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妊娠しやすいカラダづくり No.1073 2024/1/21
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今週の内容__________________________________________________________
・最新ニュース解説:日本人女性不妊患者のほとんどはビタミンDが不足している
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記
最新ニュース解説 Jan. 2024_________________________________________
日本人女性不妊患者のほとんどはビタミンDが不足している
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日本人女性不妊患者では、ビタミンDが充足しているのは6.5%に過ぎず、不足が28.0%、欠乏が65.5%で、93.5%が非充足状態であることが、約2000人を対象とした大規模な研究で明らかになりました(1)。
ビタミンDは骨の健康に関連する脂溶性ビタミンですが、細胞の増殖・分化、免疫の調節に深く関わることから、妊娠や出産に重要な役割を担うことが知られていますが、ビタミンでは珍しく、必要とされる量のほとんどは、太陽の光、すなわち、紫外線にあたることで体内でつくられていることから、多くの女性で不足していることが知られています。
今回、初めての大規模な研究が実施され、ほとんどの女性が不足していることがわかりました。
◎どんな研究だったのか?
2016年9月から2021年12月まで、千葉の亀田IVFクリニック幕張に通院する不妊女性患者2029名を対象に、血清25(OH)DやAMH、Th1/Th2比を測定し、過不足の分布や季節変動、卵巣予備能や免疫マーカーとの関連が調べられました。
25(OH)DはビタミンDの過不足を知るための指標されています。血中の25(OH)Dが30ng/mL以上が充足、20〜30ng/mLが不足、20ng/mL未満が欠乏とされています。
◎どんな結果だったのか?
平均の血清25OH)Dは18.2±7.0ng/mLで、充足している女性は6.7%、それに対して、不足状態の女性は28.0%、なんと、欠乏の女性は65.5%で、93.5%が非充足状態であることがわかりました。
また、季節ごとの25(OH)D濃度を統計的に分析したところ、冬以外の季節の25(OH)D濃度が統計学的に有意に高いことが明らかになりました。
◎ビタミンDという不思議な栄養素
前述の通り、ビタミンDは独自な栄養素で、ビタミンの定義に反して体内でつくられています。それも、紫外線にあたることによって皮膚でコレステロールからつくられているのです。また、食べ物にも含まれているのですが、野菜などには一切含まれていなくて、ほとんど、魚にしか含まれていません。
この独自性ゆえに、現代の日本では、ほとんどの女性でVDが不足することになってしまいました。
つまり、日焼け止めを塗るとビタミンDはつくられなくなりますし、食事からのビタミンDの供給源のほとんどは魚なのですが、この15年で、30代、40代の女性の魚の摂取量は約40%も減っているからです。
妊娠や出産になくてはならないビタミンDがほとんどの女性で不足しているという、もはや異常事態と言っても過言ではない状況は、現代の女性の嗜好というか、生活スタイルが招いていることがおわかりいただけたでしょうか。
ここで海外、それも日照時間が極めて短いグリーンランドに目を向けてみましょう。紫外線が弱く、VDをつくれない地域に住む人々は、いったい、どうしているのでしょうか。
グリーンランドの住民を対象に食事内容とVD濃度の関連を調べた研究で、伝統的な食品(アザラシやクジラ、野ガモ、魚、トナカイ、ジャコウウシ、野ウサギ)をまったく食べない人は毎日食べる人に比べて血中のVD濃度はおよそ半分だったという報告がなされています。
魚に含まれるVDの量は、なぜか、北に行けば行くほど多くなるのです。不思議なことに、紫外線量が少なくなればなるほど、今度は魚に含まれるVDの量が増えていくという関係にあるのです。VDが行き渡るように、まるで大自然の意図が働いているかのようです。
それにもかかわらず、伝統的な食事をしなくなったグリーンランドの女性、日焼け止めを塗り、魚を食べなくなった日本の女性は、自然の恩恵を受けることが出来なくなり、ビタミンDが不足してしまったわけです。
◎ビタミンD不足の影響は年齢が高くなるほど大きくなる
体外受精や顕微授精を受けている女性患者では、36歳以上では妊娠に至った女性は至らなかった女性に比べて、血液中や卵胞液中のビタミンD濃度が高かったという研究報告がなされています(2)。
イタリアの不妊治療クリニックで体外受精や顕微授精に臨む103名の女性患者を対象に、採卵時に血液中と卵胞液中のビタミンDの濃度を測定し、その後、妊娠に至ったグループ(34名)と妊娠に至らなかったグループ(69名)で比較し、ビタミンDの妊娠への影響を調べたという研究です。
妊娠グループと非妊娠グループの血液中のビタミンD濃度は、それぞれ、28.27ng/ml、24.02ng/ml、卵胞液中のそれは、それぞれ、28.7ng/ml、24.02ng/mlで、差はみられなかったものの、対象者年齢を36歳以上に絞って比較すると、妊娠グループと非妊娠グループの血液中のビタミンD濃度は、それぞれ、42.02ng/ml、24.98ng/ml、卵胞液中のそれは、それぞれ、41.76ng/ml、25.22ng/mlで、血液中でも、卵胞液中でも、妊娠グループのほうが統計学的に意味のある差でビタミンD濃度が高かったというのです。
要するに、年齢が高くなるほどビタミンDの充足は妊娠成立にとって重要な因子になり得るというわけです。
◎冬場に重要なビタミンD対策
不妊治療を受けている女性にとってVDが不足しているのであれば、サプリメントで効率的に補充するのが有利であることは間違いありません。
ただし、それでも、敢えて外に出て日光にあたり、少なくとも週に2、3回は魚を食べるような生活スタイルを心がけるべきです。
外に出て日にあたること、近くで獲れた魚を食べることは、単にVDを充足させるだけでなく、生殖機能をはじめ、私たちの心身にさまざまな恩恵を与えてくれるはずです。
これまでの研究で、魚介類をよく食べること、運動習慣があること、そして、タバコを吸わないことが、ビタミンDが不足しにくいことがわかっているからです。
ビタミンDが豊富に含まれる食品は、魚、それもサケですが、毎日、サケを食べるわけにもいきませんので、基本は日にあたることです。
意識して日光浴をするのも難しいと思うので、やはり、ウォーキング等の運動が現実的かもしれません。
ただし、女性の場合、季節を問わず日焼け止めクリームなどの紫外線対策を欠かさないという方も少なくないでしょうから、確実なのはサプリメントになると思います。
サプリメントを利用する場合は、ビタミンDは脂溶性のため摂取するタイミングが大切です。1日のうちで食事が最も多い食後が吸収効率がよいとされています。
妊娠希望の女性にとって、葉酸だけでなく、ビタミンDのサプリメント補充は必須と言えます。
文献)
1)nutrients 2023; 15: 5059
2)Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2021; 25: 4964.
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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com
お知らせ__________________________________________________________
研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
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東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。
PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。
最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。
PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。
そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。
詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf
編集後記____________________________________________________________
冬、特に2月が最もビタミンD濃度が低くなる時期ですので、屋外に出ること、鮭などの魚やキノコ類を積極的に食べましょう。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.1073
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
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・合計部数: 3,573部(1月21日現在)
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