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VOL.958「やせ」と妊娠しやすさや出生児への影響

2021年10月31日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.958         2021/10/31
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:「やせ」と妊娠しやすさや出生児への影響
・当社製品&サービス
・編集後記


トピックス Oct.2021________________________________________________

「やせ」と妊娠しやすさや出生児への影響
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太り過ぎると妊娠しにくくなることはよく知られていますが、やせ過ぎても妊娠しにくくなります。

肥満が大きな問題となっている海外とは異なり、日本では妊娠可能年齢の女性では、肥満(BMI25以上)の女性の割合が約10%なのに対して、やせ(BMI18.5未満)の女性が約20数%で、倍以上です。

そのため、日本では、太り過ぎの問題もさることながら、やせ過ぎの問題が、より現実的です。

◎「肥満」や「やせ」の定義
現在の体重が適正かどうかは、BMI(Body Mass Index)を算出することで確認できます。BMIは体格指数と呼ばれ、「体重(kg)」÷「身長(m)の2乗」で算出し、国際的な指標として用いられています。例えば、体重が50kgで、身長が155cmの方の場合は、 50÷(1.55×1.55)=20.8となります。

日本肥満学会による基準は以下の通りです。
18.5未満:低体重(やせ)
18.5以上25未満:標準
25以上30未満:過体重
30以上:肥満

◎やせと生殖機能
「やせ」、すなわち、低栄養では十分なエネルギーがつくることが難しくなるので、当然、省エネ運転が必要になります。

その場合、優先するのは自らの生命を守ることで、後回しにされるのが生殖機能です。

このような自然界のメカニズムが働くことが「やせ」が妊娠力を低下させる根本原因です。

これまでの多くの研究で妊娠、出産に最適なBMIの範囲は、日本人ではBMIが20から23とされています。

◎カップルのBMIと自然妊娠率
中国で、2,301,782組の妊娠希望のカップルを1年間追跡し、カップルのBMIと妊娠率(妊娠までに要した期間から算出)の関係を調査した研究があります(1)。

この研究ではカップルの男性と女性のBMIの組み合わせで妊娠率が算出されています。各組み合わせの妊娠率は以下の通りです。

女性標準&男性標準:100
女性標準&男性やせ:96
女性標準&男性過体重:103
女性標準&男性肥満:100

女性やせ&男性標準:91
女性やせ&男性やせ:90
女性やせ&男性過体重:97
女性やせ&男性肥満:95

女性過体重&男性標準:94
女性過体重&男性やせ:88
女性過体重&男性過体重:99
女性過体重&男性肥満:94

女性肥満&男性標準:81
女性肥満&男性やせ:70
女性肥満&男性過体重:83
女性肥満&男性肥満:81

男性も女性も標準の場合の妊娠率を100とし、男性と女性のBMIによって、妊娠率がどの程度変わるかがわかります。

たとえば、男性も女性の肥満であれば妊娠率は19%低下、男性が低体重で女性が肥満の場合は30%低くなり、最も妊娠率が下がることがわかります。

大変興味深い結果で、やはり、女性のBMIの影響が妊娠率に与える影響が大きいことが一目瞭然ですが、カップルの肥満も、低体重(やせ)も妊娠しにくくなることがわかります。

◎やせがART成績に及ぼす影響
同じく中国で4,798周期の体外受精の新鮮胚移植における女性の年齢やBMIと妊娠率との関係を調べた研究があります(2)。

低体重(BMIが18.5未満)は妊娠率にマイナスの影響を及ぼすこと、特に、年齢が35歳以上になると顕著になることがわかりました。

年齢が高くなるほど適正体重のキープが重要になるようです。

◎やせが出生児に及ぼす影響
女性の低体重は、妊娠できたとしても、子宮内の栄養環境が悪いため、胎児の発育が十分でなくなることから低出生体重児のリスクが高くなります。

低出生体重児とは2500g未満で生まれた赤ちゃんのことです。

小さく生まれた赤ちゃんは、将来、生活習慣病にかかりやすくなることが知られています。

低栄養の子宮内に成育すると、その環境に適応して生き抜けるように代謝を調節するように遺伝子の働きが変化して、少ない栄養でも生きていけること出来る体質が形成されます。

つまり、省エネ型の体質になるのです。

そんな体質に生まれた場合、普通に食べて、生活していても、太りやすくなり、そこに悪い生活習慣が重なると、同じような生活習慣でも、生活習慣病にかかりやすくなります。

このようにBMIが18未満の低体重は、妊娠や出産に不利になりますので、適正体重を目指し、食生活を見直す必要がありそうです。

やせ女性の適正体重をキープするための食べ方は次々号にて特集する予定です。


文献)
1)Fertil Steril 2020; 114: 1067
2)Fertil Steril 2017; 107: 422
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・BABY&ME~新しい命のための環境づくり
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・翻訳書:妊娠しやすい食生活
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・お勧めの本:妊娠しやすいカラダづくり BOOK GUIDE
 http://www.akanbou.com/bookguide/


編集後記____________________________________________________________

アメリカの研究でファーストフード店が増えるとその地域の生活習慣病の発症リスクが高まり、スーパーマーケットが増えると低くなることがわかったとのこと。
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2785598

環境の影響はおそるべし!です。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.958
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発 行:株式会社パートナーズ
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サイト:http://partner-s.info/
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