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妊娠しやすいカラダづくり No.983 2022/4/24
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今週の内容__________________________________________________________
・最新ニュース解説:生殖補助医療で生まれた子どもの神経発達
・当社製品&サービス
・編集後記
最新ニュース解説 Apr.2022___________________________________________
生殖補助医療で生まれた子どもの神経発達
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生殖補助医療で生まれた子どもの3歳時点の神経発達は、自然妊娠で生まれた子どもに比べて発達の遅れの頻度が高くなっていましたが、ほとんどは、生殖補助医療を受けたことそのものに原因があるものではなく、両親の年齢など、不妊に関与する因子や多胎妊娠が関係する可能性があることがわかりました。
2019年に体外受精で生まれた子どもは過去最多の6万598人となり、同じ年の総出生数は86万5239人ということで、14.3人に1人が体外受精で生まれている計算になります。
今月から不妊治療に保険が適用されるようになったことからも、生殖補助医療の有効性や安全性については、確立されていると言えます。
一方、高度生殖補助医療と呼ばれている体外受精や顕微授精の出生児への影響についても、概ね、問題ないとされています。
ただし、不妊治療、特に、高度生殖補助医療と呼ばれている治療の中でも、顕微授精や胚盤胞移植、凍結融解胚移植の出生児の心身への影響については、完全に解明されているわけではありません。
なぜなら、実際、治療を受けて生まれた子どもの成長過程を追跡していくことでしか、答えを出すことが出来ないからです。
そういう意味では、今回の研究報告はとても貴重です。
まず、対象は日本人であり、我が国で最大規模の出生コホート研究である、エコチル調査によるものだからです。
◎どんな研究だったのか?
千葉大学予防医学センターの研究者らを中心とする共同研究グループは、エコチル研究に参加の母子のデータセットを利用して、生殖補助医療で生まれた子どもの3歳時点の神経発達について、治療法や移植方法別に解析しました。
77,928人の子どもと母親のデータを、ART治療(体外受精や顕微授精)で生まれた子ども(2,933人)、一般不妊治療(人工授精、排卵誘発)で生まれた子ども(4,071人)、自然妊娠で生まれたこども(70,924人)別に、3歳時点での神経発達を比較しました。
神経発達の評価は、ASQ-3(Ages and Steges Questionnaires 3rd edition)という質問票を使用しています。
ASQ-3は、コミュニケーション、粗大運動(腕や足などの大きな筋肉を使う動き)、微細運動(手指の細かい動き)、問題解決(手順を考えて行動するなど)、個人と社会(他人とのやり取りに関する行動等)の5つの領域について、両親の回答をもとに子どもの発達を評価する指標です。
◎どんな結果だったのか?
体外受精や顕微授精、一般不妊治療で生まれた子どもは、自然妊娠で生まれた子どもに比べて、3歳時点での発達の遅れの頻度が高かったことがわかりました。
ところが、多胎妊娠を排除し、両親の年齢や不妊に関係する要因の影響を調整したところ、発達の遅れのリスクの上昇は認められませんでした。
また、ART治療のうち、凍結胚移植や胚盤胞移植で生まれた子どもは、自然妊娠で生まれた子どもと比べて、発達の遅れのリスク上昇は認められませんでした。
これらの結果から言えることは、生殖補助医療で生まれた子どもでは、自然妊娠で生まれた子どもに比べて、発達の遅れが見られたものの、生殖補助医療を受けたことそのものの影響ではなく、親の年齢や不妊に関わる要因、多胎妊娠に関連するものと考えられるということです。
◎プレコンセプションケアが重要
これまでの膨大な研究報告でも、出生児の心身の健康に影響を及ぼすのは、生殖補助医療の技術そのものではなく、両親の心身の健康状態であることがわかっています。
大切なことは、出生児の心身の健康に影響を及ぼすのは、妊娠後の女性の健康状態だけでなく、妊娠前からの、母親になる女性だけでなく、父親になる男性の健康状態も含めて、影響すること、そして、出生児への影響は、成人後まで、長期に渡るということです。
両親の健康は、さまざまな形で子どもに影響を及ぼすことは、誰もが知るところですが、それは、妊娠後にはじまるものと考えられているのではないでしょうか。
ところが、最近の研究によれば、妊娠する前の女性(母親)と男性(父親)の生活習慣や栄養状態が、その後の妊娠や出産の経過、そして出生児の将来にわたる健康にも影響することがわかってきました。
精子や卵子が完成し、受精し、着床するまでの期間、いわゆるプレコンセプション期のカップルが健康であるほど、妊娠が成立しやすくなり、胎児の発育もよくなることが知られています。
プレコンセプション期に健康で栄養状態の良いカップルから生まれた赤ちゃんほど健康であり、かつ、その赤ちゃんは成人してからも健康を保ちやすくなるのです。
その背景として「成人になって生活習慣病にかかりやすいかどうかは、胎児期や乳幼児期の環境の影響を受ける」というDOHaD学説と呼ばれるメカニズムが考えられています。
不妊治療の影響を心配するよりも、未だ見ぬお子さんに良好な成育環境を提供するために、まずは、二人で健康的な生活を心がけることが大切ですね。
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編集後記____________________________________________________________
エコチル調査は日本で最も規模が大きく、長期間に渡る出生コホート研究です。出生コホート研究とは、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるときから13歳になるまで健康状態を定期的に調べる、集団を追跡する調査のことで、赤ちゃんの健康と環境因子の関係を調べています。
https://www.env.go.jp/chemi/ceh/index.html
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.983
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://partner-s.info/
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