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VOL.1098 歯周病は妊娠や出産に影響する

2024年07月14日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1098               2024/7/14
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今週の内容__________________________________________________________

・トピックス:歯周病は妊娠や出産に影響する
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記


トピックス Jul. 2024_________________________________________________

歯周病は妊娠や出産に影響する
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歯周炎とは、歯周病が進み、歯ぐきの炎症だけでなく、歯を支える骨が溶けてしまう病気のことです。

歯周病は、歯周病菌(歯周病を引き起こす細菌)の感染によって発症します。そして、歯周病学会によりますと、30歳以上の成人の約80%がかかっているとされている、よくある病気です。

そもそも、歯周病には痛みなどの自覚症状が伴わないことから、本人が気づいていないことが多いのが特徴です。

それにもかかわらず、歯周病菌は腫れた歯肉から簡単に血管内に出ていくことから、いろいろな病気の発症リスクを上昇させることが知られていて、妊娠、出産の領域でも早産や低出生体重児のリスクをも高めることが知られています。

◎歯周病と妊娠しやすさ
歯周病があると妊娠するまで時間がかかることはこれまでもいくつかの研究報告がなされています。

妊娠を希望する256名の女性を対象にしたフィンランドのヘルシンキ大学の研究では、唾液と血液を採取し、唾液中の歯周病原因細菌の有無を検査した後、1年間追跡調査し、歯周病と妊娠する力の関係を調べた研究があります(1)。

それによりますと、1年で256名中、205名が妊娠しましたが、1年以内に妊娠できた女性に比べて妊娠できなかった女性では、唾液中に歯周病原因菌が検出された女性の割合が4倍も多かったとのこと。

このことから歯周病は不妊症のリスクファクターになる得ると結論づけられています。

また、アメリカの研究でも歯周炎と診断されたことがある女性は、そうでない女性に比べて妊娠するまで長くかかるとの報告がなされています(2)。

北米在住の妊娠希望の不妊症でない女性、2,764名を対象とした研究(PRESTO研究)で、歯周炎と妊娠するまでにかかった期間の関係を調べています。

それによりますと、過去に歯周炎と診断されたことがある女性は診断されたことのない女性に比べて妊娠率が11%低いこと、歯周炎の治療を受けていない女性は受けた女性に比べて妊娠率が21%低いこと、永久歯が自然に抜けたことがある女性はない女性に比べて妊娠率が29%低いことがわかりました。

このように歯周炎も妊娠する力を低下させることが示唆されました。

その一方、歯周病の治療や予防で早産や低体重出生児のリスクを低下させることが出来るとの報告もなされています。

イタリアとギリシャの大学の研究グループは、7つのランダム化比較試験(総対象者数2,663名)の結果を統合、分析しています(3)。

その結果、妊娠中に歯周病治療を受けた女性は受けなかった女性に比べて早産や低体重出生児のリスクが有意に低いことを見出し、妊娠中に歯周病治療を受けることで早産や低体重児の発生率が低くなると結論づけています。

◎歯周病予防は妊活の必須項目
歯周病は、歯周病原因菌に感染し、歯と歯肉の境目(歯肉溝)の清掃が行き届かないでいると、そこに多くの細菌が停滞し(歯垢の蓄積)歯肉の辺縁が「炎症」を帯びて赤くなったり、腫れたりし、発症します。

これまでの研究で歯周病の発症や重症化は妊娠する力を低下させるだけでなく、早産低体重出生児のリスクも高くなることがわかっています。

そのため、妊娠を希望する女性は、まずは、歯科医に歯周病の有無や口腔内の細菌叢検査で歯周病原因菌が常在化していないかどうかを調べることが大切です。

その結果、歯周病がある場合は治療し、完治させておき、なくても口腔内をケアし、歯周病を予防しましょう。


文献:
1)J Oral Microbiol 2017; 9: 1330644
2)Hum Reprod. 2021; 36: 2298
3)Am J Obstet Gynecol 2009; 200: 225.

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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@partner-s.info


お知らせ__________________________________________________________

   研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
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東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。

最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。

PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。

そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。

詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf


編集後記____________________________________________________________

歯の健康管理は妊活の重要な項目の一つです。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1098
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
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