メルマガ

VOL.1035 男性の加齢は精子の質の低下を介して治療成績低下を招くかもしれない

2023年04月23日

____________________________________________________________________

 妊娠しやすいカラダづくり No.1035              2023/4/23
____________________________________________________________________


今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:男性の加齢は精子の質の低下を介して治療成績低下を招くかもしれない
・編集後記


最新ニュース解説 Apr. 2023__________________________________________

 男性の加齢は精子の質の低下を介して治療成績低下を招くかもしれない
-----------------------------------------------------------------------
父親になる男性の加齢は精子濃度や精子運動率ではなく、精子の質の低下を介して治療成績にマイナスの影響を及ぼす可能性があるという研究結果がブラジルから報告されています。

女性の加齢は卵子の質の低下を招くことで、妊娠率や出産率に最も大きな影響を及ぼすことはよく知られています。

その一方で、男性の年齢の影響については、それほど気にされていませんでした。

それだけ、妊娠や出産に至るプロセスが正常に進む要件は卵子に備わった能力が物を言うという現実があったわけです。

ところが、女性の年齢が高くなると、卵子の精子DNAの損傷を修復する能力が低下することがわかってくるにしたがって、精子の質も重要であるという認識が徐々に広まっています。

◎どんな研究だったのか?
男性の年齢が精液検査結果や精子の質を評価する精子DNA断片化指数(DFI)検査、そして、ART治療成績に与える影響を後向きに調査しました。

2016年から2021年の間に精子DFI検査を受けた367名の男性を、35歳未満(63名)、35~45歳(227名)、45歳以上(77名)の3つの年齢グループにわけました。

まずは、平均の精子DFを比較しました。

次の、被験者男性のうち、女性パートナーがART治療を受けた255人の精子濃度、精子運動率、精液量、女性パートナーの年齢、そして、ART成績(受精率、良好胚盤胞率)を比較しました。

◎どんな結果だったのか?
精子濃度、精子運動率、精液量は男性の年齢による差はありませんでした。

ところが、45歳以上の男性の平均の精子DFIは28.6%だったのに対して35歳未満の男性のそれは20.8%と、高齢の男性は若い男性に比べて、精子DFIが有意に高く、精子の質が低下していることがわかりました。

また、3つの年齢グループの女性パートナーの平均年齢は、それぞれ、32.0歳、33.6歳、32.3歳と、差はありませんでした。

ところが、良好胚盤率は、若い男性では3.2±0.5個、中間男性で2.5±0.2、高齢男性では2.2±0.3と、女性の年齢が同じでも、男性パートナーの年齢が高くなるほど低くなる傾向があることがわかりました。

このことから、男性の年齢は精液結果ではなく、精子DFI、すなわち、精子の質に影響し、精子の質の低下を介して、治療成績にマイナスの影響を及ぼす可能性があることが示されました。

◎精液検査が正常でも精子の質が低下していることがある
今回の研究でわかったことは、男性不妊でなくても、すなわち、精液検査で問題がなくても、年齢が高くなると精子の質が低下する傾向があるということです。

これまで、男性に対する不妊検査は、唯一、精液検査のみで、100年間、続けられてきました。

精液検査で測定されるのは、精液量、精子濃度、精子運動率、正常形態精子率で、もちろん、これらの結果は、男性不妊の治療方針を検討する上で重要ですが、この検査のみでは精子の質、そのものは充分に反映できていない可能性が指摘されてきました。

その精子の質を測定するのが精子断片化指数(DFI)検査で、精液中の精子のDNAが損傷を受けた精子の割合を測定する検査です。

最近、これらの精子機能検査を実施するクリニックが、少しずつ増えてきていますが、まだまだ、どこのクリニックでも受けられるわけではありません。

◎二人で取り組むことが大切
精子の質について知っておきたいことは、たとえ、DFIが高くてもパートナーである女性の卵子に修復機構が備わっていて、受精後に修復されるものの、女性の年齢が高くなるにつれて、卵子の修復能力が低下するということです。

要するに、女性の年齢が高くなると精子のDNAの損傷の影響を受けてしまうということです。

そのため、男性も精子の質の維持が求められます。

そして、精子は毎日つくられていることから卵子に比べて、質の改善や維持が期待できます。

具体的には、禁欲期間を長くしない、2、3日に1回は射精し、精液中に新しい精子の割合を多く維持すること、禁煙すること、バランスのよい食生活、ストレスマネジメント、そして、抗酸化サプリメントを摂取することです。

カップルの年齢が高くなるほど男性の取り組みが大切になってきます。

文献)
1)Reprod Sci 2023 Mar 10. doi: 10.1007/s43032-023-01209-9. Online ahead of print.

--------------------------------------------------------------------
記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


編集後記____________________________________________________________

男性の年齢が45歳以上になれば、もしくは、女性の年齢が30代後半以上になれば、精子の質の維持につとめることが、不妊治療の成功の鍵になります。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1035
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします。
--------------------------------------------------------------------
不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点でお届けしています。
--------------------------------------------------------------------
発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎発行部数
・自社配信: 1,431部
・まぐまぐ: 2,246部
・合計部数: 3,677部(4月23日現在)
--------------------------------------------------------------------
◎免責事項について
当メールマガジンの提供する情報は医師の治療の代わりになるものでは決してありません。プログラムの実行は各人の責任の元で行って下さい。プログラムの実行に伴う結果に関しては、当社の責任の範囲外とさせて頂きます。
--------------------------------------------------------------------
◎注意事項
読者の皆さんから寄せられたメールは、事前の告知なく掲載させていただく場合がございます。匿名などのご希望があれば、明記してください。また、掲載を望まれない場合も、その旨、明記願います。メールに記載された内容の掲載によって生じる、いかる事態、また何人に対しても一切責任を負いませんのでご了承ください。
--------------------------------------------------------------------
◎著作権について
当メールマガジンの内容に関する著作権は株式会社パートナーズに帰属します。一切の無断転載はご遠慮下さい。