メルマガ

VOL.1104 妊娠中の甘い飲み物と妊娠合併症リスクの関係

2024年08月25日

____________________________________________________________________

 妊娠しやすいカラダづくり No.1104        2024/8/25
____________________________________________________________________


今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:妊娠中の甘い飲み物と妊娠合併症リスクの関係
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記


最新ニュース解説 Aug. 2024__________________________________________

妊娠中の甘い飲み物と妊娠合併症リスクの関係
――――――――――――――――――――――――――――――――――
妊娠中の砂糖や人工甘味料入り飲料水の摂り過ぎは、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症や出生児の巨大児のリスが高くなることが、中国で実施された研究で明らかになりました(1)。

砂糖や砂糖が入っていなくても人工甘味料入りの飲料は、糖尿病や心疾患、虫歯になる危険が高くなることから、世界的な問題になっています。

WHOの定める糖類の摂取目安量は総エネルギーの10%未満で、1日の摂取エネルギーが2000kcalで25-50gになります。

一方、コーラ1本に含まれている砂糖は56.5g、カルピスウォーターで55g、サイダーで55gで1本でアウトです。意外なところでが、フラペチーノ(トールサイズ)には45gの砂糖が入っています。

妊娠前の清涼飲料水は不妊治療成績にマイナスの影響を及ぼすこともわかっています。

夏場は要注意です。

◎どんな研究だったのか?
上海の16地区を5つのゾーンに分け、各区域から無作為に2つの町を選び、各町から無作為に30人の妊婦を選び、研究に参加してもらいました。

対面式のアンケートを実施し、過去1ヵ月間の各種飲料の摂取頻度を、摂取しない、月に1~3回、週に1~3回、週に4~7回、1日1回以上から選択してもらいました。

飲料は炭酸飲料、天然フルーツジュース、ジュース、植物性タンパク質飲料、加糖乳製品/乳製品由来飲料、乳酸菌飲料、加糖紅茶飲料(ミルクティーを含む)、そして、人工甘味料入りの8種類でした。

調査後1年以内の出産に関する追跡調査データから砂糖や人工甘味料入り飲料の摂取と妊娠合併症や胎児の健康の関係を分析しました。

◎どんな結果だったのか?
総飲料、砂糖入り飲料、人工甘味料入り飲料の消費率は、それぞれ73.2%、72.8%、13.5%でした。

統計学的な処理を施した結果、甘い飲料を週3回以下飲んでいた妊婦は、全く飲んでいなかった妊婦に比べて、妊娠糖尿病のリスクが38.4%、妊娠高血圧症候群のリスクが64.2%高いことがわかりました。

また、週に4回以上摂取する妊婦になるとは、妊娠糖尿病のリスクが154.3%、妊娠高血圧症候群のリスクが169.3%、それぞれ高くなることがわかりました。

さらに、砂糖入り清涼飲料水や砂糖が入っていなくても人工甘味料入り飲料だけに限った場合でも同様の結果となり、さらに、出生児が巨大児になるリスクが大幅に高くなることがわかりました。

このことから、上海の妊婦の甘い飲料の摂取率は73.2%と高く、甘い飲料の過剰摂取は、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群の発生率の増加、巨大児発生率の増加と関連し、この傾向は特に人工甘味料入り飲料の摂取で顕著になりました。

妊娠中の飲料摂取に関する健康教育を強化することが喫緊の課題であると結論づけています。

◎砂糖入り清涼飲料水と不妊症
砂糖入り飲料をよく飲むカップルは妊娠するまでに時間がかかるという研究報告がなされています(2)。

北米在住の3,828名の女性とその男性パートナー1,045名を対象に行われた研究で、直近1ヶ月間の飲料(砂糖入り清涼飲料水、果物ジュース、栄養ドリンク、スポーツ飲料)の摂取量を回答してもらい、カップルの清涼飲料水の摂取量と妊娠までに要した期間の関係を調べた結果は以下の通りです。

