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妊娠しやすいカラダづくり No.1090 2024/5/12
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今週の内容__________________________________________________________
・最新ニュース解説:精液中の除草剤グリホサート濃度と酸化ストレス
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記
最新ニュース解説 May. 2024_________________________________________
精液中の除草剤グリホサート濃度と酸化ストレス
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男性不妊患者の精液中に除草剤グリホサートが血液中の4倍の濃度で検出され、血中や精液中の酸化ストレスは、グリホサートが検出された男性で高いことが明らかになりました(1)。
グルホサートは、世界で最も使われている除草剤の主成分で、「ラウンドアップ」という商品で販売されています。1970年代にアメリカで開発されてから世界中で大量に使い続けられている一方、発がん性などの有害性も懸念されていることから、海外では規制しようとする動きが出てきています。
今回の研究は、精液中のグリホサートと酸化ストレスの関係を調査した初めての研究です。
◎どんな研究だったのか?
研究は精液中や血液中の除草剤グリホサート濃度と酸化ストレスの関係を調査することを目的として、2018年2月から2022年3月までの間にフランスの病院で不妊症検査や診察を受けた、26~57歳の不妊症カップルの男性パートナー128人を対象に実施されました。
被験者から提供された精液や血液中のグリホサート濃度や酸化ストレスマーカーを測定し、それらの関係を調べました。
◎どんな結果だったのか?
精液中にグリホサートが有意な割合で検出され、その濃度が血液中の濃度よりも4倍高いことがわかりました。
また、血液中のグロホサート濃度と精液中の酸化ストレスマーカーである8-OHdG濃度との間に強い正の相関が認められました。
8-OHdGとは活性酸素による遺伝子DNA損傷を鋭敏に検出することから、DNAへの影響が反映されます。
さらに、総酸化ストレス状態や酸化ストレス指数(OSI)、マロンジアルデヒド(脂質の酸化度合い)の血中濃度や精液中の濃度は、グリホサートが血中および精液中に検出された男性でそれぞれ有意に高かったことがわかりました。
これらの結果から、グリホサートがヒトの生殖機能、そして、その子孫に悪影響を及ぼすことが示唆されました。
◎果物や野菜の残留農薬レベルと精子の質
これまで残留農薬と精子の質の関係については、ハーバード大学の研究が有名で、健康な男性大学生189名を対象に過去1年間に食べた果物や野菜の残留農薬レベルと精液検査の結果の関係を調べています(2)。
残留農薬高レベルの果物や野菜の摂取量は精子の質とは関連しなかったものの、残留農薬が低〜中レベルの果物や野菜を多く食べる男性ほど精子数や精子濃度が高いことが明らかになっています。
残留農薬低〜中レベルの果物や野菜を最も多く食べていたグループの男性は最も少なかったグループの男性に比べて平均の精子数で169%多く、精子濃度で173%多かったということで、残留農薬は、健康な男性の精子の質へ影響が示唆されています。
◎有害物質の影響をどう考える?
今回の研究で調査された除草剤グルホサートは、2015年に、WHOの専門家機関が「おそらく発がん性がある」と評価したことから、その有害性が懸念されはじました。
そして、2018年8月、アメリカ・カリフォルニア州のサンフランシスコ地裁は、「がんになった原因は除草剤グリホサートによるものだ」と訴えていた末期がんの原告の男性に、それを認め、除草剤のメーカーであるバイエル社に約320億円(後の87億円に減額)支払うように命じました判決が下され、俄然、関心が高まり、同様の訴訟がアメリカでは数万件にもなっているというから驚きです。
メーカーであるバイエル社は、安全性の根拠として、植物がアミノ酸を作り出す代謝経路を遮断することで除草効果を発揮する作用であるため、同じような代謝経路をもたない動物や人間には影響しないと説明してきました。
ところが、その代謝経路をもつ腸内細菌が人間と共生していることから、それらの腸内細菌がダメージを受け、人間の健康にもざまざまな悪影響を及ぼすのではないかという意見があります。
いずれにしても、除草剤にしても、残留農薬にしても、直接、使用したり、触れたりしなくても、大量に使用されていることから、環境中の残留が増え、名古屋大学の研究で、小児の尿からグルホサートが検出し、小児にまで取り込まれていることを確かめています(3)。
要するに、さまざまな有害物質が体内に取り込まれるのを防ぐのは、不可能に近いと言っても過言ではないということです。
◎体内に入ってからの影響を軽減する
有害物質については、入ってくるのを防ぐことよりも、入ってからマイナスの影響をできるだけ受けないようにすることのほうが現実的なのかもしれません。
そのような対策について、重要なヒントを与えてくれる研究があります。
ハーバード大学の研究で、尿中のBPA(環境ホルモン)の濃度が高い女性は体外受精の治療成績が低くなることを確かめましたが、女性を食事からの葉酸摂取量の多いグループと少ないグループにわけると、少ないグループでは尿中BPA濃度と体外受精の治療成績との関係は変わりませんが、多いグループではそのような関連はなかったというのです(4)。
つまり、食事で葉酸を多く摂っている女性は尿中のBPAの濃度が高くても、低くても、治療成績は影響を受けなかったというわけです。
このことから、葉酸にはBPAのマイナスの影響を「中和」するような働きがあるのではないかと考えられます。
さらに、大豆食品にも同じような働きが認められています(5)。
このようなことが起こるメカニズムについては、明確なことはわからないとしていますが、有害物質のマイナスの働きは、たとえば、遺伝子の発現、すなわち、遺伝子のオンオフへの影響、また、ホルモンの受容体への作用などが考えられています。
一方で、葉酸には遺伝子の発現のオンオフの調節に関与するメチル基という物質をつくることに深く関わっていることがわかっていますし、大豆食品には弱いエストロゲンのような働きをするイソフラボンが含まれていることが知られています。
そのため、葉酸や大豆食品に有害な影響を中和する作用があるとすれば、遺伝子発現やホルモン受容体に関わるものではないかと考えられているようです。
実際に動物を使った実験では、そのメカニズムの一部が確認されています。
これらの研究結果が教えてくれているのは、食べて取り入れる栄養素の働きは、通り一遍のものではなく、それらの相互作用も含めれば、数え切れないくらい多彩なものであるということです。
研究で明らかにされているのは、それらの働きのほんの一端なのでしょう。
いろいろな食材から摂取している成分が私たちの生命活動を支えてくれていることを考えると、当然のことなのかもしれません。
そのため、いろいろな種類の野菜や果物を、少しずつでも、毎日、食べ続けることが大切ではないでしょうか。
文献)
1)Ecotoxicol Environ Saf. 2024: 278: 116410
2)J Nutr. 2016; 146: 1084
3)Int J Hyg Environ Health. 2022: 242: 113963.
4)Reproductive Toxicology 2016; 65: 104
5)J Clin Endocrinol Metab 2016; 101: 1082
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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com
お知らせ__________________________________________________________
研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
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東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。
PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。
最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。
PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。
そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。
詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf
編集後記____________________________________________________________
新鮮な野菜や果物を、さまざまな種類で、毎日、食べることに勝る食べ方はありませんね。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.1089
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
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・合計部数: 3,563部(5月12日現在)
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