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VOL.1102 就寝時間と不妊症の関係

2024年08月11日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1102                2024/8/11
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:就寝時間と不妊症の関係
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記


最新ニュース解説 Aug. 2024__________________________________________

就寝時間と不妊症の関係
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就寝時間が22時45分より遅くなると、不妊症のリスクが有意に高くなることがアメリカの国民健康・栄養調査(NHANES)から明らかになりました(1)。

アメリカのNHANESは、日本の厚労省が実施している国民健康栄養調査にあたるもので、疾病予防対策センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)が実施しています。

今回の研究はこの調査結果から就寝時間、すなわち、ベッドに入る時間と不妊症との関連を分析しました。

尚、不妊症の定義は、12ヵ月以上避妊せずに性交渉を続けても妊娠に至らないこととし、参加者に「少なくとも1年以上の期間、妊娠を試みたが妊娠しなかったことがありますか?」といいう質問に対して、「はい」と回答した参加者を不妊症としています。

また、就寝時間は睡眠障害質問票で「"平日または仕事の日は、通常何時に眠りにつきますか?」という質問への回答から得ています。

◎どんな研究だったのか?
2015年から2020年の国民健康栄養調査(NHANES)の女性参加者3,903人のデータを用いた研究で、女性の就寝時間と不妊症リスクとの関係を分析しました。

年齢、BMI、ウエスト周囲長、身体活動総時間、婚姻状況、喫煙状況、飲酒状況、睡眠時間によるサブグループ解析を実施しています。

◎どんな結果だったのか?
不妊症リスクに影響を及ぼす因子(年齢、人種、睡眠時間、ウエスト周囲長、婚姻状況、教育、BMI、喫煙状況、飲酒状況、身体活動総時間)を調整した後、就寝時間と不妊症との間には相関関係が認められ、その分岐的は22時45分でした。

22時45分までは有意な関連は認められませんでしたが、それ以降では就寝時間が不妊症と正の相関関係にあることがわかりました。

サブグループ分析では、BMIの高い遅寝の人は、BMIの低い人よりも不妊になりやすいことが判明した。

◎就寝(入眠)時間と健康
心筋梗塞や不整脈、心不全など、心臓に繋がる血管や心筋に異常が生じ、心臓へ血液が十分に行き渡らなくなる病気である心血管疾患は、日本人の死因の第2位ですが、この病気の発症と就寝時間との関係を調査した研究があります(2)。

有名なUKバイオバンク研究で、それによると心臓の健康維持のために最適な就寝時刻が、22時から23時の間だったというのです。

今回の研究で判明した不妊症リスクが低くなる時間帯と一致しています。

8万8000人のボランティアに腕時計型の装置を装着してもらい、7日間の睡眠と起床時間のデータを収集する一方、心臓や循環器系の健康状態について、平均6年間にわたって追跡したという、大規模な研究です。

調査期間中に循環器疾患を発症した3000人強の被験者の多くは22時から23時よりも遅く、あるいは早く寝ていたとのこと。

もちろん、心血管疾患の発症に関連するさまざまな因子を調整した結果です。

22時よりも早い時間、もしくは、23時よりも遅い時間帯に眠ると体内時計を狂わせ、循環器系の健康状態に悪影響を及ぼす可能性があると考えられているようです。

そして、最も高リスクなのは午前0時以降で、理由は体内時計をリセットする朝日を浴びる機会が減る可能性があるためでされています。

◎睡眠の質と体外受精の治療成績
睡眠の質と体外受精や顕微授精の治療成績との関係について中国から大規模な研究結果が報告されています(3)。

1,276名のART女性患者に、採卵日に質問票を用いて睡眠の状況を調査し、その後の治療周期の成績と関係を調べています。

その結果は以下の通りで、大変、興味深いものでした。

7時間から8時間の睡眠時間、23時前の就寝と6時頃の起床が良好なART治療成績に繋がるというのです。

ここでも23時前の就寝がよいとされています。

◎睡眠がなぜ大事なのか
私たちの体は、外から栄養素をはじめ、さまざまな物質を取り込んで、体内で分解し、そして、合成し、体を維持しています。

そして、体内で分解するプロセスは主に目覚めているときに、合成するのは眠っているときに活発になります。

そのため、免疫や骨、筋肉の成長、再生は睡眠の質によって、よくなったり、悪くなったりするわけです。

卵子や精子、受精卵、胚、胎児の成育のベースに睡眠があり、それらの質をよくするために、本気で取り組むべきは、睡眠の質をよくすることになるのかもしれません。

最後に睡眠を支配している体内時計を整えるために効果的な方法を以下に挙げます。

1)早く寝る:どんなに遅くとも23時迄には寝る。
2)早く起きる:起床後14~16時間後にメラトニンの分泌が始まります。
3)起床後太陽光を浴びる:出来れば45分以上散歩して。
4)朝食は必ず食べる。:起床後2時間以内に。
5)朝食はバランスよくしっかり食べる:リセット効果が高まります。
6)以上のことを毎日同じ時間に行う:週末も同じリズムを維持します。


文献)
1)Front Endocrinol (Lausanne). 2024; 15: 1340131.
2)European Heart Journal - Digital Health 2021; 2: 658
3)Hum Reprod 2022; 37: 1297

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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@partner-s.info


お知らせ__________________________________________________________

   研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
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東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。

最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。

PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。

そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。

詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf


編集後記____________________________________________________________

22時から23時の間に寝て、6時に起床が理想です。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1102
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
企業サイト:https://partner-s.info/
情報サイト:https://www.akanbou.com/
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・自社配信: 1,586部
・まぐまぐ: 1,998部
・合計部数: 3,584部(8月11日現在)
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