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VOL.1095 体重管理と緑茶習慣で精子の質を守る

2024年06月23日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1095               2024/6/23
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:体重管理と緑茶習慣で精子の質を守る
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記


最新ニュース解説 Jun. 2024__________________________________________

体重管理と緑茶習慣で精子の質を守る
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男性にとって体重を管理し、緑茶を習慣的に飲むことが精子の質の維持につながる可能性があることが中国で実施された研究で明らかになりました(1)。

精子の質は、環境や生活習慣など、さまざまな因子の影響を受けることがわかっていますが、その中でも、体重と植物性ポリオフェノールの習慣的な摂取の影響が重要なようです。

◎どんな研究だったのか?
中国の安徽省の安徽医科大学第一附属医院の研究グループは、不妊治療で通院中の1016組のカップルの男性パートナーを対象に精子の質と生活習慣や職場環境の関係を調べるべく、横断研究を実施しました。

精液検査と精子DNA断片化指数(DFI)検査の結果で精子の質を評価し、自己申告による生活習慣や職場環境因子との関係を解析しました。

◎どんな結果だったのか?
精子の質と関連したのは、年齢やBMI、不妊原因、不妊期間、禁欲期間、精液検査結果、喫煙、飲酒、不規則な睡眠習慣、仕事中に高温や化学物質に頻繁にさらされるなどでした。

次に、精液の質と独立に関連する因子を調べるために統計学的に影響する因子の調整を調整し、k解析した結果、飲酒は良好な精子濃度と関連しました。

また、BMI(体格指数)が24以上28未満の男性は、BMIが24未満の男性と比較して、前進精子運動性率が有意に低いこと、さらには、緑茶を飲まない、もしくは、飲んでも週に4回程度の男性は、週に5回から7回飲む男性に比べて精子DFIが高いことがわかりました。


精子の質にとって有害な因子として、肥満、喫煙、コーラ(甘い清涼飲料水)、ファストフード、短い/長い睡眠時間、騒音、高温環境でした。

これらの結果から、男性にとって適切な体重感管理と習慣的に緑茶を飲むことが、精子の質を維持することになることが示唆されました。

◎精子の質とは?
男性の不妊検査と言えば精液検査で、主に精液量や精子の数、運動性、形態がわかります。

これらは男性の妊孕性(妊娠させる力)を測る重要な項目ですが、それは自然妊娠や人工授精の場合です。

ところが、体外受精や顕微授精では精液検査と治療成績は関連しなくなります。

なぜなら、体外受精や顕微授精では、精子の数や運動性は求められなくなり、重要な因子は「質」になるからで、精液検査では質は評価できないからです。

精子の質とは精子DNAの損傷度合いのことで、精液中の、DNAが損傷している精子の割合を精子DNA断片化指数(DFI)と呼び、パーセンテージであらわされます。

そのため、精液検査で問題なくても、質が低下した精子が多く、具体的には精子DFIが高くなると、治療成績にマイナスの影響が及ぼされることが知られています。

そして、そのようなケースが精液検査で正常と診断された男性の約3割に見られるとの研究報告もあります。

◎精子の質と治療成績
精子DFIが高くなると、受精率や胚盤胞到達率、妊娠率が低くなり、流産率が高くなります。

胚発育や妊娠の成立、継続には、当然ながら、卵子の質だけでなく、精子の質も深く関与しているからです。

一方、卵子には受精後に精子のDNAの損傷を修復する働きが備わっていますが、それも女性の年齢が高くなれば、修復能力が低下することが知られていますので、女性が30代後半以上のカップルにとっては切実な問題です。

◎精子の質を維持するために
精子DNAの損傷の原因の多くは酸化ストレスで、それは、タバコや深酒、肥満、熱、ストレス、栄養不良、睡眠不足などで増大します。

ここで大切なことは、男性の精子は女性の卵子とは決定的に異なり、ほぼ生涯に渡り、つくり続けられているため、その時々の男性の心身の状態で、精子の質はよくなったり、悪くなったりするということです。

実際、禁煙やダイエット、抗酸化サプリメントの服用で、精子DNA断片化指数が改善されるという報告がなされています。

つまり、精子の質はどうにかすることが出来るということです。

そのため、パートナーが不妊治療を受けている男性は、バランスのよい食事をはじめ、健康的な生活習慣を心がけることで、精子の質が低下しないようにつとめることが妊娠への早道になるはずです。

今回の研究では、その中でも適切な体重管理、そして、毎日、緑茶を飲むことが大事であることが示されました。

文献)
1)Syst Biol Reprod Med. 2024; 70: 150

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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


お知らせ__________________________________________________________

   研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
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東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。

最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。

PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。

そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。

詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf


編集後記____________________________________________________________

精巣の温度管理は重要ですね。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1095
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不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点でお届けしています。
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
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