度と出生児の血圧は関連しませんでした。

ところが、母親のセレンやマンガン濃度が高くなるほど、出生児の血圧が低くなり、母親のセレン濃度が2倍になると子どもの血圧パーセンタイルは平均6.23ポイント、マンガンが2倍になると血圧パーセンタイルは平均2.62ポイント、それぞれ、有意に低くなることがわかりました。

尚、パーセンタイルとは、全体のデータを大きさ順でならべて100個に区切り、小さいほうからのどの位置にあるかを見るものです。

また、母親のカドミウム濃度は出生児の血圧に関連しなかったものの、カドミウム濃度が高いほど、母親のマンガン濃度が高くなるほど、マンガンと子どもの血圧のマイナスの相関関係が強くなることがわかりました。

このことは、カドミウムの血圧上昇作用がマンガンによって緩和されたことを示唆しています。

◎有害な重金属やミネラルの血圧への影響
これまでの研究で、成人の鉛や水銀、カドミウムなどの有害な重金属は自身の高血圧や心臓病のリスクを高くすることが知られていました。

また、反対にセレンなどの抗酸化作用を有するミネラルは正常な血圧を維持するのに寄与していると考えられています。

今回の研究は、妊娠中の母親の子宮内の重金属やミネラル濃度が、出生児の血圧にも同様の影響を及ぶすのかどうかを調べることを目的に実施されました。

結果は母親の重金属濃度と出生児の血圧と関連しなかったものの、セレンなどの抗酸化ミネラルが高いほど血圧が低く、その関係性はカドミウムの濃度が高いほど強くあらわれることがわかりました。

驚くべきことに、重金属の血圧上昇作用が抗酸化ミネラルによって緩和された、すなわち、抗酸化ミネラルは重金属の毒性を中和していたというわけです。

◎セレンの水銀の毒性中和作用
セレンには重金属の中和作用を有することは、これまでの研究でも報告されています。

秋田大学の研究チームで、不妊治療を受けている不妊女性と不妊症でない女性の有害な重金属やミネラルの血中濃度を比較し、AMH値と重金属濃度の関係を解析した研究があります。

その研究では、血中セレン濃度やセレン/水銀比は、不妊症でない女性に比べて不妊症女性のほうが有意に低く、血中水銀濃度は不妊症女性のほうが有意に高かったことから、メチル水銀は女性の妊孕能にマイナスの影響を及ぼすこと、そして、セレンはメチル水銀の影響を軽減する作用があることが示唆されたというのです。

◎葉酸や大豆の環境ホルモン毒性中和作用
葉酸や大豆には重金属ではありませんが、環境ホルモンの毒性の中和作用があることもわかっています。

ハーバード大学のEARTH Studyでは、尿中のBPAの濃度が高い女性は体外受精の治療成績が低くなることが確かめられていますが、食事からの葉酸摂取量の多いグループと少ないグループにわけると、少ないグループでは尿中BPA濃度と体外受精の治療成績との関係は変わりませんが、多いグループではそのような関連はなかったことが明らかにされています。

つまり、食事で葉酸を多く摂っている女性は尿中のBPAの濃度が高くても、低くても、治療成績は影響を受けなかったというわけです。

このことから、葉酸にはBPAのマイナスの影響を「中和」するような働きがあるのではないかと考えられます。

さらに、大豆食品にも同じような働きが認められたといいます。

◎偏りなく、なんでも食べることが最大のリスクヘッジ
このようなことが起こるメカニズムについては、さまざまな仮説が提唱されていますが、本当のことはわかっていません。

そのメカニズムは不明でも、有害な重金属や環境ホルモンには妊娠や出産にマイナスの影響を及ぼす作用がある一方で、ミネラルやビタミン、植物性ポリフェノールなどには、その毒性を中和する作用があることは間違いないようです。

このことはなにを意味するのでしょうか。

有害物質を摂取しないように気をつけることは、もちろん、大切なことではあります。

ところが、現代社会で生活している者にとって、完璧に避けることは、ほとんど不可能です。

であれば、有害物質の摂取に神経質になるよりも、偏りなく、なんでも食べることが、結果として、有害物質の毒性の緩和を喚起し、リスクヘッジになるはずです。

あらゆる意味で、偏りなく、バランスよく食べることが大切だということになりますね。

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当社製品&サービス________________________________________________

・BABY&ME~新しい命のための環境づくり
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・お勧めの本:妊娠しやすいカラダづくり BOOK GUIDE
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編集後記____________________________________________________________

食事バランスは栄養素の摂取だけでなく、有害物質の影響の緩和においても有利なようです。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.940
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://partner-s.info/
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