・週に7本以上の砂糖入り飲料を飲む女性は飲まない女性に比べて周期あたりの妊娠率は19%低下した。
・週に7本以上砂糖入り飲料を飲む男性は飲まない男性に比べてパートナーの女性の妊娠率が22%低下した。

砂糖入り飲料水は、急激な血糖値の上昇につながり、その後、血糖値が急降下することから、イライラ、体のだるさなどにつながります。

そのため、砂糖入り清涼飲料水を習慣的に飲むと、インスリンの効き目を悪くし、さまざまなメカニズムで卵巣や精巣の機能を低下させるのではないかと考えられています。 

◎人工甘味料と不妊症
人工甘味料のアスパルテームを習慣的に摂取している女性は摂取していない女性に比べて不妊症リスクが高いことが台湾で実施された研究で報告されています(3)。

840名の妊娠女性にアステルパームの摂取をはじめとする生活習慣や妊娠するまに要した期間を調査し、それらの関係を解析しました。

被験者女性で不妊症(妊娠するまでに2年以上要した)だったのは164名で約20%、アステルパームを習慣的に摂取していた女性は208名で約25%でしたが、アステルパームと不妊症リスクとの関連を解析したところ、アステルパームを摂取していた女性は摂取していなかった女性に比べて、不妊症リスクが高く、全体では有意な差でなありませんでしたが、35歳以下では有意な差をもって、高く、オッズ比は1.79で、アステルパームを習慣的に摂取する女性は不妊症になりやすいことがわかったとの報告です。

◎夏場の水分補給はミネラルウォータかお茶
飲料はミネラルウォーターかお茶、すなわち、砂糖もカフェインも含まれない飲料がベターです。

例えば、お茶には、ポリフェノール、炭水化物、アミノ酸、タンパク質、揮発性化合物、その他未知の化合物など、500種類以上の化学物質が含まれていると考えられています。

また、新鮮な茶葉にはカテキンというポリフェノールが豊富で、茶葉の乾燥重量の30%近くを占めています。そして、お茶のポリフェノールには、抗菌、抗酸化、抗炎症、抗動脈硬化、抗癌など、いくつかの生物学的特性があるとされています。

このように、お茶か、砂糖入り飲料水か、毎日のちょっと した習慣の違いが、妊娠する力に及ぼす影響がプラス になるか、マイナスになるか、その差はとても大きいのです。


文献)
1)Nutrients 2024; 16: 2412
2)Hum Reprod 2021 2021; 36: 3036
3)Int J Mol Sci. 2022; 23: 12740.

--------------------------------------------------------------------
記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@partner-s.info


お知らせ__________________________________________________________

研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
-----------------------------------------------------------------------
東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。

最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。

PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。

そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。

詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf


編集後記____________________________________________________________

フラペチーノ系は要注意ですね。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1104
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします。
--------------------------------------------------------------------
不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点でお届けしています。
--------------------------------------------------------------------
発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
企業サイト:https://partner-s.info/
情報サイト:https://www.akanbou.com/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎発行部数
・自社配信: 1,594部
・まぐまぐ: 1,999部
・合計部数: 3,593部(8月25日現在)
--------------------------------------------------------------------
◎免責事項について
当メールマガジンの提供する情報は医師の治療の代わりになるものでは決してありません。プログラムの実行は各人の責任の元で行って下さい。プログラムの実行に伴う結果に関しては、当社の責任の範囲外とさせて頂きます。
--------------------------------------------------------------------
◎注意事項
読者の皆さんから寄せられたメールは、事前の告知なく掲載させていただく場合がございます。匿名などのご希望があれば、明記してください。また、掲載を望まれない場合も、その旨、明記願います。メールに記載された内容の掲載によって生じる、いかる事態、また何人に対しても一切責任を負いませんのでご了承ください。
--------------------------------------------------------------------
◎著作権について
当メールマガジンの内容に関する著作権は株式会社パートナーズに帰属します。一切の無断転載はご遠慮下さい。