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VOL.1100 妊娠中の食事パターンと子どもの自閉症リスク

2024年07月28日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1100               2024/7/28
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:妊娠中の食事パターンと子どもの自閉症リスク
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記


最新ニュース解説 Jul. 2024___________________________________________

妊娠中の食事パターンと子どもの自閉症リスク
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妊娠中の母親の食事パターンは出生児の自閉症リスクに関連し、健康的な食事パターンの母親ほど出生児が自閉症と診断されるリスクが低いことがノルウェイとイギリスで実施された大規模な研究で明らかになりました(1)。

自閉スペクトラム症(ASD)は、対人関係が苦手、強いこだわりといった特徴をもつ発達障害の一つです。その原因は不明ですが、生まれつきの脳機能の異常によるものと考えられていますが、妊娠中の母親の食事内容がリスク因子の一つである可能性が示唆されました。

◎どんな研究だったのか?
2つの大規模な前向きコホート研究(ノルウェー母父子コホートとエイボン親子研究)において、出生前の健康的な食事パターンと子どもの自閉症発症との間にはどのような関連があるのかを調べるべく、今回の研究が実施されました。

ノルウェー全土とイングランド南西部で実施された、上記も出生コホート研究に参加した妊婦に食物摂取頻度調査票を用いた食事調査を実施しました。その結果から健康的な食事パターンにどれだけ近い食事であったかをスコア化し、スコアが高いグループ、中程度のグループ、低いグループにわけられました。

一方、参加者の出生時は8歳になるまで追跡調査され、3歳と8歳時点で自閉症と診断されたかどうか、自閉症の症状が見られるかどうかとスコアの関係が調べられました。

尚、健康的な食事パターンの定義は、果物、野菜、魚、ナッツ、全粒穀物食品を多く、赤身肉や加工肉、清涼飲料水、脂肪分、精製炭水化物が少ない食べ方とされました。

◎どんな結果だったのか?
ノルウェー母父子コホートでは、84,548件の妊娠が、イギリスのエイボン親子研究では、11,760件の妊娠が対象となり、母親の食生活が健康的な食事パターンであることは、子どもが自閉症と診断されるリスクの低下(ノルウェー母父子コホート)、社会的コミュニケーション障害のリスクの低下(ノルウェー母父子コホートとエイボン親子研究)と関連していました。

この母子ペアを対象としたコホート研究では、妊娠中の健康的な食事パターンを遵守することは、自閉症と診断されたり、社会的コミュニケーション障害のリスクを低くする傾向が認められました。

◎自閉症について
自閉症は、その文字から受ける印象が強いこともあってか、なかなか正確な理解が得られないことが多いようです。

東京都自閉症協会のサイトには、以下の説明がなされています。

自閉症とは、先天的な原因から、対人関係の特異性やコミュニケーションの質的障害、イマジネーションの質的障害という3つに特徴があらわれることから診断される障害で、「自閉」という言葉からイメージされる「自らこころを閉ざしている病気」ではありません。

また、育て方によって、後天的になるものでもありません。原因は、まだ不明ですが、さまざまな所見や遺伝的研究から、先天的な脳機能の違いが原因となる障害だと、考えられています。

自閉症は、重度の知的障害を合併している人から、知的な障害がほとんどない人、IQ(知能指数)が通常より高い人まで幅広く、その個性も多様です。

どこからどこまでが「知的障害」、どこからどこまでが「自閉症」と区切れるものではなく、まるで虹の光のように連続していることから、自閉症スペクトラム(Autistic Spectrum Disorder:ASD)といわれます。」との説明があります。

だいたい、1,000人に1人から2人の割合で生まれてくると言われいて、自閉症のうち、5人に4人は男の子とされています。

そもそも、自閉症の原因そのものがわかっていません。漠然と、先天的な脳機能の異常によるものと考えられています。

今回の研究では妊娠中の母親の食事パターンが出生児の自閉症リスクに関連したことが、大規模な前向きコホート研究で示されました。

妊娠中の母親の食事パターンは胚から胎児の栄養環境を決定しますので、栄養バランスが妊娠初期の脳神経系の形成になんらかの影響を及ぼすことが示唆されたことになります。

◎妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針
厚生労働省は2006年に作成した「妊産婦のための食生活指針」を2021年に「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針 ~妊娠前から、健康なからだづくりを~」に変更しました。

このことは、妊娠前から取り組むことが重要であることを物語っています。

その内容は以下の通りで、食べ方については、バランスよく食べることに尽きます。そのための4項目と葉酸について示されています。

・「主食」を中心に、エネルギーをしっかりと
炭水化物の供給源であるごはんやパン、めん類などを主材料とする料理を主食といいます。妊娠中、授乳中には必要なエネ ルギーも増加するため、炭水化物の豊富な主食をしっかり摂りましょう。

・不足しがちなビタミン・ミネラルを、「副菜」でたっぷりと
各種ビタミン、ミネラルおよび食物繊維の供給源となる野菜、いも、豆類(大豆を除く)、きのこ、海藻などを主材料とす る料理を副菜といいます。妊娠前から、野菜をたっぷり使った副菜でビタミン・ミネラルを摂る習慣を身につけましょう。

・「主菜」を組み合わせてたんぱく質を十分に
たんぱく質は、からだの構成に必要な栄養素です。主要なたんぱく質の供給源の肉、魚、卵、大豆および大豆製品などを主材料とする料理を主菜といいます。多様な主菜を組み合わせて、たんぱく質を十分に摂取するようにしましょう。

・乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などでカルシウムを十分に
日本人女性のカルシウム摂取量は不足しがちであるため、妊娠前から乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などで カルシウムを摂るよう心がけましょう。

文献)
1)JAMA Netw Open. 2024; 7: e2422815
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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@partner-s.info


お知らせ__________________________________________________________

   研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
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東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。

最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。

PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。

そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。

詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf


編集後記____________________________________________________________

健康的な食事パターンは妊娠しやすさにも関連します。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1100
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お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします。
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
企業サイト:https://partner-s.info/
情報サイト:https://www.akanbou.com/
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◎発行部数
・自社配信: 1,579部
・まぐまぐ: 2,000部
・合計部数: 3,581部(7月28日現在)
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