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妊娠しやすいカラダづくり No.1103 2024/8/18
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今週の内容__________________________________________________________
・最新ニュース解説:葉酸だけでよいか、マルチビタミンミネラルのほうがよいか?
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記
最新ニュース解説 Aug. 2024__________________________________________
葉酸だけでよいか、マルチビタミンミネラルのほうがよいか?
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妊娠前からマルチビタミンミネラルのサプリメントを服用していた女性は、葉酸のみを服用していた女性に比べて妊娠初期の胚発育が良く、低出生体重児のリスクが低いことが、オランダの研究で明らかになりました(1)。
厚労省は、妊娠の可能性のある女性は、妊娠の前から1日に400μgの葉酸サプリメントを補充することを推奨しています。
目的は胎児の先天異常(二分脊椎症などの神経管閉鎖障害)の予防ですが、胎児の健康な成育のためのは葉酸を補充するだけでよいのかどうかを確かめるためにオランダで研究が実施され、葉酸だけの補充よりも、マルチビタミンミネラルのほうが胎児の成育に良好な影響を及ぼすことが示唆されました。
◎どんな研究だったのか?
研究は、2010年1月から2020年12月にかけて、オランダのロッテルダムにあるエラスムス大学医療センターの研究プロジェクトに登録していた、妊娠10週未満の妊婦(単胎妊娠)1,076名を対象として実施されました。
妊娠4週間前から妊娠8週までのサプリメント(葉酸、もしくはマルチビタミンミネラル)の摂取についてのアンケートを実施、妊娠中の胎児の頭殿長(頭からお尻までの長さ)、体積、発達段階、また、出生児の体重を記録し、葉酸サプリメントを補充していた女性とマルチビタミンミネラルを補充していた女性の胎児の成育状況を比較しました。
◎どんな結果だったのか?
受精前後にマルチビタミンミネラルを服用していた女性は、葉酸のみを服用していた女性に比べて妊娠初期の胎児の頭殿長や体積が大きくなることがわかりした。
胎児の発達や流産の発生については、葉酸単体とマルチビタミンミネラルの服用とで差は見られなかったとのことです。
妊娠初期の胎児の成育状況は、その後の成育に影響を及ぼすことがわかっているこちから、妊娠前から妊娠期にかけてのサプリメント補充の重要性が示されました。
◎各ステージ毎の重要な微量栄養素
受精前後に重要なビタミンやミネラルは、各ステージ毎で異なります。
・受精前(プレコンセプション期)
→卵胞発育から成熟:葉酸、ビタミンB2、B6、B12
・受精後
→着床期:葉酸、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンE、セレン、亜鉛、銅、ヨウ素
→胚発育:葉酸、ビタミンA、ビタミンE、亜鉛、鉄、銅
→胎児成育:葉酸、ビタミンB12、ビタミンD、銅、鉄、ヨウ素、亜鉛
→神経形成:葉酸、ビタミンB12
→胎盤血管形成:葉酸、ビタミンB12、ビタミンD、銅、鉄、ヨウ素、亜鉛
もちろん、3大栄養素と呼ばれている、炭水化物、タンパク質、脂質、そして、すべてのビタミンやミネラルが必要とされますが、それぞれのステージで新しい命の器官が形成される際に、絶対に必要なビタミンやミネラルがあり、それが上記の通りです。
そのため、上記のうち、どれか1つでも不足すると器官の形成にマイナスの影響を及ぼすことになります。
この時期は葉酸だけでなく、全てのビタミンやミネラルを満遍なく補充する意味がここにあります。
◎新しい命のための栄養環境を整えるために
受精時の体内のビタミンやミネラル濃度は妊娠率や妊娠、出産の合併症発症リスクだけでなく、胎児の成育、そして、お子さんの一生の体質に影響を及ぼすことが、これまでの研究で明らかになっています。
そのため、妊娠を望むカップルはビタミンやミネラルを必要とされる量を摂取することを心がけねばなりません。
ただし、推奨される量に足りていないからといって、いきなり、サプリメントだけで補充するという方法は得策ではありません。
なぜなら、ビタミンやミネラルは、本来は食事から摂取すべき栄養素です。そして、ビタミンやミネラルの摂取量が推奨量に達していないということは、食べ方に問題があるということであり、その影響はビタミンミネラルの不足にとどまらず、糖質やたんぱく質、脂質の摂取バランスにも及んでいる可能性が高いからです。
それらの摂取バランスの乱れは、新しい命の成育のための栄養環境を損ないます。
まずは、食べ方を見直すことです。
◎栄養バランスを整える食べ方を実践する
5大栄養素をバランスよく摂ることは、バランスよく食べることでしか、実現できません。
5大栄養素の名前と各栄養素の働き、そして各々を多く含む食材をおおまかに覚えておくことは、栄養バランスを整える基本になるので必須です。けれども毎日の食事に栄養素を細かく落とし込んで考えるというのは現実には難しいものです。
そこでご紹介したいのが、栄養素ではなくアイテムで考える「栄養フルコース型」の食事です。
これは5つのものを食卓に揃える食べ方です。
(1)主食(ごはん、パン、麺類、いも類)
(2)おかず(肉、魚、卵、大豆製品)
(3)野菜(野菜全般だが、効率良く栄養摂取するには緑黄色野菜を意識して摂る)
(4)果物(ビタミンCの豊富なかんきつ類、いちご、キウィフルーツなどがおすすめ)
(5)牛乳(ヨーグルト、チーズ含む)
この(1)~(3)を朝食、昼食、夕食の毎食、(4)果物と(5)牛乳は運動量に合わせて1日1~2回程度摂ると5大栄養素をバランス良く摂ることができます。
また、量の目安は以下の通りです。
(1)主食:ごはんなら茶碗1杯、パンは1枚。精製度の低いものが望ましい。
(2)片手にひとつからふたつ。魚を週に2、3回以上は食べる。
(3)両手にいっぱい以上。
(4)小皿1つ(バナナ1本、リンゴ半分、オレンジやキウイ1個)。
(5)牛乳コップ1杯。
最後にお伝えしたいのは大切なポイントは色々な食材を楽しむということです。
◎食事バランスに不安があれば葉酸だけでなく、マルチビタミンミネラルを補充する
これまでバランスのよい食生活が送れていないという場合、それを改善することが大前提ですが、葉酸だけでなく、マルチビタミンミネラルを補充するのが得策です。
順番が大切です。
文献)
1)Hum Reprod 18 July 2024 deae168, https://doi.org/10.1093/humrep/deae168
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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@partner-s.info
お知らせ__________________________________________________________
研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
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東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。
PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。
最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。
PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。
そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。
詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf
編集後記____________________________________________________________
妊娠前からの食事バランスが最重要です。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.1103
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お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします。
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
企業サイト:https://partner-s.info/
情報サイト:https://www.akanbou.com/
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・合計部数: 3,589部(8月18日現在)
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