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妊娠しやすいカラダづくり No.948 2021/8/22
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今週の内容__________________________________________________________
・最新ニュース解説:男性の年齢は何歳頃から体外受精治療成績に影響しはじめるのか?
・当社製品&サービス
・編集後記
最新ニュース解説 Aug.2021___________________________________________
男性の年齢は何歳頃から体外受精治療成績に影響しはじめるのか?
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父親になる男性の年齢が51歳以上になると体外受精や顕微授精の治療成績にマイナスの影響を及ぼすことがイギリスで実施された研究(1)で明らかになりました。
体外受精や顕微授精では、女性の年齢が高くなると、すなわち、30代後半頃から妊娠率が低くなることはよく知られていますが、男性の年齢の影響については、女性の年齢の影響ほどではないようですが、やはり、精子の質の低下を介して、治療成績にマイナスの影響を及ぼす可能性があるという研究報告が増えています。
それでは、男性のほうは何歳頃から影響を及ぼしはじめるのか、一つの目安が提示されました。
◎どんな研究だったのか?
ロンドンのCRGH(the Centre for Reproductive and Genetic Health)という不妊治療クリニックで2009年12月から2018年8月まで体外受精や顕微授精を受けたカップルの治療成績から男性の年齢の影響について調べられました。
その期間に24,641周期の体外受精や顕微授精が実施されましたが、卵子や精子を第三者から提供してもらった治療、凍結融解胚移植や着床前診断を実施した治療を除外した4,833周期が対象となっています。
まず、被験者の母親の年齢を35歳以下、36~37歳、38~39歳、40歳以上の4区分に、父親のほうは35歳以下、36~40歳、41~45歳、46~50歳、51歳以上の5区分に分け、それぞれの区分の治療成績を比較しました。
母親と父親の年齢の中央値は、それぞれ、36歳、38歳で、それらは有意な正の相関関係があった、つまり、女性の年齢が高くなると、パートナーの男性の年齢も高かったとのこと。ただし、男性が51歳以上になると、パートナーの女性の年齢は46-50歳に比べて低くなったそうです。
◎どんな結果だったのか?
まず、男性の年齢と精液検査結果の関係について。
WHOの精液検査の基準を満たした男性の割合は、51歳未満の男性では61.1%だったのに対して、51歳以上では42.1%に低下し、年齢が高くなると精液検査結果が悪くなることがわかりました。
治療成績ですが、4.833周期の40%の1,974周期で出産に至っていましたが、年齢との関係でみると、母親の年齢が高くなるほど出産率や妊娠率が低下していただけでなく、父親の年齢でも高くなるほど成績が低下していたことがわかりました。
そして、母親も父親も35歳以下のカップルに比べて、父親の年齢が51歳以上のカップルでは出産率が33%、妊娠率で36%低くなることがわかりました。
ただし、流産率は父親の年齢と関連しなかったとのこと。
このように父親の年齢が51歳以上になると体外受精や顕微授精の成績にマイナスの影響を及ぼすことがわかりました。
◎男性の年齢と精子の質
男性の年齢が高くなると精液検査結果が悪くなることは知られています。
ただし、精子の数や運動率は、自然妊娠や人工授精のような「体内」受精では重要ですが、体外受精や顕微授精になると、必ずしも必要とされなくなります。
そのため、少なくとも体外受精や顕微授精を実施すれば、男性不妊の原因だけでなく、男性の年齢の影響もそれほど受けないのではないかと考えられていました。
ところが、精液検査では反映されることが出来ない「精子の質」、すなわち、精子DNA断片化指数(DFI)も男性が年をとるほど悪くなることがわかってきました。
精子の質の目安となるDFIとは、精液中のDNAが損傷している精子の割合のことです。
昨年、このDFIと男性の年齢との関係を調査した大規模な研究が2件、相次いで発表されました。
その内の1つ(2)は、25,445名の男性不妊患者(21-80歳)と男性不妊因子を持たない87名の男性のDFIを年齢別(20-29歳、30-39歳、40-49歳、50-59歳、60-80歳)にわけ、比較したというものです。
その結果、男性不妊患者でも、そうでない男性でも、年齢が高くなるに従って、DFIも高くなることがわかりました。
◎ART治療では精子の「数」や「運動率」よりも「質」が重要
今回の研究で女性だけでなく、男性でも年齢の影響が不妊治療の成績に影響を及ぼすことがわかりました。
そのため、男性でも40歳以上になると年齢対策を意識したほうがよいようです。
具体的には、精子の質の低下を招くような生活習慣、たとえば、喫煙や深酒、運動不足、肥満、ストレスなどがあれば、見直し、改善すること。
また、禁欲期間を短くすること、すなわち、2、3日に1回以上は射精すること。
さらには、抗酸化サプリメントを使うことです。
たとえ、精液検査の結果に問題がなくても精子の質を維持し、向上させることは大切です。
精液検査の結果には精子の質は反映されないからです。
体外受精や顕微授精では精子の数や運動率よりも質が重要です。
文献)
1)Acta Obstet Gynecol Scand 2021 Aug 17. Online ahead of print.
2)Fertil Steril. 2020; 114: 311
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編集後記____________________________________________________________
精子の質が影響を及ぼすのは不妊治療成績だけではありません。お子さんの健康にも影響を及ぼすことがわかっています。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.948
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